【フォード マスタング V8GT パフォーマンス・パッケージ 試乗】呆れるほどのトルク備えた、MTのV8 4シーター…中村孝仁

試乗記 輸入車
フォード・マスタング V8GT パフォーマンス・パッケージ
フォード・マスタング V8GT パフォーマンス・パッケージ 全 15 枚 拡大写真

すでにニューモデルが発表されている『マスタング』。まさにファイナルモデルとなる現行車に、70台の限定車が追加された。

その名をパフォーマンス・パッケージという。実は昨年も同名のモデルが限定発売されているから、2年連続ということになる。ベースはV8エンジン搭載のGT。これにブレンボ製のブレーキやレカロのシート、専用チューンされたサスペンションと専用デザインのホイールに19インチタイヤを装着。さらに加速性能を向上させるためにファイナルギアをローギアード化した6速マニュアルミッションを装備する。なお、AT車も用意されるがこちらのギア比は標準車と同じだ。

というわけで試乗車としてチョイスしたのは当然ながらマニュアルである。外観からこのパフォーマンスパッケージを区別するのはほとんど不可能。唯一、ホイールから覗くブレンボ製ブレーキが手掛かりだからだ。一方でインテリアはレカロ製のシートが奢られているからすぐにそれと気づく。といっても変更点はこれだけで、他の部分は標準モデルと同じだ。

さすがに5リットルの大排気量のマニュアルだから、クラッチはそれなりの踏み応えがあるが、決して重くはない。今時V8のマニュアル車も珍しい。もっともスポーツカーとなれば話は別。同じアメリカでは『コルベット』があるし、『アストンマーチン』などにも今もマニュアルの設定があるが、これが4シーターとなると俄然、その数は減るはずだ。

それにしても、ATでは感じられなかった呆れるほどのトルクがある。ATだとただアクセルペダルだけ踏んでいればあとは、クルマの方でやってくれるから、まあエンストという心配がまるでないわけだが、マニュアルは速度が落ちてエンジン回転が下がってくると、ストールの危険性が出て、ギアシフトが要求される。しかしそうした心配がほとんどないのがこのクルマ。1速に入れてクラッチをゆっくり離すと、何の問題もなくクルマがするすると動き出す。意識してアクセルを踏みながらクラッチミートを試みると、かえってクルマがぎくしゃくする。試しにアクセルを踏みながらのクラッチミートを2速発進で行ったらこちらの方がはるかにスムーズに発進できる。そして街中をスイスイ走ろうと思ったら、2速発進してすぐに3速へ。その後は4速を飛ばして5速へシフトすると言った間引きシフトが十分可能だし、スムーズに走れる。こうした走りをすれば、豪快なはずのマスタングも猫のようにおとなしい。

ところが、本気モードで1速から全開をくれてやると凄まじい加速とともにクルマが豹変する。あえてステアリングの重さを適正化するセレクトモードを使って重くしてやらなくても、非常にクイックで正確なステアフィールを持つし、高速のS字で荷重移動があっても、まったくよれることなくこれまた正確なライントレースが可能だった。言っておくがこのクルマのリアサスペンションはリジットである。それに乗り心地だって、専用チューンとはいえ、決して硬すぎず。好印象。ショートストロークでカチッと決まるシフトレバーを駆使してコーナーを攻めると、V8サウンドの影響もあるだろうが、自分が高揚しているのがわかる。確かに今、時代はエコなのかもしれないが、こうした高揚感、ワクワク感を演出してくれるクルマは少なくなった。非常に存在感のあるスタイリングと共に、自動車の面白さを存分に伝えてくれる1台である。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁|AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来36年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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