【池原照雄の単眼複眼】50万台突破後の成長担う…レクサス NX デビュー

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トヨタ九州のレクサスNX生産ライン
トヨタ九州のレクサスNX生産ライン 全 11 枚 拡大写真

世界のプレミアムSUV市場に満を持して

トヨタ自動車のレクサスに新たなクロスオーバーSUVとして『NX』が加わった。ハッチバックHV(ハイブリッド車)の『CT200h』とともに、レクサスのエントリーモデルの幅が広がった。新興国を含む世界の自動車マーケットで成長著しいSUVだけに、年間販売50万台規模で伸び悩んできたレクサスを次の成長ステージに導く戦略モデルともなる。

NXは7月末にまず日本から市場投入された。国内向けは、レクサスでは初となったターボエンジン(2リットル)を搭載した『NX200t』と、2.5リットルのHVである『NX300h』の2モデル。海外では地域によって自然吸気の2リットルガソリン車も設定される。

生産は、トヨタの田原工場(愛知県田原市)とともにレクサスの主力工場となったトヨタ自動車九州の宮田工場(福岡県宮若市)が、一手に引き受ける。8月上旬に同工場で行われたラインオフ式では、トヨタの前川眞基副社長が「開発から生産、販売まで“チームNX”が一丸で取り組んできた。世界のプレミアムSUV市場に満を持して発売するクルマ」と、商品力に強い自信を表明した。

若年層など新規顧客開拓にも手ごたえ

宮田工場周辺で同乗試乗の機会があったが、HV、ターボともに、それぞれの持ち味を前面に出し、瞬時に違いが分かる走りが印象的だった。シートやコンソール回りにステッチを多用した内装は若々しく、躍動感が伝わってくる。このステッチをミシンで縫いあげるのは、トヨタ九州の社内審査に合格した専門スキルをもった人に限定しているという。

こうした生産を担当するトヨタ九州は、リーマン・ショック後に生産変動の波に翻弄されてきただけに、むしろトヨタ本体よりもNXに寄せる期待は大きい。同社の二橋岩雄社長は「レクサスの主力車種としての成長が見込まれる。入門モデルとしてもレクサスの拡大にはずみをつけている」と、あたかもレクサスの責任者のように、喜びを隠さなかった。

実際、受注の出足は好調で国内では8月上旬の時点で6500台に達した。日本では月700台という計画なので、すでに9か月分まで積み上がった。NXの同乗試乗につきあってくれた福岡県内のレクサス店関係者によると、「お客様の年齢層は幅広いが、若い方が確実に増えている」と、エントリーモデルとしての新規開拓への手ごたえを話していた。

最大市場の米国では15年に4.2万台を

ラインオフ式では、世界各地の販売会社などから寄せられたビデオメッセージが公開された。注目は、レクサスの半数強を占める最量販国の米国トヨタ幹部による販売見通しだった。米国での発売は11月下旬の予定なので年内は3000台規模だが、翌2015年は4万2000台に及ぶだろうと指摘した。

米国ではNXの兄貴分でもあるSUVの『RX』、セダンの『ES』、『IS』が主力モデルとなっている。新投入のNXはこれらに続く販売スケールとなりそうだ。レクサスは米国のプレミアム市場で、1999年から2010年までトップシェアを確保していたが、東日本大震災の影響が出た11年から13年まではメルセデスベンツとBMWの後塵を拝している。今年もやや厳しい展開だが、NXがフルに寄与する15年には5年ぶりの首位奪還も見えてくる。

また、レクサス初のターボ車は、プレミアムでも過給エンジンによるダウンサイジングが主流の欧州市場への切り込みも担っている。レクサスインターナショナルの福市得雄プレジデント(トヨタ取締役・専務役員)は「欧州でのシェアは1%にも満たないが、個性的なデザインに仕上げたこのNXで、認知度を上げていきたい」と強調した。

レクサスの13年度のグローバル販売は前年度比12%増の49万2000台となって、リーマン前の07年度以来6年ぶりに最高を更新した。12年に社内分社としてのレクサスインターナショナル(豊田章男社長の直轄組織)を立ち上げた成果が、見え始めてきた。そのなかでNXはレクサスが50万台のカベを突破して、次の成長ステージを拓く重責を担う。

《池原照雄》

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