軽自動車の燃費競争が30km/リットルに達したとき、もうここが限界かと思われたけれど、今回の32.4km/リットルを突きつけられて、まだやれることはあると実感である。その「方法」はリチウム電池を使ったHVなのだが、スズキは「S-エネチャージ」と呼んでいる。
理由として、HVの割にはEV走行領域がないからと控えめなれど、もうそろそろ「HVなんです!」と声高に言うのはダサいからではないかとふんでいる。ほら、昔、ボディサイドにでかでかと「TWIN-TURBO」と書いて自慢していたのを今見つけちゃうと、だっせー、と思うように。
『ワゴンR』は、もともとターボなしでもスムーズなゼロスタートの加速が印象的だった。ゆえにモーターがついてもその滑らかな立ち上がりはそのままに、モーターアシスト分は燃費をよくすることに使っている。アクセルを踏みながらインパネの表示をちらりと見ると、エンジンマークと電池マークの双方から、動力にしてまっせという矢印が現れるだけで、乗り心地はモーター感ゼロ。ハイブリッドを実感できるところは、なにもない。それがつまらないと思うかどうかはその人次第だ。
けれど、そこよりなにより今回搭載されたモーター(スズキではISGと命名)のメリットは、アイドリングストップしてからの再スタート時である。
アイドリングストップは確かに燃費向上に役立つけれど、再スタートの音と振動は時々、わずらわしさを感じさせるときがある。乗用車よりボディ剛性にお金をかけられない軽自動車の宿命と、3気筒エンジンの音質を考えれば、そこはぜひ改善していただきたいところだ。そして、ISGにより、実にスムーズに静かに滑らかにタイミングよく再始動するようになったのである。
もともと15km/hまで減速するとエンジンが停止するため、信号で止まったときにはすでにエンジンは止まっている。そしてブレーキを足から離して0.3秒(以前は0.4秒)で再スタートするのだが、これが実に静か。今回はエンジンストップする条件も見直して、止まりやすくしたというけれど、このさりげないストップ&スタートなら、どんどん止まっちゃってという気分である。
技術は人を楽しませ、豊かにするためにあるというけれど、燃費向上に加えてこの気持ちよさ。まさに、技術ばんざいである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材中するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。