【商用バン 徹底比較】トヨタ プロボックス / サクシード vs 日産 AD / ADエキスパート…“走り”はどう進化した?

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トヨタ・サクシード
トヨタ・サクシード 全 22 枚 拡大写真

2002年7月に発売を開始後、常に国内の商用バンの先頭を走り続けてきたトヨタ『プロボックス/サクシード』(以下、プロ/サク)が何と12年ぶりに大幅な“マイナーチェンジ”を行った。

そのプロ/サクにとっての最も身近なライバルとなるのが日産『AD/ADエキスパート』だ。この両車の「走り」を実際に比較走行することで“12年間の進化”を感じ取ろうというのが今回の目的である。

長所そのままに安全性能を充実

まずプロ/サクが12年もの間、大きなモデルチェンジを行わなかったことに良い意味での“疑問”を持つ読者も多いのではないだろうか。それほどこのクルマは完成度が高く、日本のビジネスシーンにいかにマッチしていたかの証明ともなるわけだが、結果としてアッパーボディを変えないこと=フルモデルチェンジとはならないわけである。つまり現状において変える必要のない部分はそのままに、時代が求める性能、正確には2015年に行われる燃費規制への対応や安全性能を磨き上げる必要があったわけだ。

まず最初に伝えたいのは安全性能がはっきりと進化している点だ。車両安定デバイスであるVSC&TRC、坂道での後退を一定時間抑えるヒルスタートアシスト、さらに緊急ブレーキシグナルなど歩行者障害軽減ボディなどの採用と相まって、乗用車レベルにまで高められているのは当然と言えば当然だが、実際これらを搭載できていない車両も多い中、この部分は高く評価したい。

新パワートレーン採用で燃費に差

さて本題に話を戻そう。燃費&環境性能を向上させるためにはパワートレーンの大幅な改良が最も近道だ。搭載されるパワーユニットは1.3リットルと1.5リットルの直4、1.5リットルには4WDも設定される。業種や用途に応じてニーズは異なるが、プロ/サクの場合は1.5リットルのほうが販売のメインとなる。これに組み合われるトランスミッションは従来のトルコン式ATと5速マニュアルを廃止して全グレードCVTに一本化。考え方としては現行の『ポルテ/スペイド』と同じである。

このパワートレーンを搭載するためには新しいプラットフォームが必要となる。マイナーチェンジ前は初代『ヴィッツ』(NBC)のものだったが、今回は現行の3代目ヴィッツや『カローラ』などに使われているBプラットフォームを採用。ここで前述した「変える必要のない部分」という点がポイントとなる。今回のプラットフォームの変更はフロント部のみ。リア部は従来のものをそのまま踏襲している(ただし後述するサスペンションなどの改良は別)。要は完成度の高い従来までのリアセクションと最新のフロントセクションを“融合”させることで次世代の走行/環境性能を両立させようというのが狙いなのである。

一方の『AD/ADエキスパート』はFFが1.5リットル、そしてプロ/サクにはない1.8リットルを設定。4WDには1.6リットルが設定されるがCVTは1.5リットル車のみとなる。気になる燃費性能だが、積載量変化の多い商用車ゆえにJC08モードは参考程度で良いと考えるが、それでも購入時には気になる項目であることは間違いない。販売の主力となる1.5リットル車で比較するとAD/ADエキスパートの17.4km/リットルも健闘しているが、プロ/サクの18.2km/リットルにはかなわない。さらに言えばすべてのグレードでプロ/サクがAD/ADエキスパートを上回っている。新パワートレーンの採用の効果は顕著に現れていると言っていいだろう。

取り回しの良さ光るADと“専用設計”効果のプロ/サク

さてスペック上でいくら比較しても実際の走りの部分はどのように進化したのだろう。何よりも商用車は空荷状態から最大積載量まで重量変化が大きい。今回はラゲッジに100kgの重量物を積載して試乗してみたが、プロ/サクの進化は予想を大きく超えていた。

まずは一般道である。ストップ&ゴーが多く、取り回しのしやすさや乗り心地が気になる部分である。取り回しに関してはまずパワステのフィーリングに着目した。従来のプロ/サクは油圧式を採用していたが、今回から電動式に変更。すでにAD/ADエキスパートには採用済みということで、この部分では遅れをとった感もあるが、方式を変えたことで操舵フィーリングは大きく良い方向へ変わっている。特に低速時での進化が大きい。正直、前モデルはタイヤが細い割には低速時に「ねじるような」重さを感じていたが、電動式に代わることでアシストする力が増えていることがわかる。切り返しや路地などでもこのフィーリングは有難い。

一方のAD/ADエキスパートも電動式を先んじて採用していることもあり、市街地での取り回し性能は優秀である。逆に言うと、取り回しの基準のひとつになる「最小回転半径」はプロ/サクの4.9mに対し、4.7mと優れている。ただ、ベースが『ウイングロード』ということもありフロント周りが妙にスタイリッシュ。ゆえにフロント左側の車両感覚が掴みづらい。一方でフロント周りが変更されたことで従来より0.1m増えてしまったプロ/サクだが、スクエアなボディが功を奏し、見切りも良く使いやすい。この点でも“専用設計”であることが利いている。

高速道路にステージを移すと、同じ電動式でも両車の違いを感じ取ることができる。AD/ADエキスパートがやや手応えが不足しているのに対し、プロ/サクは横方向のグリップ感も含め、操舵時の修正も少なく負担が少ない。これはパワステだけでなく後述するサスペンション、さらに言えばタイヤの剛性(多分横方向)アップも影響していると思うが、積載物が多く、高速道路もガンガン走るクルマとしては安心感もありドライバーの疲労軽減にも寄与するはずだ。

商用車離れした乗り心地

さらに補足すると乗り心地が大きく進化している点を語らないわけにはいかないだろう。前述したように今回プロ/サクはフロントのプラットフォームを刷新したことでサスペンション自体も大きく変わっている。しかし筆者的に評価したいのはリアサスペンションである。何度も言うが商用車の場合、積載量の変化が大きく、その度に乗り心地が変わったのではドライバーの負担も大きい。

従来型の仕上がりも悪くはなかったが、積載量が多い状態で高速道路の目地を乗り越えた際の路面から「ガツン」と突き上げるようなフィーリングだけは「ああ、商用車とはこういうものなのか」という“残念”な気分にさせていた。これはAD/ADエキスパートでも同様、もう少し細かく言えばAD/ADエキスパートが高速コーナリング時の路面変化にやや弱く、突き上げだけでなくグニャっとした乗り味に我慢を強いられるケースも存在した。

しかし新型のプロ/サクはこの部分が大きく進化していると思う。一言で言うならば「かなり乗用車的」になったのだ。技術的にはスタビライザーの径を太くしたり、これとサスペンションをつなぐスタビライザーリンクを追加したことが大きいが、この辺を強化することでサスペンションのセッティングを柔らかな方向に変えることができたのではないだろうか。

結果として積載量の変化があった場合でも乗り心地全体は向上。また後日、空荷(筆者1名のみ乗車)状態でもフロントサスのしっかり感とリアサスのしなやかさが適度にバランスされており快適性はかなり向上したことがわかった。「商用車だから」という妥協は今の時代には似合わない。新型プロ/サクは乗用車的フィーリングを手に入れたことで次の時代も先頭を走り続けることができるのだと感じるのである。

《高山 正寛》

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