昨年のジャカルタモーターショー(IIMS2013)でワールドプレミアされたダットサン『GO+Panca(ゴープラスパンチャ)」。5ドアハッチバックの『GO』をベースに開発され、1億ルピア(日本円:約100万円)を挟んだ価格帯で3列MPVとして今年6月に発売を開始。その乗り味を体験した。
ゴープラスパンチャは、クラス最高の室内空間とフレキシブルな3列シートアレンジメントを提供する5+2のMPVで、3つのグレードとオプション付モデルの価格は、8,500万~1億0300万インドネシアルピアで販売される。68馬力の1.2リットルエンジンと5MTを組み合わせ、インドネシア国内で生産されている。
IIMS2013で発表された時点では「GO+(ゴープラス)」だったが、インドネシア政府より低価格グリーンカープログラム(LCGC)認可の取得要件に従い、名称にインドネシア語で「5」を意味する「Panca(パンチャ)」を採用。正式名称はダットサン「GO+Panca」となった。ベース車のゴーに比べてリア・オーバーハングを拡大して全長は3,995mmに延長。リヤデザインもゴーとは異なり、ナンバープレートの位置もバンパーからバックドア側へと変更されている。
試乗はジャカルタ市内にあるディーラーで、一般客と同じ条件で試乗した。とはいえ、ドライバーとなることは不可能。インドネシアは国外運転免許証が有効なジュネーブ条約に加盟していないため、日本で発行される国外運転免許証が使えないからだ。そこで、インドネシア在住の方に同乗させてもらう形での公道試乗となった。
同乗して真っ先に気付くのが、1.2リットルとは思えない発進の力強さだ。5速マニュアルということもあるとは思うが、5人乗車となった状態でも十分にスピードに乗れそうな感じで、渋滞が多いインドネシア国内であってもこれぐらいの加速感があれば不満は出そうにない。市街地での渋滞も難なくこなせそうだ。
一方で乗り心地となるとかなりプアな印象を受ける。限られたサイズで室内を広く見せるために、シート厚はかなり薄く作られており、サスペンションのストロークも短い感じがする。段差を超えると見事なまでに跳ねるし、とくに後席はシート厚の薄さからクッション不足もモロに伝わってくる。装備もかなりシンプルで、パワーウインドウが備わるものの、運転席から助手席側の操作は不可能。パーキングブレーキも、商用車を思い起こすステッキタイプだった。
ボディ剛性も褒められたものではなく、ドアのストライカー(車体側の受け部)付近から軋み音が段差を超える度に発生していた。ドアの立て付けもあまり良いとは言えないようだ。また、シートで実用性があるのはセカンドシートまで。サードシートは足を入れるのも窮屈なほどで、やはり5+2MPVのキャッチフレーズに間違いはなかった。
とはいえ、この価格帯でMPVが買えることへの魅力は大きい。インドネシア国内での売れ行きを刺激する意味でも、今年のIIMS2014では早くも新たなゴーの派生車『レディGO』をコンセプトモデルとして発表。日産は現状、インドネシア国内で4%しかないだけに、低所得者の若者を狙いつつ、ラインナップの充実で市場拡大を狙っていくものと見られる。