【フォード マスタング 試乗】ファーストバック2.3L エコブースト、これまでになかった新鮮なテイスト…中村孝仁

試乗記 輸入車
グリルのデザインはV8車と異なる。こちらはエコブーストのグリル。
グリルのデザインはV8車と異なる。こちらはエコブーストのグリル。 全 15 枚 拡大写真

北米市場ではいよいよ10月から新しい『マスタング』のデリバリーが開始される。それに先立ちアメリカ市場向けモデルの試乗会が開催されたので、参加し試乗してきた。

ポニーカーという愛称で親しまれているマスタングだが、そのイメージとしてはやはりアメリカン・マッスル。そして実際に試乗しても、これまでのモデルはどれをとっても「剛力爆走」、即ち圧倒的な力によってねじ伏せるように爆走する走りのイメージが支配的だった。ところが、新たに追加された新世代のエコブーストユニットを搭載したモデルは、「軽快疾走」即ち、軽く、気持ちよく、疾風のように疾駆するイメージだと思って欲しい。

というわけで、従来のマスタングのイメージをまずは捨てて、まったく新しいクルマ像を想像して欲しいわけである。V8モデルとは外観も僅かだが異なり、グリル、エンブレム、ボンネットのエアアウトレットなどがその相違点となる。タイヤは試乗車に関する限り18インチのピレリPゼロ。前後とも235/50R18というサイズ。ただしこれはオプションで、スタンダードは17インチ。さらにオプションは19インチ、20インチも用意される。19インチは試してみたが、乗り心地とハンドリングのバランスを考えると18インチの方がお勧めという印象を受けた。

今回からドライブモードをチョイスできるセレクタブルドライブモードが標準装備された。ノーマル、スポーツ、トラック及びスノー/ウェットの4種から選べる。変化するのはステアリングの重さ、アクセルレスポンス、シフトプログラムなどで、トラックをチョイスした場合はスタビリティーコントロールの介入が最小限となる。

プッシュボタン式に変わったスターターを押してエンジンをかける。ややこもった低音で、4気筒としてはなかなか心地よいサウンドと感じた。セレクトしたのは6速ATモデル。今回はちゃんとしたパドルシフトもつく。一応レブマッチングもしてくれるから、ワインディングでも楽しめる。基本的には他のフォードと同じトランスミッションだというが、シフトタイミングは特にダウンシフトで早く、ドライブを楽しめる設定となっている。

4気筒は今回初めて縦置きのエコブーストとなり、基本的にブロックこそ2リットルと共通だが、鍛造クランクシャフトに鍛造コンロッド、エクゾーストマニフォールドを一体化したシリンダーヘッドなど、細かい点は全くの別物だ。ピックアップはすこぶる良く、パワーの出し方もリニア。街中で走る限りかなりシャープなクルマという印象を受ける。一方でワインディングロードを走ってみると、左右に転舵した時の荷重移動が非常にスムーズで軽快。ノーズの入り方もこれまでの無理やり感がなく、非常にスムーズだ。エンジンも一気に6000rpmまで吹け上がり、やはりこれまでマスタングというクルマでは感じられなかった回転によってパワーを稼ぎ出す感覚がある。

軽快な走りの中でも特に印象的だったのが、左右の荷重移動のスムーズさ。そして 荷重変化に対するリアの踏ん張り感はさすがに独立懸架になった恩恵が大きいと感じられた。

3サイズは4783×1915×1382mm。試乗場所がアメリカということもあり、まったくサイズ感を感じなかった。むしろアメリカでは小さいクルマである。相変わらずインテリアの作りは全体的にスポーティーな雰囲気を強調するタイトな印象。特にリアシートはやはり大人が座るにはレッグスペース、ヘッドルームともに不足して、あくまでも緊急用あるいは子供用と割り切った方がいい。一方でトランクスペースはリアシートを倒してトランクスルーとすることが出来るので、二人で出かけるにはどんな荷物でも許容してくれそうだ。シートも今回からサイドのえぐりが少々強くされたようで、コーナリング時のサイドサポート性能は向上している。

パッと見では従来の延長線上にあってまさしくマスタングらしいデザインであるが、驚いたことに従来のぼってり感がまるでなく、非常にシャープなデザインでまとめられ、リアクォーターからの印象など、非常にスマートになった。このデザイン、今回からクーペと呼ばずにファーストバックを名乗る。1965年以来の名称が復活した形だ。全世界110か国に販売されるという新しいマスタング。ちゃんとアメリカンなデザインを持ちながら、世界市場にフィットする性能やクオリティーでまとめ上げている。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁|AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来36年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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