【インタビュー】ルノーデザインの「いま」、サイクル・オブ・ライフとは…アジアスタジオ代表に訊く

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クリストフ・デュポン氏
クリストフ・デュポン氏 全 13 枚 拡大写真

ローレンス・ヴァン・デン・アッカーがディレクターに就任して以来、ルノー車のデザインは大きく変革した。新たな戦略の元にデザインされた『クリオ』(日本名『ルーテシア』)と『キャプチャー』は欧州で大ヒットを記録している。

また2014年にはスマートとプラットフォームを共有する『トゥインゴ』、そしてフラッグシップの『エスパス』も登場。いずれもルノーの掲げるデザイン戦略「サイクル・オブ・ライフ」に従いつつ、個性的で魅力的なスタイリングを持つ。

今年9月にルノーデザイン・アジアスタジオのエグゼクティブ・マネージングディレクターに就任したクリストフ・デュポン氏が、東京デザイナーズウィーク2014にあわせて来日したのを機に、ルノーデザインの「いま」を訊いた。

◆サテライトスタジオの役割

----:まずルノーデザイン・アジアスタジオとはどういった組織なのか教えてください。

クリストフ・デュポン氏(以下、デュポン):ルノーのデザインネットワークの中で、サテライトスタジオという位置づけになります。ルノーサムスンのラインナップのデザインを担当しているほか、ルノー全体のプロジェクトにも参加、貢献していますよ。

----:ルノーは現在、デザイン戦略として「サイクル・オブ・ライフ」を掲げています。サテライトとして、この戦略にたいしてどのようなアプローチでデザインを手がけているのですか?

デュポン:ローレンスは、ルノーのデザインをより官能的、情緒的なものにしようとしています。またフィロソフィとしては、ラインナップ全体で横断的に一貫性を持たせるということをしています。

ですからチームのメンバーにたいしては、「ローレンスの描いた全体像の中において創造性を発揮するように」と指示を出していますよ。サテライトであっても、ルノーとして統一されたデザイン戦略に従ってデザインを考えなければいけません。

----:それではユニークなアイデアは出にくくなりませんか?

デュポン:私たちはアジアのデザイン拠点として、アジアの視点が入っている提案を期待されているのです。つまりアジアにおいての、市場からの期待を考慮した提案をするわけですね。

たとえばよりダイナミックなエクステリアであったり、あるいはとびきりルーミーなインテリアであったり。ただし個性的なアイデアであっても、デザインランゲージはルノーとして一貫したものを用いる、ということです。

◆ルノー・グループとしてのブランド・ディレクションについて

----:ルノーには韓国ローカルのサムスンのほか、ダチアというブランドもあります。そして新興国では、ダチアのモデルがルノー車として売られることもある。こうした中で、どのようにブランドをディレクションしているのでしょうか?

デュポン:ダチアは、西ヨーロッパにおいてはデザインのアイデンティティもランゲージも、ルノーとは明確に区別されています。その他のロシアやブラジル、インドといった、ルノーにとっての新興市場では、経済性といった観点からダチアをルノーとして販売しています。

----:ルノーというブランドの浸透を優先しているということですね。しかしダチア車であっても、『ロガン』や『サンデロ』などはルノー車としてもまったく違和感のないフロントエンドになっているのが素晴らしいと思います。

デュポン:ただし、こうしたやりかたを今後も持続させるわけではありません。市場の成熟にしたがって、より高価格帯のモデルも売れるようになってくると、状況は変わってきます。

次世代のラインナップになると、エントリーモデルはダチアとなり、ルノーのバッジを持つものとは明確な違いを持つようになります。同じプラットフォームで基本的には同じ車種だったとしても、スタイリングは大きな違いを持つようになるでしょう。

----:今年のパリモーターショーでデビューした新型『エスパス』のデザインは、あなたが韓国へ行く前に、本社デザインセンターでディレクションしたものですね。最新のルノーデザインの事例として、エスパスのデザインについて教えてください。

デュポン:MPVとして認知されてきたエスパスをもう一度蘇らせるということは、非常に難しく、しかし触発される興味深い試みでした。エスパスはルノーのなかでアイコニック(象徴的)な存在です。しかし顧客の嗜好は変わってきていて、市場はSUVへのシフトが進んでいます。

ですから、エスパスをもういちど「再発明する」というかたちで、革新的でダイナミックな「ファミリータイプのクロスオーバー」にしようとしました。筋肉質だけれども洗練されたエクステリアはSUV。広々として快適、多用途で機能的なインテリアはMPV。これらを組み合わせたクロスオーバーモデル、これが新しいエスパスです。

----:「サイクル・オブ・ライフ」で定めた6つのステージの中には「FAMILY」があります。エスパスはファミリーカーとして、ここに該当するのでしょうか?

デュポン:いいえ。たしかにターゲットにはファミリーユースが含まれますが、「WISDOM」(知恵、分別)が適切ですね。新しい経験や、従来のセダンに代わる新しいステータスを表現していますから。ルノーのフラッグシップとして、ブランドのユニークさを表現したデザインです。

ドライビングの体験に焦点を当てていますし、インテリアもユニークです。MPVよりもエキサイティングで、セダンよりもモダン。しかしSUVほどにはアグレッシブではない。これがエスパスの特徴といえるでしょう。

◆今後のルノーデザインについて

----:それではエスパス以降は、ルノー車のデザインはどのようなものになってゆくと考えていますか?

デュポン:もっと魅力的なものにしていきたいですね。次の目標は、競合モデルでユーザーが知りうる最高の品質に追い付くことです。これから発表されるCセグメント、Dセグメントのモデルでは、この点において大きな飛躍を果たしているはずですよ。

またルノー全体のデザイン戦略に関しては、目標を正しく設定したと思っています。ですからこれをしっかり続けてゆくということになります。

----:「サイクル・オブ・ライフ」は確実に推進されているのですね。日本でもルーテシアとキャプチャーのデザインは好評ですから、トゥインゴとエスパスも日本市場への早期導入を期待したいところです。今日はありがとうございました。

《古庄 速人》

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