がん治療の世界最先端技術として日本が世界に誇る「重粒子線治療」のタイへの導入プロジェクトが始動した。
タイ側は東南アジア最大の私立病院グループを率いるバンコク デュシット メディカル サービシーズ株式会社(BDMS)、日本側は合同会社国際総合研究所(USI)がそれぞれ主導。10月9日、タイ国立マヒドン大学附属シリラート病院、日本の特定非営利活動法人(NPO)放射線医療国際協力推進機構、在タイ日本大使館といった関係機関を交えて覚書(MOU)が締結された。治療センター設置場所はBDMS傘下のサミティヴェート病院シーナカリンで、治療開始は4年後を見込んでいる。
重粒子線治療とは?
重粒子線治療は、炭素イオンを秒速20万キロメートル(地球5周、光速の70%)まで高速加速させた炭素イオン線を用いて病巣をピンポイントで照射、短期間で治癒させるがん治療法。現在主流となっているX線の2―3倍の強さを持ち、皮ふ表面など正常組織に副作用を与えにくいことで知られている。
悪性のがんにも効果的であることが証明されており、治療にかかる時間は15分程度で実際の照射は1―2分、症状に応じて数回繰り返す。X線治療は6―8週間の時間を要するが、重粒子線治療は1日―2週間、長くても4週間と劇的に短く、体力的もしくは症状的に手術が困難な場合にも有効とされる。ただ、日本では今のところ保険適用外で治療費は平均300万円かかる。
重粒子線治療は日本をはじめ、ドイツ、イタリア、中国など世界7カ国が導入、タイは今回のプロジェクト実現によって8カ国目となる。日本にはすでに4カ所あり、群馬大学が普及タイプの装置による臨床試験を進めている。
日タイ協力によるプロジェクト
今回のMOU締結によって、事業化調査、装置開発、設備建設、人材育成などが進められることになる。学術的にはマヒドン大学と群馬大学が積極的に協力していく。
重粒子線治療センターはサッカーコートの3分の1程度の土地を必要とするため、BDMSはバンコク都心とスワンナプーム空港の中間地点に位置し広い敷地を有するサミティヴェート病院シーナカリンへの設置を予定。建設総額は150億―250億円(45億―76億バーツ)を試算している。治療開始は4年後を見込んでおり、年間300人の治療を目指す。
タイは日本と共に、東南アジアのみならず環太平洋という広大な地域で、重粒子線治療でリーダー的役割を担うことが期待される。
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