個々の項目の★評価が高いのに、オススメ度で★3つなのは、MINIのその独特な乗り心地ゆえである。「あら、そうなのね、評判もいいからこれにしたわ」と購入した後に、このパッキパキなカート感覚の乗り心地(ついでにシートもデザインの丸っこさと異なり硬い)に、げげっとのけぞられても困るからだ。
MINIの走りの世界観は他車とは一線を画す。乗りやすいとも、快適にとも、スポーティとも異なる刺激的なものだ。しかも走行モードで「スポーツ」を選べば、MINIが分類されるコンパクト・セグメントの常識では考えられないクイックさ。デザインや雰囲気で購買の食指を動かしている人に、「そこわかっているよね?」と、おせっかいな台詞を言いたくなるというものだ。
ただしその乗り心地を好意的に受け入れたうえで言えば、MINIに新たに投入された5ドアの使いやすさは絶対的なものがある。3ドアの弱点はチャイルドシートがつけにくいドア構成と4人乗りということ。5ドアではそうした不便要素を払拭した。ついでに荷物スペースも広い。うまいのは、長く伸ばしたボディを感じさせないデザインの処理だ。リアウィンドをナナメに倒し、屋根の長さを必要以上に伸ばさないことで実現させている。
試乗した1.5リットルの「クーパー」は、3気筒エンジンでエンジンルームが軽いせいか、ハンドルを切ったときに、ぐぐっと切り込んでいく感じが衝撃的なくらい気持ちいい。ホイールベースが長くなったんだから、もう少しもっさりしているのかと疑っていたら、とんでもなかった。エンジンスタートするときに、ブレーキペダルを踏むと、センターコンソールに紛れ込むように鎮座するスタートスイッチが赤く光る。こんな演出も心憎くて、やっぱりMINIは遊び心満載だなあとしみじみ思うのである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材中するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。