いよいよ国内線にも…航空機内Wi-Fiを体験してみた

航空 企業動向
Wi-Fiが使える航空機は、機体上部中央に取り付けられている白いドーム状の衛星アンテナがある。
Wi-Fiが使える航空機は、機体上部中央に取り付けられている白いドーム状の衛星アンテナがある。 全 7 枚 拡大写真

 国土交通省が定める告示の改正に伴い、航空機上での電子機器の使用制限が緩和された。

 それまでは、機内では離着陸時は「必ず電源をOFFに」とアナウンスされていたものが、2014年9月1日からは「マナーモードなど電波を発しないモードにするように」というアナウンスに変わっている。たいした違いが無いようにも思えるが、たとえばこの制限緩和により、離着陸時にもスマートフォンを使ってカメラ撮影などを楽しめるようになった。また、着陸後は、空港ターミナルに着く前に「ただいまから携帯電話等の通信機能をご利用いただけます」というアナウンスも流れ(ただし通話は迷惑になるので遠慮をという注意付)、ターミナルまでの移動中の機内でメールやSNSの確認をすることも可能になった。また一部機材ではこれまで国際線でしか見かけなかった機内Wi-Fi設備を整えたものも登場し、国内でも空の上からインターネットを利用できる環境が整い始めている。

 こうした機内Wi-Fiを搭載した機に乗り合わせる機会があったので、その通信環境などをリポートしたい。

■電子機器使用制限緩和でできるようになったこと

 国土交通省が定めていた従来の告示では、国内線の航空機における電子機器の利用については、離着陸時はすべての電子機器の電源OFFが義務付けられ、安定飛行に入った後は、電波を発しない機器のみ利用が許されていた。これが2014年9月1日から緩和され、電波を発しない機器であれば離着陸時含め常に利用が可能となった。

 たとえばミュージックプレーヤーなども電子機器扱いだったために、離着陸時は音楽の再生を一時中断しなくてはならなかったが、9月以降はその必要がなくなった。

 あるいはデジタルカメラも電子機器に該当するので、これまでは上昇後安定飛行に移るまでは風景を撮影するというようなことができなかった。しかし、9月以降は滑走路への移動中や離着陸時にも撮影が可能になった。スマートフォン等の通信機器に関しては、電波を発することができないという点では大きな違いはなさそうだが、電源OFFの義務が解禁されたことで、デジタルカメラ同様に機内モードにしたスマートフォンを使って機窓からの風景を撮影しても差し支えなくなった。

 機中からの撮影という点では、ちょうど9月からiPhone 6/6 Plusが発売され、同時にiOSもiOS 8にアップデートされた。このiOS 8からはカメラアプリに「タイムラプス」という機能が搭載された。これは一定の間隔をあけて撮影した静止画をつなげて動画のように見せる機能で、長時間撮影したものを数十秒程度で早送りして再生できるもの。以前からあった撮影テクニックであり、そうした機能を搭載したデジタルカメラ等もあったが、iPhone(iOS)に搭載されたことで一気に認知が広まった。

 すでにソーシャルネットワークなどで飛行中の風景などをタイムラプス撮影した動画等を見かけた方も多いと思われるが、早速筆者もこれに挑戦。飛行機の機材にはブラインドがあるので、窓ガラスとブラインドの間にiPhoneを挟み、タイムラプス機能にして撮影開始し、あとは着陸まで放っておけばOK。サンプルとして撮影してみたのは、青森空港から東京国際空港(羽田)までの全飛行行程が20秒に圧縮された動画として仕上がっているが、全区間といわずとも、羽田を離陸時の幻想的な夜景に絞り込んで撮影してみるのも楽しそうだ。

■国内線にも登場した機内Wi-Fiサービスを利用してみた

 従来、国際線の一部でしか利用できなかった機内W-Fiサービスが、いよいよ国内線でも利用できるようになった。日本航空(JAL)は、2014年7月23日からこのサービスをスタートし、順次対応機材を増やすとともに、就航路線も序々に増やしているところだ。同じく全日本空輸(ANA)もすでに国際線では機内Wi-Fiサービスを行っているが、2015年4月以降順次国内線でもサービスを導入するとしている。

 先行しているJALは『JAL SKY Wi-Fi』という名称で、東京(羽田)~福岡線、東京(羽田)~札幌(新千歳)線、東京(羽田)~大阪(伊丹)線、東京(羽田)~鹿児島線、東京(羽田)~沖縄(那覇)線、東京(羽田)~松山線、東京(羽田)~山口宇部線、東京(羽田)~熊本線、東京(羽田)~小松線に就航中。ただし同区間のすべての便というわけではなく、対応機材を使った便のみで利用が可能である。また今後も導入路線は順次増えていく。
 このJALのサービスは、アメリカのgogo社のシステムをベースにした衛星通信システムを利用しており、ユーザーは利用時にgogo社のアカウントを作成する必要がある。登録は簡単で、メールアドレスやパスワード等の必要事項を登録するだけである。次回の利用からはユーザーID(メールアドレス)とパスワードを入力するだけで利用できる。利用料金は、30分単位で400円の時間制(30分プラン)か、搭乗中つなぎ放題となるプラン(フライトプラン)かを選ぶことができる。つなぎ放題となる「フライトプラン」は飛行マイルに応じて料金が異なり、東京(羽田)~大阪(伊丹)など450マイル以内を飛ぶ便では500円、東京(羽田)~札幌など451~650マイル区間は、スマートフォンが500円、ラップトップやタブレットは700円、東京(羽田)~沖縄(那覇)など651マイル以上の区間ではスマートフォンが700円、ラップトップやタブレットが1,200円となる。また、これはあくまでも1フライトごと、そして1端末ごとの決済となり、複数の端末を利用する際や、同日中でも別フライトで利用する場合はその都度料金が必要となる。

 実際の使用方法であるが、機内に搭乗後は当然のことながら「機内モード」など電波を発しないモードに設定する必要がある。離陸後は、たとえばiPhoneの場合は「機内モード」の状態で「Wi-Fi」をONにし、SSIDで「gogoinflight」を選択する。その後ブラウザを開くとJAL SKY Wi-Fiポータルサイトが開くので、そこでgogo社のアカウント設定(クレジットカード登録など)や、コースの選択をすれば利用可能となる。

 筆者はiPhoneで利用したが、メールの送受信やfacebookやLINEなどのソーシャルネットワークの利用に関してはストレス無く利用が可能だった。また、JAL SKY Wi-Fiポータルの画面では、飛行中の現在地と到着までの時間などが表示された。これを見ているだけでも面白い。

 じつは世界では、航空機上で携帯電話やインターネットの利用を可能にしようという試みは2000年代初旬から検討されてきた。2004年には米国ボーイング社の系列企業が「Connexion by Boeing」の名称で通信衛星を利用した機内インターネット接続サービスを開始し、JALをはじめ世界の主要航空会社がこれを採用するなどしていた。しかし、まだこの時代はノートPCの活用が中心で、一部のビジネスマンを中心にニーズはあったが利用は伸びず、の2006年にはサービスが休止されてしまった。

 その後はGoGo社が設置する地上アンテナと航空機側下部に付けたアンテナとで通信を行うシステムなども考案され米国内の航空会社で使用されてきたが、これでは陸地では利用できても海上では通信が利用できないということで、再度衛星通信を利用した機内通信システムが注目されるようになった。JALでは、国際線で再びこの衛星通信を利用した機内Wi-Fiサービスを2012年7月より、一部の路線で運用を開始。そして本年7月からは国内線への導入も開始した。かつては一部のビジネスマンがノートPCでWi-Fiを利用するというものであったが、その後携帯電話からスマートフォンへのシフトや、タブレットなど手軽にインターネットを利用するシチュエーションが増え、Wi-Fiを必要とするユーザー層が一般の消費者に大きく広がったことも、再び機内Wi-Fiサービスが必要とされるきっかけになっていったのであろう。

 機材と衛星間で通信をするためのアンテナは、機材中央上部に取り付けられている。白いドーム状をしていて、この中には衛星を自動追尾する可動式のアンテナが収められている。機体のこのアンテナと通信衛星とは「Kuバンド」と呼ばれる12ギガ~18ギガヘルツの周波数で通信を行っている。

 日本航空によれば、機体上部へのアンテナ設置は高度な技術を要し、かつ細心の注意を必要とする作業を伴う。また、航空機の機体にアンテナを装着すること、機内にアクセスポイントを設置することは「航空機の改修」となるため、米国連邦航空局(FAA)と国交省航空局(JCAB)の承認が必要となるため、国際線向けの最初の機材を改造するために費やした期間は約2カ月もかかったという。その後ノウハウを蓄積して2機目は約2週間で完成。以後、着々と増備され、いよいよ国内線でも利用できるところまで来た。

 筆者が最も利用する東京(羽田)~青森間は、まだ来年前半の計画にも入っていないが、こうした地方路線にもぜひ拡げてもらいたいものである。

【木暮祐一のモバイルウォッチ】第65回 航空機内Wi-Fiを体験してみた

《木暮祐一@RBB TODAY》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  2. 最後のフォードエンジン搭載ケータハム、「セブン 310アンコール」発表
  3. 船上で水素を製造できる「エナジー・オブザーバー」が9年間の航海へ
  4. 高機能ヘルメットスタンド、梅雨・湿気から解放する乾燥ファン搭載でMakuake登場
  5. 「三菱っぽくないけどカッコいい」ルノーの兄弟車となる『エクリプス クロス』次期型デザインに反響
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
  2. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  3. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  4. BYD、認定中古車にも「10年30万km」バッテリーSoH保証適用
  5. 「あれはなんだ?」BYDが“軽EV”を作る気になった会長の一言
ランキングをもっと見る