【メルセデスベンツ AMG GT S 試乗】想像を超えるほどスパルタン、ガルウイングを捨て軽やかに…山崎元裕

試乗記 輸入車
メルセデスベンツ AMG GT S
メルセデスベンツ AMG GT S 全 8 枚 拡大写真
これまでの『SLS AMG』に続く、メルセデスAMGの完全自社開発によるリアルスポーツ、『AMG GT S』にカリフォルニアで試乗した。

ちなみにAMG GTシリーズには、スタンダードな「GT」と、高性能仕様となる「GT S」がラインナップされているが、今回用意された試乗車は後者のみ。搭載される4リットル仕様のV型8気筒ツインターボエンジンが、510ps&650Nm仕様となること(GTは462ps&600Nm)を始め、電子制御デファレンシャルや、20インチ径タイヤなどが、GT Sの特徴となっている。

AMG GT Sは、想像を超えるほどにスパルタンで、そしてもちろんエモーショナルなモデルだった。2シーターのキャビンを左右に二分割するワイドなセンターコンソールには、フロントのV型8気筒エンジンをモチーフとした、8個のスイッチが整然と配置されている。その左上のスイッチはAMGダイナミックセレクトと呼ばれる、ドライブロジックを変更するためのもので、「コンフォート」、「スポーツ」、「スポーツプラス」、「インディビジュアル」、そしてGT Sでは「レース」の各モードの選択が可能。それによって7速DCTを始め、ステアリングやサスペンション、さらにはスロットルレスポンス、エグゾースト、リアスポイラー、そしてESPなどの制御を一括して変化させることができるほか、ミッションのマニュアルモードなど、多くの要素は独立してその設定を変化させることも可能だ。

ゴーストップの多い、路面の荒れ方が激しいサンフランシスコの市街地は、もちろんスタート&ストップ機構が働くコンフォートモードを選択する。乗り心地はこのモードでも相当な硬さだ。AMGの名を掲げたモデルは中途半端な覚悟では乗れないのだと、プレッシャーをかけられているようだ。一方でその路面からの衝撃を最終的に受け止めるボディーの剛性感は実に素晴らしい。それはマン・マシンの一体感を演出し、またAMG GT Sに対しての絶対的な信頼感を生み出してくれる。

市街地を抜けるとトラッフィックは一気に減り、ようやくそのパフォーマンスをフルに楽しむことが可能になった。試乗プログラムの最後には、コークスクリューで有名な、あのラグナセカ・レースウェイでのドライブも予定されているというから、ここではおもにスポーツ、スポーツプラスの両モードでの走りを楽しむことにした。

アクセルレスポンスにはさらに鋭くなり、Vバンク間にツインターボのシステムを搭載したことで、ターボラグを解消したというエンジンは、たしかに大排気量の自然吸気エンジンにも近いナチュラルなフィールを伝えてくれる。510psのパワーはもちろん圧巻。スペックシートに記載される0-100km/h加速の3.8秒、そしてリミッター作動による310km/hの最高速への期待感は大きく高まるが、カリフォルニアのオンロードでは、残念ながらそれにトライするわけにはいかなかった。

前作のSLS AMGで採用されていたガルウイングドアは継承されなかったものの、この決断によってAMG GTは、実に流麗なエクステリアデザインと、より魅力的な軽量性と低重心を実現することに成功した。その効果が最も顕著に表れるのは、言うまでもなくコーナリング時の動き。47:53という前後重量配分値は、SLS AMGからの伝統的な数字だが、これはミッションとデファレンシャルをリアに搭載する、トランスアクスル方式を採用したことによるもの。コーナリングはきわめてスムーズで、積極的にターンインを演出しようというセッティングの意図も理解できる。

今回の試乗車には、オプションとなるカーボン・セラミック・ブレーキの装着車も何台か用意されていたが、いわゆるバネ下重量でさらに有利になるこの仕様では、前後のサスペンションの動きがスムーズに感じられたのは言うまでもないところだ。

ラグナセカ・レースウェイでは、GT Sがベースとなる特別仕様車、「エディション・ワン」のステアリングを握った。GT Sのみの特権ともいえるレースモードでの走りでは、とりわけ7速DCTのシフトの速さと、さらにダイレクトで一体感のあるコーナリングが印象的だった。エアロダイナミクスの素晴らしさも、ここで感じた大きな特長。

AMG GTシリーズの直接のライバルとなるのは、もちろんあのポルシェ911シリーズであることは間違いない。そのライバル関係は、これから両車とどのように進化させていくのだろうか。まだ誕生したばかりのAMG GTだが、早くも未来に向けてのプランが楽しみになってきた。ちなみに日本市場でも、AMG GTシリーズはそう遠くないうちにデビューを飾る予定。また日本仕様には、ディストロニックプラスなどの装備も搭載される可能性が高いという。


■5つ星評価
パッケージング ★★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★


山崎元裕|モーター・ジャーナリスト(日本自動車ジャーナリスト協会会員)
1963年新潟市生まれ、青山学院大学理工学部機械工学科卒業。少年期にスーパーカーブームの洗礼を受け、大学で機械工学を学ぶことを決意。自動車雑誌編集部を経て、モーター・ジャーナリストとして独立する。現在でも、最も熱くなれるのは、スーパーカー&プレミアムカーの世界。それらのニューモデルが誕生するモーターショーという場所は、必ず自分自身で取材したいという徹底したポリシーを持つ。

《山崎 元裕》

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