インディアン・モーターサイクルは、1901年に創立された、アメリカで最も歴史の古いバイクメーカーである。ただ、1953年には1度幕を下ろしてしまい、その後の復活劇はまさに波乱万丈。1999年に『チーフ』を生産開始するも、2003年には挫折の憂い目に合い、またもや新体制で2008年に、2009年型チーフの生産が試まれてきた。
だが、2011年に米国のATVメーカー、ポラリス社の傘下に加わることで、インディアンの復活は確かなものとなった。そして、2013年夏に新設計の3モデルから成るチーフシリーズが登場し、1年後の2014年夏に発表されたのが、このミドルクラスとなる『スカウト』である。
排気量1133ccの水冷DOHC4バルブ60度Vツインエンジンを、アルミダイキャストフレームに搭載するという今日的な車輌構成だが、1920年のスカウトのフォルムを再現。斬新さと伝統が絡み合い、いかにも“ネオクラシック”といったスタイリングは、まさに真性アメリカンを思わせる。
それでいて、見た方によってはアメリカンらしくないハイメカ搭載だけあって、スカウトの走りは、一般的なアメリカンにないスポーティさがある。
2速でフル加速すれば、100km/h位までは身体が置いていかれる程の急加速を見せ、あっという間に130km/hを超してしまう。脚を前方に投げ出したクルーザースタイルのライポジで乗っているのに、気分はスポーツそのもの。車体の安定性も申し分ない。
もちろん、スカウトはクルーザーであることの期待を裏切らない。極低回転域からエンジンに粘りがあって、2000rpm以下(6速で60km/h)でのクルージングは鼓動感があって実にテイスティ。
車体も、しっかりとした剛性感がありながらも、適度のしなり感がマシンの表情として伝わってきて何とも楽しいのである。
足着き性は抜群で、私も含め、小柄な小柄な日本人が乗っても、手足が伸び切ることはなく、ライポジにフィット感がある。軽量で、取り回しにも右往左往することはない。世界戦略車ながら、日本市場向きを思わせる。
■5つ星評価
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
快適性:★★★★★
オススメ度:★★★★★
和歌山利宏|二輪ジャーナリスト
1954年生まれ、1975年にヤマハ発動機に入社し、様々なロードスポーツバイクの開発に携わり、テストライダーも務める。また、自らレース活動も行ない、鈴鹿8耐第5回大会では4位入賞の成績を持つ。現在は二輪ジャーナリストとして執筆活動、ライディングインストラクターなど多方面で活躍中。