【年末インタビュー】2015年、経済の好循環を巡らす正念場に…池自工会会長

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日本自動車工業会 池史彦会長
日本自動車工業会 池史彦会長 全 8 枚 拡大写真

日本自動車工業会の池史彦会長(ホンダ会長)は、2015年に向けたメディア各社との共同インタビューで、新年を「経済の好循環を巡らす」ための正念場と位置付けた。

また、円安の進行によって海外市場の需要を補完するための輸出が増加し、生産の「日本回帰」が進むとの見方を示した。

◆消費者の期待に応え得るいい商品で需要喚起

----:2014年は円安の進行や消費税引き上げに伴う国内の反動減の長期化、アメリカ市場の回復と新興諸国市場の不調など、経営を左右する要因が続きました。2015年をどう展望していますか。

池会長(以下、池):おっしゃる通り、14年は複雑な年となった。自動車産業の「6重苦」といっていたなかで一番業績に直接的な影響を与えていた長期の円高は急激に円安に振れ、業績面では間違いなく追い風になった。各社の業績は、期中に更なる上方修正もあるのかなと見ている。

アメリカは年換算で1700万台を超える水準にあるので、市況は回復したわけだが、従来のけん引役となっていた中国を筆頭とする進展国の需要は相当、減速感が強かった。アメリカはリーマン・ショック前に戻ってきた。08年に起きた時は、向こう10年くらい市場は戻らないのではと思っていた。7、8年で戻ったが、傷は深かったという印象だ。海外を総括するとアメリカは回復してきたが、進展国は総じて良くないので、まだら模様ということだ。

一番気になるのは、アメリカは景気が強いものの金融の緩和を引き締めつつも、まだ利上げまでは至っていない。お金の貸し出しでは、ある種リーマン前のような(緩和)状況となっているのがちょっと不気味な気もする。一方でFRB(連邦準備制度理事会)が引き締めに向かっているのは実体経済に自信をもっているからだろう。ある種、そこに期待したいということはある。

一方で国内に目を投じると、消費税アップ後は駆け込み後の反動減が夏以降に戻るだろうと見ていたが、全く戻る気配がなく、秋も受注の減少が続いている。2015年の抱負というところで言うと、まさに正念場にある。それは自動車業界が苦しいというのでなく日本経済全体がそうだと思っている。

第3次安倍政権で持続的な経済成長の好循環を巡らすという、相当大きな正念場の年になる。GDPの6割強を占めている個人消費では、単価の大きい自動車の影響が大きいが、需要は厳しい状況にある。自動車メーカーとしては、やはり消費者の期待に応え得るいい商品を出して需要喚起につなげるようきちっと取り組みたい。

◆アメリカ市場は15年も1700万台近くが続く

----:15年は需要喚起にもつながる東京モーターショーが開催されます。

池:13年の前回のショーは豊田章男・前会長に相当盛り上げていただいたので、その勢いを続けるよう取り組みたい。今年10月に開催した「東京モーターフェス2014」では毎日3万人以上の方に来ていただくなど、好感触をつかんでいるので、これを本番につなげていきたい。

また、3回目の展示となる「スマート・モビリティ・シティ2015」では住宅、エネルギー、情報通信など異業種の方々の参加も仰ぐ。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた近未来社会の、ある種テーマパークのようなコーナーにしたい。

----:2015年の国内外の市場動向はどう見ていますか。

池:自工会としてはまだ、正式な数字をもっていないので、あくまでも私の主観となるが、国内はもうちょっと様子を見たい。とくに税制が決まらないと何とも言い難いので、年が明けて2月、3月には自工会として正式にお伝えしたい。個人的には相当厳しいものになると見ている。アメリカについては14年が1600数十万台から1700万台近くとなるが、15年もこれが大きく落ち込むということはないかなと思う。少なくとも来年は今の延長線で行けるのではないか。

進展国については、とくに大市場である中国がいよいよ減速となってきており、香港などを除くと(GDP成長率は)5%行くか行かないかになってくる。自動車についても全体の経済の減速で、やはり減速していくのかなと。ただ、他国にくらべると成長の度合いは、まだ多少いいということになる。

中国を除くアジアについては、厳しい状況がまだ当分続くのかなと見ている。ロシアについては自動車市場が決して大きくないなかで、各社さんも進出して苦しい状況のなかでやっていたところにルーブルの下落となった。原油価格下落に引っ張られての危機だが、それ以外に外交で孤立しているという地政学的なリスクもあるので、こちらも厳しい状況が続く。

◆円安で輸出車両の国内生産回帰が進む

----:円安の進行によって、自動車は国内生産に回帰する動きも出ているが、今後はどう見ていますか。

池:各社の対応であり自工会としてコメントしにくいが、輸出についてはこの円安傾向が続けば、また(国内に)回帰する動きになろう。しかし、自動車は4輪車工場ひとつで1000億円以上の投資となるので、短期に切り替えたりはできない。だが、海外で需要が増えた地域向けには、現地生産を補完する形で日本から輸出するという思いは各社とももっているし、そういう動きになっている。

(円安による輸出車の)コストが2割以上改善していることからも、文字どおり日本回帰の動きは始まっている。現地生産を補完するだけでなく、高付加価値の次世代車、たとえばハイブリッド車(HV)など日本以外での生産が難しい製品も輸出が増加するだろう。円高時は採算性が悪くても日本から輸出していたが、円安で経済合理性をもって輸出できるようになる。日本でしか生産できないものが、健全な姿で輸出できることになる。

----:内外でリコールが大規模になっていますが、自動車業界として「安全」にはどう対応していきますか。

池:リコール制度は国によって違いはあっても、消費者の安全を守るというのが大前提だ。なぜリコールがこれだけ広がっていくのかというと、メーカー側がそれだけ製造者の責任としてお客様の安全を担保しなければならないからである。ひとつでも何か不具合があったら素早く、ある意味大きな網をかけて守ろうという意志の表れだと思う。

昔はそういう制度が余りなかったし、情報も行き交わなかったので制度的にも十分にできていなかった。お客様の安全を担保しようという動きになっているからこそ、リコールがこれだけ広がっているのだと理解していただくと有難い。今は情報が瞬時に世界規模に広がるとこともあるので、メーカー側としてはいかにその責任を果たすか、とに角速く、広くということだ。

一方で技術の進化に伴い、特殊な技術というものがどんどん増えている。そもそもクルマの安全というのは、今起きている品質問題ではなく、クルマそのものを安全にしたいということで、シートベルトなどから始まった。安全に対する造る側の意識も、お客様の意識も高まり、新しいデバイスもどんどん入ってきている。

究極的にはインフラとの協調で事故を未然に防ぐというものが進んでいくのだろうが、ドライバーの責任以外で起きていることは、どんどん安全性を高めなければならない。技術の進化が必要だし、個別の技術が複雑になっていくのでその知見を高めていくことが大きな課題としてある。

《池原照雄》

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