【インタビュー】レクサス RC F はプロドライバーのためのクルマではない…矢口幸彦 開発主査

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レクサス スポーツ車両統括部 LEXUS Fグループ グループ長 矢口幸彦 製品企画 主査
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レクサスは10月22日、新型ハイパフォーマンススポーツ『RC F』を発売した。これまでの『IS F』の後任として、そして新時代のレクサスのフラッグシップとしての重要な役割を担い誕生したRC F。IS Fは、既に完成していた『IS』をベースに開発されたが、今回はベースの『RC』と同時開発。IS Fに対してアドバンテージはどこに存在するのか、RC Fの目指す境地とは。

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開発を指揮した、レクサス スポーツ車両統括部 LEXUS Fグループ グループ長 製品企画 主査、矢口幸彦氏に訊いた。

◆RCとの同時開発という利点

ISをベースに開発されたIS Fについて矢口主査は「はじめは経験不足もあったが、6年を費やしてかなり成熟したモデルになったと自負しています。ハイパフォーマンスカーはどう作れば良いのか、そして作る際はどこを重点的に見なければいけないのか、そういったことが我々のノウハウとして蓄積できました」と述べる。

「たとえば足回り。実際に取り付けたサスペンションがシミュレーションどおりに作動せず、代わりに、よりフリクションの少ないサスペンションにすることで狙っていた本来の性能が発揮できるなど、細かい点の詰めの甘さがIS Fの開発の中で分かってきました」(矢口主査)と振り返った。

対してRC Fの開発は「これらの経験がすべて生かされておりますので、IS Fとは全く違ったレベルで開発をスタートすることができました。RCと同時開発ということも大きな利点です。IS Fでは、完成したものに手を加えるので、タイヤサイズをはじめ様々な制約がありました。しかしRC Fは“この箇所はこれを使いたい”というように、RCチームと打ち合わせながらの開発もできたので、相乗効果で完成度を高めることができました」と矢口主査は話す。

◆スポーツに対するRC F独自の世界観

RC Fは、独・ニュルブルクリンクでの開発も行なったが、タイムは一切公表していない。マシンスペックを図るにはタイムは明確な数値となる。しかし矢口主査の考えは、そうではない。

「タイムは正しいように見えますが、違います。サーキットの環境や気候、ドライバーによって全く異なりますし、クルマの性能も全く同じにはなりません。よって私はタイムが正しいものとは考えておりません」

「RC Fが目指したのは、“特定のドライバーがトップタイムをマークできるマシン”ではなく“誰もが安全に速く、楽しんでサーキットを走れるクルマ”です。よってタイムの公表には意味がありません。RC Fのターゲットは皆様であり、プロドライバーではないのです」とRC Fのターゲットユーザーを説明した。

一方、RCもスポーツをウリにしているクルマである。スペック以外で、価値としての明確な違いについて矢口主査は「RCは、サーキット“も”走れるクルマです。対してRC Fはサーキット“が”走れるクルマです」と説明する。その微妙な違いについて「サーキット“が”走れるクルマは、ブレーキ、各種冷却装置にしても専用装備でなければなりません。“サーキットを走れます”とうたっている以上、確実に安全に走行して頂ける性能でなくてはいけないのです。後輪左右のトルク配分を調整するDVTもその例です」と説明した。

◆サーキットを“普通に”楽しむために

インタビューの中で矢口主査は、こんなエピソードを話した。「IS Fの話ですが、アメリカであるオーナーがポルシェに乗っていました。しかしそのオーナーは“行きはいいのだが帰りが辛い”と感じていたのだそうです。そしてIS Fに乗り換えたら“行きもいいし、帰りもラク。これがいいんだよ”と話してくれたことがあります。まさにそれが我々が考えるサーキットの楽しみなのです」。

「RC Fの狙いは“シームレス”です。家族を乗せて朝の一般道を抜け、そして思いっきりサーキットを楽しめ、帰りは温泉にでも寄り道をして帰って来られる。この楽しみを一台で完結できるというのが、RC Fの真の狙いです」

その“シームレス”を具体化するために、RC Fで実践したこと。それは「まず、IS F時代とは違い車体を基本から作り上げ、きっちりと動くサスペンションや、剛性のあるボディの採用でハイパフォーマンスながら乗り心地も良いクルマに仕上げました。最高出力477psを行動で使い切るのは無理です。ですから、公道では燃費性能も含めて普通に走れる快適性能を持った上で、サーキットでは存分に走れるといった性能が必要と判断しました」(矢口主査)と説明する。

RC FのトランスミッションはATベース(トルクコンバーター式)を採用している。それもこの考えからだという。「現在はクラッチを備えたMTをベースとしたATが台頭していますが、ATベースでも“ロックアップ機構”があるのでダイレクトなトルク伝達が可能です。そしてなにより、クラッチとは違ってトルクコンバーター式は低速時でのドライバビリティに優れています。我々が狙うRC Fの使い方にはATベースが合致しています」と矢口主査は語った。

◆現時点では120%の出来、しかしそれでは終わらない

RC Fは、一部のマニア向けではなく、“誰も”に向けたクルマである。そしてそのために、TVDなど様々な機能を装備した。矢口主査に完成度を伺うと「“現時点”では120%の完成度」との回答。しかし「1年過ぎれば状況は変わります。開発陣は現時点で最高の満足度で提供していますが、時間が経てば“あれをこうしたい、こうすればもっと良くなる”と、欲求が出てきます。エンジニアの性です」と話す。

そしてRC Fの開発を振り返り「RC Fにはベンチマークはありません。唯一あるとすれば『IS F CCSR』です。しかし、開発で分かったのは、それぞれのメーカーがそれぞれのプレミアムスポーツに思いを持って作っているということです。だからこそRC Fは自分たちが本当に作りたいクルマを目指しました」。

「開発をやめることはありません。ステップアップを続け、少しでも良いものをお客様に提供し続けることが、財産としてのRC Fを守ることだと考えています」と思いを語った。

《阿部哲也》

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