【プジョー 308 試乗】今度こそ、ゴルフ のライバルに…中村孝仁

試乗記 輸入車
プジョー 308 Allure
プジョー 308 Allure 全 12 枚 拡大写真

Cセグメントと呼ばれる、ハッチバック主体の市場にあって、言わばジャイアント的存在のモデルがVW『ゴルフ』。未だかつて、どのメーカーもその牙城に迫るモデルを作れていない。しかし、今回のプジョー『308』、かなりの強敵になったことは確かだ。

【画像全12枚】

自動車を購入する動機とでもいおうか。何故ある特定のクルマをチョイスするのか。それは人によって異なるだろうが、大きな要素としてはまずデザインがある。そしてクルマの基本たる、走る、曲がる、止まるという3要素のバランス、運転して気持ちいいか、あるいは楽しいか、持っていてステータス性を感じるか、あるいはほかのクルマと比べて費用対効果が高いか等々、要素はたくさんある。そして、ライバルが多数存在する市場では、当然のことながら比べて買うということもあるだろう。

プジョーはデザインの国フランスのプロダクツだけに、これまでもデザインに関して言えばゴルフに勝っていたと思う。勿論人それぞれ感じ方が異なるから一概には言えないが、エモーショナルなデザインであったことは確かだ。また、デザインの国は往々にして独りよがりの傾向に走ることも多く、今回の308でもその傾向がないわけではないのだが、でもエモーショナルであることに変わりはない。しかし、これまでプジョーがVWに対して決定的に劣っていたのが、クルマとしての3要素、そして運転して気持ち良いか否かという2点だった。

旧型308の話をしよう。このクルマは308がデビューした今も、恐らく在庫がある可能性があるのだが、このクルマをゴルフと比べた時個人的印象としては、その動的質感という点で大きくゴルフに水をあけられていた。ベースグレードのスタイルは未だに4速ATを採用し、俊敏なDSGを装備したゴルフには遠く及ばなかった。上級モデルの6速にしても、ドライビングプレジャーという点では後れを取っていた。何より安全デバイスをはじめとした主要装備はまるで追いついていなかったのである。

新しい308はどうか。今回は全車速対応ではないかもしれないが、アクティブクルーズコントロールの用意が出来たり、前車との衝突を避けるディスタンスアラートやエマージェンシーブレーキサポートなど必要なドライビングサポート機能を持った。さらに新1.2リットル3気筒ターボと第3世代の6速ATとの組み合わせも高次元の進化を遂げて、非常にリニアなフィーリングをもたらしてくれた。

一番驚かされた部分が、実はこのトランスミッションと3気筒ターボユニットのマッチングである。

まず、現在『208』をはじめとした多くのプジョー/シトロエンのコンパクトモデルに搭載されている3気筒ユニット。すべてノンターボで、性能的な不満はなかったのだが、組み合わされるトランスミッションに問題があって、いずれも場合も本来のポテンシャルを発揮していたとは言い難い。それがターボを装備することでまずパフォーマンスがドラスティックに向上。そしてトランスミッションのフィーリングは、スムーズでいながらなおかつ素早いシフトが可能になって、痛快にして軽快な走りを実現している。さらにノーマルでも楽しかったものが、スポーツモードをセレクトすると(そう、そういう機構も新たについた)、アクセルレスポンス、シフトタイミング、それにパワーステアリングのフィールまで変更され、まさにそのままホットハッチに変身する。

新開発のEMP2と名付けられたプラットフォームが果たしている役割も大きい。先代までのプラットフォームより70kgも軽量化したうえできっちりと剛性感を出している。だから走りのキレも素晴らしい。

反面、デザインには少し迷いが感じられる。先代308および『307』の時代には、バカデカいフロントウィンドーを特徴とした良くも悪くも個性的なデザインを持っていたが、現行モデルは相当にゴルフを意識したのか、太いCピラーと比較的立ち気味で普通サイズに戻ったフロントウィンドーを持ち、全体のプロポーションも明らかにゴルフを意識した結果が見え見えで、プジョーの強い個性はどこかに置き忘れている印象だ。

コックピットは逆に冒頭で述べた独りよがりの傾向があって、ステアリングの上から覗き込むようにメーターを見るヘッドアップインストルメントは今もって馴染めないし、今度はタコメーターの針の動きを左から右ではなく、右から左へと動かす方式に変えている。左側のスピードメーターの針と真ん中あたりでお辞儀する格好になるわけだが、こいつもあまり褒められたデザインとは言いにくい。

とまあ、いくつか不満はあるのだが、動力性能、運動性能、ドライビングプレジャー、それに忘れていたが、乗り心地。何ともしっとりとした従来の猫足が戻っているではないか。だからプジョーであり、推薦するに足るモデルに仕上がっている。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度 :★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来36年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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