【シトロエン グランド C4ピカソ 試乗】ミニバンではなく「ピープルムーバー」と呼びたい…中村孝仁

試乗記 輸入車
シトロエン グランドC4ピカソ
シトロエン グランドC4ピカソ 全 13 枚 拡大写真

先代まで単に『C4ピカソ』と呼ばれていたモデル。しかし今は、新たに2列5人乗りのモデルが導入されたことで、ニューモデルは正式名称である『グランド C4ピカソ』と呼ばれることになった。

フランス人は個人主義という言葉の発祥の国である。だからというわけではないだろうが、個を尊重する国だ。そんなわけで、7人乗りのシートはすべて独立している。つまりシートは7脚存在するのだ。

ボディサイズは4600×1825×1670mmと特別大きなわけではなく、特に全高は日本車でミニバンと称されるクルマと比べて150mm近く低い。まあほぼ、クロスオーバー並の車高が確保されているだけだ。だから、ミニバンのように中腰で室内を移動できるというタイプのモデルではない。フランスの場合、この手のクルマをミニバンとは呼ばず、ピープルムーバーと呼ぶことが多く、しかもファミリー層を狙って開発するクルマではなく、大人がゆったり快適に移動するためのクルマとして設計される。だから、現地でも価格は高めだ。

大人がゆったり快適に…を一番感じさせてくれるのが7人分の独立したシートレイアウトを持っていることである。さすがに3列目はいわゆるオケージョナルシート(予備シート)の域を出ないから、話としては1列目と2列目であるが、いずれのシートも個別にスライドとリクライニングが可能となっているから、自由なポジションをとって座ることが出来る。ベンチシートだとこうはいかない。それに助手席にはオットマンもついている。2列目と3列目は折りたたんでフルフラットな空間を作ることも可能だから、いざとなればかなり大きな荷物を運ぶことも可能となる利便性も備えているが、二次的な使い勝手である。因みに最大の積載容量は2181リットルと巨大だ。

走りに関しては5シーターの『C4』と基本的に変わるところはない。ホイールベースが60mm伸びて、車重で70kg、5シーターより重くなっているから、よりマイルドで快適である。ステアリングに速い入力を入れるとボディがグラッとくるのもシトロエンならでは。それでいながら路面は絶対に放さない。シトロエンを3台乗り継いだ経験から言っても、かなりハイドロ系の乗り心地に近いものを持っている(さすがに敵わないが)。

ドライブトレーンは1.6リットルターボユニットと6ATの組み合わせ。先代までは同じ6速でもEGS、つまりシングルクラッチの電子制御マニュアルとの組み合わせだったが、今回はアイシン製のちゃんとしたオートマチックである。エンジンも若干パワーアップされて(9psアップ)、165ps、240Nmの性能を得る。240Nmといえば、ちょっと前なら2.5リットル級NAエンジンのトルクだから、走りに不満があろうはずもなく、フルロードになっても、性能面での不満は出ないと思う。今回は箱根の山道が試乗コース、2人乗車で走ってみたが、力不足を感じるような状況は一切なしであった。

今回のモデルは全体的に非常に大きく進化した。例えばプラットフォームは最新鋭に変わり70kg軽量化してかつ剛性アップしている。また、レーンデパーチャーウォーニングやアクティブシートベルト、ブラインドスポットモニターなどの安全面も充実しているし、パークアシストは縦列駐車のみならず、通常の並列駐車にも対応。実際に試してみたが、一度で入らなければ、前進を促し、再度挑戦してちゃんと指定の場所に綺麗におさめる。この間ドライバーのやることといえば、ギアの選択とブレーキの制御だけ。ステアリングには一切触れる必要がない。

とまあ、かつては意固地にフランス流を貫いたクルマ作りをしてきたが、今はだいぶグローバルな考えを取り入れて、良いものは積極的に導入している。それでも譲れない乗り心地や個人主義の概念は捨てていないから、フランス流もしっかりと感じ取れるのである。日本的思考のミニバンからはかけ離れた存在で、やはりピープルムーバーと呼びたい1台だ。

■5つ星評価
パッケージング ―★★★★★
インテリア居住性 ★★★★★
パワーソース ★★★★
フットワーク ★★★★
おすすめ度 ―★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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