【クラウドカーナビ最前線】ADAS時代到来に向けて12年超の実績活かす…ホンダ インターナビ

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ホンダ・インターナビ
ホンダ・インターナビ 全 9 枚 拡大写真

ホンダがインターナビにおいて、車両が走行した区間の所要時間データをサーバにアップロードし、交通情報として提供する「フローティングカー・システム」を開始してから12年。その後もインターナビは気象情報のリアルタイム提供(「インターナビ・ウェザー」)、出発時刻アドバイザーや主要道のリアルタイム地図更新、省燃費ルートや最速ルートをサーバー上で計算して端末に送信する「インターナビ・ルート」など、画期的なナビサービスを次々と世に送り出してきた。さらに2010年3月には、ハイブリッドスポーツクーペ『CR-Z』の発表と同時に、通信モジュールを無料で付帯した「リンクアップフリー」をスタートさせた 。

いち早く(エンターテインメントではなく)ナビゲーションと通信との融合による利便性向上に着目し、ブレることなく進化を遂げてきたインターナビ。その最新の動向をグローバルテレマティクス部部長 宇都木年典氏に話を聞いた。

◆防災・減災に通行実績データを活用

----:テレマティクス・ナビサービスであるインターナビ・プレミアムクラブが2002年にスタートしてから12年あまりが経ちました。現在の会員数は。

宇津木:インターナビの会員は累計で82万人超にまで達しています。メーカーオプションでインターナビを選択される方の9割方がリンクアップフリーを同時に選んでいただいており、会員数は順調に伸びています。

----:リンクアップフリーによって接続率が向上したことはどのような点でメリットをもたらしているのでしょうか。

宇津木:10年以上前から蓄積しているデータ量の大きさとデータ活用のノウハウは我々にとって大きな強みです。フローティングカー・システムでは個人情報を除外したカタチで通行実績データベースを構築していますが、この仕組みをつかって交通情報を提供している道路の総距離はVICSの約8倍に達しており、先の東日本大震災など、自然災害が発生した際は通行実績情報を提供してセーフティマップの作成にもお役立ていただいています。

----:2014年1月からは北海道・東北地区向けに「ホワイトアウト予測情報」の提供も開始しました。こちらはどのような情報が提供されるのでしょうか。

宇津木:ホワイトアウトは、吹雪などが原因で視界が極端に悪くなり、方向や地形などが識別できなくなる現象で、車両が立ち往生して車内の乗員が一酸化中毒など生命が危険にさらされる状態です。ドライブ中にこのホワイトアウト対象地域に近づくと車載器やスマートフォンに通知したり、家族にメール通知したりできる機能がホワイトアウト予測情報です。北海道のインターナビ会員にこのホワイトアウト予測情報についてのアンケートを行ったのですが、「今後コンテンツを利用したい」という回答が86%にも達しましたので、2015年3月まで試験を続けることになりました。これらセーフティマップやホワイトアウト予測情報などの防災・減殺に役立つ情報提供は、インターナビがスタートした当初から取り組んできた重要なテーマでして、それがひとつひとつ実を結んでいるという状況です。

----:通行実績データから得られた急ブレーキ地点を街作りや標識設置に活用する事例なども埼玉県でおこなっていますが、こうした交通ビッグデータを有償化したりコンサルティングなどをおこなうといったビジネス化の意図はあるのでしょうか。

宇津木:たしかに膨大なデータといえますが、インターナビは“お客様に還元する”というのがもともとからのポリシーでした。コンサル業などでビジネス化していくということは今のところ考えていません。行政や研究機関など、公共に資するところでインターナビのデータをご活用いただくことはすでに実績としてありますし、今後もあると考えています。

◆現行フィットから新スマート地図更新サービスを開始

----:社内の車両開発部署などに、フローティングカーのデータを提供して自動車開発へのフィードバックもおこなっているのでしょうか。

宇津木:(本田技術)研究所に対しては、必要に応じてデータを開示しています。

----:スマート地図更新サービスでのどのような頻度で更新しているのでしょうか。

宇津木:現行『フィット』以降に登場したリンクアップフリーナビについては、3年間利用できるスマート地図更新サービスが付いておりまして、半年ごとに無償で全地図を更新できるほか、新しい主要道路の開通時には、ほぼ即時でナビに反映します。また、一部車種では、インターナビ会員から投稿された情報が地図更新サービス時にカーナビの地図に反映される「インターナビマップデート」も提供しています。

----:東京も、2020年のオリンピック開催に向けてさまざまな道路やランドマークが増えることが予想されますが、地図更新の頻度や鮮度を高める予定はおありですか。

宇津木:頻度を高めれば、どうしてもコストにつながってしまいます。対応モデルが多岐に渡っているので、ひとつだけ頻度をあげるというわけにもいきません。現状では、新しく方針を変えようという状況にまでは至っていません。

◆HMIと車両データ活用でADAS時代に先鞭付ける

----:海外でのナビ利用形態は、スマートフォン+ディスプレイオーディオ(DA)という流れにシフトしつつありますが、日本国内でのナビ需要はどのように見ていますか。

宇津木:今後も車載メインという状況は変わらないと見ています。国内のお客様のニーズは圧倒的にビルトインタイプです。据え置き型ナビの利用経験者が多数を占めていることに加えて、ナビとスマートフォンをつなげるのは手間がかかるというイメージが根付いているように思います。

----:ホンダはAppleのCarPlayにもGoogleのAndroid Autoにもいち早く参画表明をしていましたが、現状の進捗は。

宇津木:進めてはいますが、具体的な対応スケジュールについてはまだお話できる段階ではありません。

----:インターナビのテレマティクスが他社に対して優れている点、強みはどのようなところにあるとお考えですか。

宇津木:振り返ると、テレマティクスのサービスは今も昔も地図情報・ナビゲーションがベースでした。地図のうえにドライバーにいかに正確な情報を提供していくかという点で、当社の強みはヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)と車両データ活用と考えています。

HMIについては、高精度な自然対話型の音声入力機能が当たり前になってくるでしょう。車両データ活用については、高度安全運転支援システム(ADAS)がらみで、路車間・車車間の通信利用が本格化することが見込まれます。いかに他社から受け取ったデータをもとに危険を察知し、ドライバーに対して的確なインフォメーションをあたえるか。インターナビがこれまで培ってきた、安全・安心の領域での情報提供技術を今後も磨いて行きたいと思います。

《聞き手 神尾寿》

《まとめ・構成 北島友和》

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