人間国宝の“塗師”×自動車塗装スペシャリスト×中田英寿、日本のモノづくりを語る

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左から関西ペイント 宮武啓次 執行役員、新和自動車 塗装チーム 菅原健二さん、人間国宝 室瀬和美さん、元サッカー日本代表 中田英寿さん、日研総業 清水浩二 代表取締役社長
左から関西ペイント 宮武啓次 執行役員、新和自動車 塗装チーム 菅原健二さん、人間国宝 室瀬和美さん、元サッカー日本代表 中田英寿さん、日研総業 清水浩二 代表取締役社長 全 16 枚 拡大写真

日研総業は1月13日、4月から開始される「モノづくりニッポン e仕事×ReVALUE NIPPON」プロジェクト第2弾の記者会見を開催した。

今回は「ジャパンクオリティを継ぐ」をテーマに、日本の伝統芸や、現代に受け継がれる技術についてトークショーが行なわれた。ゲストに招かれたのは、元サッカー日本代表の中田英寿さん、漆芸家で人間国宝の室瀬和美さん、そして2013年にフランスで開催された自動車塗装技術の世界一を決める「国際 R-M ベストペインターコンテスト」(独BASF社主催)に日本代表として出場した、新和自動車・菅原健二さんら3名だ。

◆“知恵”と“ウデ”こそ日本伝統

このプロジェクトは、中田英寿さんが立ち上げた日本再発見プロジェクト「ReVALUE NIPPON」の活動に共感した日研総業が、自社で運営する求人サイト「e仕事」と共同で、日本のモノづくりを国内外に伝え、モノづくりによって日本の若者の働き方を豊かにすることが目的。大量生産かつ安価な製品の品質や安全性が問題視され、「メイド・イン・ジャパン」のクオリティが国内外で見直されていることを背景に、日本の若者たちが伝統技術を学び、現代に活かす「塗師への道」研修プログラムを実施するものだ。

トークでは、室瀬さんが「日本の技術で一番大事なのは、“知恵”と“ワザ”だ。それが現代に伝わり、産業が成り立っている。そしてそのもとは伝統工芸にある」と発言。続けて「日本の精密機械の中には漆塗りの技術が隠れている。巨大な天体望遠鏡のレンズは人が磨いて仕上げるが、この作業は、漆塗りの技術そのもの。日本の伝統技術は、こうした機械ではできない本当に精度の高い作業に活かされている」と例を挙げた。

◆“職人”とは誰が決めるのか

伝統工芸や製造業、その他産業では“職人”という言葉が多く使われる。塗装スペシャリストの菅原さんに、“職人とは何か”という質問が飛ぶと「自分では分からない。ただ、人から“職人”と言われたときに、自分もそういう存在になったのだと実感する」とコメント。室瀬さんと中田さんも「職人の定義は難しい。“作家です”とは自分で手を挙げられるが“職人です”とは上げられない。職人とは、自分で表すのではなく、周りが決めること」と共通の意見を示した。

良い仕事をする上では、“楽しさ”、あるいは、“楽しいと思うこと”は大切といえる。「自分たちが楽しまなければ良いものはできない」と話す自動車開発責任者も少なくない。菅原さんに仕事の楽しさについて質問が飛ぶと「最初のうちは、いち早く先輩に追いつこうとがむしゃらだった。しかし、昔は苦労したことがいつの間にか簡単にできていたり、自分が持っている“こだわり”に気がつくと、仕事は楽しいものになる」と語った。

◆日本の“美”の根源

発表会の途中では、室瀬さんと菅原さんが互いの仕事を紹介するコーナーが設けられた。それぞれの作業行程や使う道具などを写真や現物でプレゼンテーションする。

それを終えて中田さんは「菅原さんの話を聞いていると、まるで漆塗り職人が話しているようだ。言っていることは完全にその道の人のもの。昔からの技術が、現代に受け継がれている証拠」と感想をコメント。そして室瀬さんも「細かいやり方や道具は違うが、行程は漆塗りと一緒。材料が違うだけで、使われる技術は変わらない」と続けた。

今回のトークショーで、室瀬さんと中田さんは“美”を強調した。中田さんは「日本人の美意識は、先代から培われてきたもの。これからは伝統工芸においても製造業においても、人に技術を教えるのではなく、“美意識を持つ人を育てる”ことが重要だ。塗装にしても昔ながらの技術があってこそのもの。単に技術を伝えるだけではいけない」と話す。

そして室瀬さんは「日本の文化は、生活や使うモノそのものに美を求める。それを代表しているのはクルマだ。塗装というのは上質を表現するのに非常に大事な行程だ。イタリアなどヨーロッパの“造形”と比べれば日本は遅れを取っている。しかし塗装、あるいはそれを再現・補修する技術は日本が勝る」と語った。

《阿部哲也》

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