【スズキ アルト 試乗】シャシー性能に大きな違い、豪華仕様の「X」…井元康一郎

試乗記 国産車
スズキ アルト X
スズキ アルト X 全 14 枚 拡大写真

昨年12月22日に発売されたスズキの軽自動車、8代目『アルト』に試乗する機会があったので、ファーストインプレッションをお届けする。

超軽量設計やエンジン改良によってエコ性能を大幅に高めた新型アルト。このうち中間グレード以上は運動エネルギーを電力に変えて回収、再利用する機構「エネチャージ」、変速レンジが広いジヤトコ製の副変速機付きCVTなど、旧型『アルトエコ』に相当する仕様で、JC08モード燃費は37km/リットルと量産乗用車としてはトヨタ『アクア』と並ぶ最高値をマークする。

ベーシックグレード「F」の次に試乗したのは、トップグレードである「X」のFWD(前輪駆動)。リモート格納機構付き電動ドアミラー、キーレスプッシュスタートシステム、レーダーブレーキサポートなどの“豪華装備”を標準で備えるほか、シャシーも前後スタビライザー付サスペンション、165/55R15タイヤなど、ある程度長距離ドライブを視野に入れたものとなっている。

テストドライブ中、XとFの最大の違いとして感じられたのはシャシー性能だった。Fのほうは振動、騒音については良好だったのだが、路面のうねりを吸収したり突起を踏んだときの衝撃を遮断したりといった乗り心地については、軽ベーシックの域を出るものではなかった。それに対してXは乗り心地がはるかに滑らかで、性能が急速に向上したイマドキの軽のはしくれというイメージ。1時間あまりという短時間の試乗だったが、これならある程度長距離も行けるのではないかという感触があった。

動力性能は良好。650kgという車重はFの5AGS(機械式自動変速機)より30kg重いものの、依然として軽乗用車中最軽量クラスであることに変わりはない。エンジンは52ps、6.4kgと、軽自動車の自然吸気エンジンとしてはごく平均的なスペックだが、スロットルを軽く踏み込むだけで面白いようにスピードが乗る。Xの変速機はCVTであるため、加速フィールは5AGSのFと違って段付きのない滑らかなものだった。筆者は1台を除き、マイカーはすべてMT車だったということもあって(唯一のAT車は激安で買った中古の初代アルトの2速AT)、5AGSをマニュアルモードで運転するのが楽しく感じられたが、一般的にはCVT車のほうがしっくりくるだろう。

燃費はアイドリングストップ機構を持つこともあって、F以上に優れていた。走行抵抗はFと同様にきわめて小さく、加速時、巡航時とも瞬間燃費計はびっくりするほど良い数値。2名乗車で舞浜を出発し、千鳥町の臨海エリアとの間の往路は信号だらけの市街地、復路は流れの良い国道357号線というルートで走ってみたところ、燃費計表示は30.8km/リットル。これは撮影のための移動・停止を繰り返したときの燃費低下分を含んだもので、撮影前は32km/リットルを超えていた。

混雑した市街地で赤信号に捕まりながら走っているときには26、27km/リットルくらいだったのだが、前がちょっと空けば燃費が勝手にぐーんと伸びるというイメージ。JC08モード燃費37km/リットルは『アクア』と同じ値だが、オンロードで30kmリットル台に乗せるのはアクアよりはるかに簡単という印象だった。青信号に変わるたびに勢いよくダッシュするような運転をやらなければ、誰でも簡単に好スコアを叩き出せるだろう。

アルトは低燃費を狙ってはいるが、エンジンのEGR(排気ガスをエンジンに還流させてポンピングロスを減らす技術)がコールドでなくホットだったり、減速エネルギー回収機構も最新の動力アシスト機構付きの「S-エネチャージ」ではなかったりと、JC08モードを必死で稼ぐ仕様ではない。そのためモード走行より負荷の高いドライブでも落ち込みが少ないのが、オンロード燃費が良好な要因のひとつと推察された。

アルトの買い方は、地方道が主体であればF。市街地走行が主体のユーザーはアイドリングストップ機構が付いた下から2番目の「L」、4名乗車の機会があるなら後席ヘッドレスト付きの「S」、片道100kmを超えるドライブも結構やるというアクティブなユーザーであれば、快適性やハンドリング性能の良いXといったところか。X以外はレーダーブレーキサポートはオプションだが、価格は8%税込みで2万1600円と安価。1回でも作動すればお釣りが来る計算なので、できれば装着したい。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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