【フォード マスタング 試乗】包みこむような余裕と“無駄”こそマスタング!…岩貞るみこ
試乗記
輸入車

なんたってこのデザイン、このノーズの長さ。ふるえちゃうくらい本能に正直なフォルム。効率って単語はマスタングの辞書にはないんだろうな。外から見ても十分に迫力なのに、運転席に座って正前を向くと、ダッシュボードの先にボンネットの盛り上がりがこれみよがしにある。最近、こういう景色にはお目にかからなかっただけに、マスタングのふてぶてしいほどの作りこみに血圧は急上昇なのである。
肝心のエンジンはというと、いい意味で予想を裏切られゆったり感が味わえる。エコブーストだの環境配慮だのと聞くと、しゃきしゃきした無駄のない、計算高さすら垣間見える乗り味を想像してしまうのだが、無駄だらけ。いや、無駄というより余裕というか、ゆとりというか、アメリカ車に期待する大味さが見事に表現されているのである。うっとり。
スポーティに走りたいときは、「Sモード」に入れると表現は一変し、アクセルに即座に反応する切れのよさを見せる。個人的には少しラフなアクセル操作をしても受け止めてくれるノーマルモードのほうが断然、いいと思うけれど。
昨今、環境にやさしいクルマが、人にやさしいといわれるけれど、こういう人の感情を包んでくれるクルマのほうが、よっぽど人に優しいと思う。乗っているあいだも、クルマを降りてからも、すごく満たされた気分になれるのだから。人生に無駄も必要。いや、無駄を無駄にしないところが、マスタングのよさなんだな、きっと。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材中するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。