スバル WRX STI、ニュル24時間参戦車がシェイクダウン…「左ハンドル」で王座奪還へ

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3年ぶりのクラス優勝を目指すスバル/STIの戦いが、いよいよ開発から実戦モードに入った。
3年ぶりのクラス優勝を目指すスバル/STIの戦いが、いよいよ開発から実戦モードに入った。 全 8 枚 拡大写真

4日、スバル/STIは2015年ニュルブルクリンク24時間レースに参戦する「SUBARU WRX STI」のシェイクダウンテストを富士スピードウェイにて実施。2か月半後のレース本番に向けて、本格的なスタートを切っている。

今年も1月の東京オートサロンで参戦が正式発表された、スバルとSTI(スバルテクニカインターナショナル)によるニュル24時間レース参戦。今年のニュル24時間は昨年より約1か月早い5月14~17日の開催となるが、この挑戦は08年から8年連続というかたちになる。世界屈指の難コース“ニュル”(フルコース)でクラス別の市販車世界最高峰の座を一昼夜かけて競うという厳しい戦いの場に身を置くことで、スバルの市販車開発にも通ずる技術力を磨き、その高さを証明することが挑戦の第一義である。

もちろん、勝利の喜びを全世界のスバルファンと共有することも重要な目的だ。すでに陣営は11年に初のクラス優勝を成し遂げ、翌12年は連覇達成と頂点を極めている。続く13年も3連覇こそならなかったものの2位と、地元ドイツ車勢を中心とする強豪がひしめくなか、アウェーで毎年1台体制という状況を克服し、トップコンテンダーとしての地位を築いてきた。

しかしながら、昨年は4位。様々な運の要素等の影響もあったとはいえ、STIの辰己英治総監督は敗戦をこう振り返る。「大いに反省をしました。(11~12年に)連覇したことによる“ゆるみ”が、今にして思えばあったんだと思います」。目に見える油断などがあったわけではなく、全ドライバー、全スタッフが昨年も全力を尽くして戦った、それは間違いない。しかし「なにがなんでも、というか、勝たなきゃ日本に帰れない、と思うくらいの覚悟があったか、ということです」。辰己総監督の言う“ゆるみ”とは、そういう高い次元での話である。

そして「スバルとSTIの総力で(昨夏から)気合いを入れて作り直しました」という今年のニュル24時間レース参戦車には、実に明快な変更点がある。それは左ハンドル化だ。

昨年の敗戦理由には「接触もありましたし、(追い越し禁止の状況を知らせる)フラッグの見落としでペナルティを科せられたこともありました。でも、それはドライバーに全責任があるわけではなく、クルマの側に(いろんな意味で)余裕がなかったからでもあるんです」と述懐する辰己総監督は、さらにこう続ける。「左ハンドル車が大多数のレースですから、コース脇のポストからも左ハンドル車を前提にしてフラッグが振られる面があると思います。右ハンドルでは見にくい。それに右回りのコースですから(右コーナーが多いので)、左ハンドルの方が前方の状況を把握しやすいことも多いだろうと」。これが左ハンドル化の理由である。

「(日本では)どうしても右の方が作りやすい面があるんです」。そこから踏み出して左ハンドル化したところが、もはや一切のゆるみなく、なにがなんでもの覚悟で王座奪還を目指す姿勢を象徴している。さらにはパドルシフトを導入し、ドライバーがステアリングから手を離さずにギヤシフトできるようにすることで、混戦状況での接触回避の幅を広げてもいる。それを含め、「今年は『わずか数ミリのところを避けられるクルマをつくろう』ということで開発を進めてきました」(辰己総監督)。

今季のドライバー布陣は、昨年から継続の佐々木孝太、マルセル・ラッセー(ドイツ)、カルロ・ヴァンダム(オランダ)に、ニュルでのレース経験豊富なティム・シュリック(ドイツ)が加わることとなった。ブラインドコーナー相次ぐニュルを多くのマシンが走る24時間レースにおいては、特に夜間など、コース熟知度がものを言う局面も多い。誰よりもニュルをよく知るドライバーと言って過言ではないシュリックを迎えることで、より厚みを増したカルテットでSTIは戦いに臨む。

この日シェイクダウンされた今季用マシンは、テストコースでの走行こそ経ているが、サーキット走行と佐々木の搭乗は初めて。11~12時の最初の走行セッションは雨上がりの路面で約20周、調整のためのピットインを繰り返しながら、ほぼ順調にこなした様子だった。佐々木も「(開発の狙い通りに)昨年よりもフロントのダウンフォースがあることが感じられました。旋回性が向上していて、コーナー進入の飛び込みはかなりいい」など、もちろんさらなる調整の必要も感じつつ、まずは良好な第一印象を抱いたようである。

スバルファンにとっての年中行事ともなってきているニュル24時間レース。SP3Tクラス(排気量2000cc以下のターボ車)で3年ぶりの優勝を目指すSUBARU WRX STIの戦いには今年も熱い視線が注がれることだろう。

《遠藤俊幸》

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