マツダ『ロードスター』にやっと乗ることができた。98年の1.6リットルエンジン初代「NA」以来、26年を経て登場する4代目の新型である。今回試乗したのは量産試作車だ。
4代すべてにかかわってきたというマツダ商品本部プロジェクトマネージャー山口宗則さんに対して、「こんな幸せな星の下に生まれたロードスターはないのじゃないか」と私は言った。
充実した商品群と円安が重なり、マツダが歴史上もっとも勢いがあるタイミングの今。『CX-5』にはじまり直近は『デミオ』、そして『CX-3』という新世代ラインナップが勢揃いした後、大トリでやってくるロードスター。
「それは経営層ふくめたマネジメントの努力だ」と山口さんは言うが、開発期間を通じて決して大きくはないメーカーのマツダが置かれた環境で、ボディも、エンジンも、トランスミッションもすべてを一新するロードスターを発売するという夢は、見るのが難しかったのではないかと想像する。
「開発するのと発売するのでは投資コストがぜんぜん違う。そのまま発売できるかどうかは別として、開発スタッフはやりたいことをすべてやりました」(山口さん)。
はじめに試乗したのは、ベースグレードの「S」。唯一990kgと1トンを切る軽量モデル、価格は8%の税込みで約250万。6MTのみの設定だ。
「天衣無縫」という言葉が思い浮かんだ。とても自然で軽い。すべての動きがスムーズなのだ。軽いボディに軽く回るエンジン。ステアリングはパワステついていないんじゃないの? と思えるほどナチュラル。そして、室内から片手で開け閉めできるソフトトップの軽さ。
手に触れるとよくわかる、この天衣無縫さは素材の良さではない。細かく作りこんで、磨いて磨いて手に入れた吸い込まれるような音。そんな楽器のような作品なのだ。
午後に試乗したのは、「Sスペシャルパッケージ」のAT、これはアイシン製の6ATをベースにマツダがリクエストしてチューンしたもの。パドルシフトを使うと小気味良いのだが、このクルマは6MT一択だろう。
山口さんおすすめはスポーティさならば「Sスペシャルパッケージ」の6MT、静粛性・快適性で選ぶならば「Sレザーパッケージ」なのだそうだが、この日はタイムアップ。次回の試乗の楽しみにとっておくことにした。
ひとつ言いたいのは、絶対買わない人でも良い、冷やかしでいいので試乗をお薦めする。マツダが考えるクルマが手に取るようにわかり、現代のクルマのスタート地点はここだと認識できるのだ。