人・モノ・アイデアを編集することで生まれるイノベーション…NewsPicks佐々木紀彦編集長

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4月22日、博報堂にてマーケティング・イノベーター研究会が開催された
4月22日、博報堂にてマーケティング・イノベーター研究会が開催された 全 4 枚 拡大写真

4月22日、博報堂にてマーケティング・イノベーター研究会にてNews Picks取締役兼編集長 佐々木紀彦氏が登壇。「異能を編集する」とのタイトルのもと講演を行った。

編集はメディアを超えて活きる、“新しい結合”を創出する技術であり、この新しい結合というのはイノベーションの要である。そしてこの結合をささえるのは“教養”なのであるという。

佐々木氏は冒頭、「イノベーション」の定義について、次のように整理する。ヨーゼフ・シュンペータ氏の言葉を借りれば『経営資源の“新しい結合”によって起きる、従来の延長線上での改善の積み重ねとは違った、非連続的な変化。』であるという。この、新しい結合というところが編集というテーマとからむ最も大きいメッセージなのだという。

また、イノベーションの種類としては シュンペーターは次の5類型に分類する。
1. 新しい生産物または生産物の新しい品質の創出と実現
2. 新しい生産方法の導入 トヨタの改善式
3. 産業の新しい組織の創出 
4. 新しい販売市場の開拓
5. 新しい買い付け先の開拓

「イノベーションにも色んな種類があるけれどこれら5類型を実現するために、カギになるのが編集であるとか新しいものをつなげていくというところなのでは」とまとめ、イノベーションは、人・モノ・アイデアを編集することと言い換えられると述べる。

◆編集者の3つの役割と3つの素質

では編集するとはどういった行為を指すのか。

1.スカウト
2.クリエイター
3.マーケター

佐々木氏の考える編集の役割は、面白い人を探し(スカウト)つなげて(クリエイター)、そのオモシロさを人に伝えること(マーケター)の3つだという。

「面白い人を探して、この人とこの人をあわせたら面白い企画ができるのでは、と新しいアイデアや企画を生んでいく。それから面白さを人に見せて伝える力も。これら三つを全部兼ね備えるのは難しい面もあると思いますが、二つに秀でるだけでも他の方との差別化が可能になるんじゃないかなと思います」(佐々木氏)

さらに、これら三つのことの土台となる素養が人脈と教養と企画力・センスだと指摘された。

◆編集力を磨くための3つの秘訣は、経験・飲み・教養

佐々木氏は「とにかく経験を積むこと」、「とにかく飲みに行くこと」、「とにかく教養を磨くこと」が大切、と述べる。

1 とにかく経験を積むこと

「若いということもメリットだとは思うけれど、わたしが編集者をみていても色々ないい経験を積み重ねてきたベテランの編集者の方が非常にいい企画アイデア、イノベーションなどを作られていると思います。最近は、イノベーションというととにかくゼロから1を創りだす、ことさら何かを破壊するという若さばかりを強調されていますが、経験があるからこそ生まれるイノベーションはいっぱいあるんじゃないかなと思います。」(佐々木氏)

2 とにかく飲みに行く

「人と深く知り合って、かつ本音でディスカッションするというところから一番いいアイデアが生まれてくると思っています。その点、日本人の方はシャイですので飲みに行くくらいしないとなかなかすぐには仲良くなれないし話が盛り上がらない。今居酒屋にいって飲みにいくというのはブームとしては下がっていますけれど、やっぱり飲みにいって人とのネットワークを広げるのは非常に重要かと思います」(佐々木氏)

佐々木氏自身も過去1年半ぐらいは、毎日のように飲みにいったといい「それによって広がった人脈やアイデアが仕事になったケースというのは非常に多いです、適度にのみにいくのは非常に大事」と述べた。

3 とにかく教養を磨く

「抽象的なのですがとにかく教養を磨くというのは非常に大切だと思っていまして。編集ということ以上に教養を強調したいです。最近丸の内の本屋なんかでビジネス本よりも教養を磨くための本というのが非常に売れ始めているのできっとビジネスパーソンのみなさんも教養がないと最終的にイノベーションが生まれないんじゃないか、仕事でも成功しないんじゃないかということを私以上にひしひしと感じていらっしゃるのではないかと感じます。」(佐々木氏)

◆日本のスタートアップ業界には哲学が足りない

編集力を磨くための三つのことのうち、佐々木氏は教養を磨くことを強調。その背景には、アメリカでの経験がもととなっているという。

「アメリカ人の上澄みにいる人達の土台にあるのもやっぱり教養なんですよね。シリコンバレーにいるようなテクノロジーオタクみたいな人でもやはり例えば文学、歴史とかカタいものも若い頃に叩き込んでいる」。

「日本のスタートアップ業界は楽しいけれど正直なにか底が浅いような気がしていて。それはなぜかというと深い教養や哲学、ビジョンがないからなのではないかなと思っていまして。どういう風に世の中を変えたいとか、どういう風にこの業界を変えたいという深い世界観を、哲学レベルにまで考え込めていないのではないでしょうか。これは自戒も込めていますが、だからどこかふわふわっとした事業になってしまい、利益が出てもどういう風に社会の役に立っているのかというのを皆さんに感じてもらえないでいると思います。そして、何だかスタートアップは胡散臭いだとか、大企業の人たちからすると遠い世界だなという風に見えてしまうと思うんです。ですのでイノベーションを起こすとかスタートアップを考える上での教養というのが大事なのではないかと思っています。」とコメントした。

では教養とは具体的に何か。佐々木氏は続けて「日本人が日本だからこそ起こせるイノベーションというのが絶対にあると思うんです。日本ならではの文化や知識、教養を蓄えておくことが日本企業や日本人にしかできないイノベーションに繋がるのではないかと思っています」。

「どんな事業でも大事なことというのは自分の好き嫌いを大事にして、適度に主張して、好きなことに没頭し嫌いなものはやらないなど、組織上可能な範囲で自分の好きなことを見つめることが大切なのではないかと思うのです。それがゆくゆくはイノベーションにつながるのかもしれません」(佐々木氏)。

《北原 梨津子》

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