【キャデラック エスカレード 試乗】周りに溶け込まない孤高の存在…中村孝仁

試乗記 輸入車
キャデラック エスカレード
キャデラック エスカレード 全 19 枚 拡大写真

アメリカンSUVの最高峰、キャデラック『エスカレード』の正規モデルが日本に導入された。既に並行輸入では市場に出回っているが、あちらこちらと並行ものとは違うので、そのあたりを中心にレポートしよう。

【画像全19枚】

広報のG・ハンセン氏曰く、エスカレードのデザインは周囲に溶け込まないという。まさにその通り。巨大さもさることながら、シャープなエッジを持つ個性あるデザインは、周りのどれとも違う、独特なオーラを放つ。それこそが、エスカレードの持つ大きな魅力である。

エンジンは6.2リットルOHV・V8。今時オーバーヘッドバルブである。だが、古臭いと思うなかれ。こいつを仕立てあげて早、ん十年。今やこのOHVは可変気筒システムに可変バルブタイミング機構は言うに及ばず、ついには直噴化されている。何故、DOHCにしないの?という声も聞こえてきそうだが、ならば性能的に文句あるかというと、基本的に同じエンジンを載せた『コルベット』に乗れば、その答えは自ずと導き出せる。何よりバルブ系がヘッドの上に無いわけだから、当然エンジン自体の重心は下がることによる、利点もある。高回転が苦手か?全然!あっという間にトップエンドまで回る。何故かレッドゾーンは表示されていないが…。というわけで、こと性能に関していえばさしたる文句はない。

キャデラックには現在「CUE」と呼ばれるオリジナルのエンタテイメントシステムが導入されている。しかし、こいつと日本のナビゲーションの合体はズバリ言ってできない。そこで、CUEのプラットフォームの上にもう一つ、ナビゲーションのプラットフォームを乗せた形で使い分けるのだが、この点が並行輸入のものとは大きく異なっている。やはりかなりスマートで使い勝手も良い。

ナビのスペシャリストに言わせれば、まだまだな部分も多々あるようだが、とりあえずさほどお金をかけずにCUEと日本製ナビを両立させるにはこれでよいのかと思う。このほか、EU仕様を日本にアジャストさせた正規輸入のエスカレードの場合、ブレーキランプがルーフ付近まで点灯せず、完全にルーフまで点灯するアメリカ仕様のものとは異なるから、この点でも正規ものと並行ものの見分けはつく。

インテリアの仕上がり具合は、今やヨーロッパ車を凌ぐ出来と言っても過言ではない。ウッドにしても、レザーにしても、あるいは各部にアクセントとして配されているメタルにしても、すべてホンモノ。フェイクは使われていない。近年はフェイクのウッドの出来が素晴らしく良いので、環境に配慮してフェイクを使うメーカーが増えているが、キャデラックは本物志向を貫く。

勿論、こうして欲しいという部分もある。その最たる例はセカンドシートの作り。3列目へのウォークスルーを考慮してか、中央に大きな空間を作った結果、シート幅自体が狭い。それに残念なことにフラットなラゲッジ空間を作るために、シート自体は固定式でリクライニングはするものの、前後のスライド機構が付かない。このあたりの作り方はやはり日本メーカーの方が上手く、GMは見習うべきだろう。もっともこのあたりがアメリカとの文化の違いで、基本キャデラックはドライバーズカー。だからドライバーズシートが最も快適で、いわゆるおもてなしの概念が薄いのだ。グローバルカーになり切れていない部分でもある。

6.2リットルV8は決してパワフルとは感じられない。もっともその車重(2650kg)を考えれば、十分にパワフルなのかもしれないが、ガツンという力強さはなく、モリモリと湧き上がってくるタイプのパフォーマンスである。ツーリング、スポーツと二つの足の硬さをチョイスできる足回りは、今回からマグネティックライドコントロールに変わっている。そして、パワーステアリングも今回からは電動だ。ボディオンフレーム独特の少々ピッチングの大きな乗り心地だが、路面からの振動カットとキャビン全体の静粛性の高さは文句なし。これにはボーズ製のノイズキャンセレーション技術や、フロントおよびフロントサイドに採用されたアコースティックラミネートガラスの効果も大きいと感じられた。

各種安全増備ならびにコネクティビティ、そしてインフォテイメントの充実は、アメリカ車ならでは。冒頭に述べたように周囲に溶け込まない孤高のスタイリングを持つことで、セレブ受けもよく、北米では多くのエンタテイナーやスポーツ選手のパーソナルカーとして活躍する。存在感の高さは群を抜くクルマだ。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★
フットワーク ★★★★
おすすめ度 ★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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