【マツダ ロードスター チーフデザイナーに訊いた】スポーツカーの原理原則に従う…第1弾

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マツダ ロードスター 新型
マツダ ロードスター 新型 全 14 枚 拡大写真

6月に発売予定の新型『ロードスター』のデザインについて、マツダのチーフデザイナー中山雅氏に4回に渡って語っていただく。第1弾ではプロポーションに込めた思いを訊いた。

原理主義的プロポーション

「サイドビューはクラシックです」と中山チーフデザイナー。クラシック=古いではない。高い志でライトウェイトスポーツの原点に立ち返ろうという新型ロードスターだから、デザインも時代の風雪を越えて生き残った本物という意味のクラシックを目指した。そのために中山チーフがこだわったのは、スポーツカーとしての原理原則だ。

「まず大事にしたのはドライビング・ポジションで、ドライバーの正面にペダルを配置する。その結果、前輪から足先までの距離はNC(先代=3代目ロードスター)より少し長くなり、前輪と後輪のちょうど真ん中に乗員が座る。ホイールベースはNCより約20mm短くなっていますが、短くすることが目的ではなく、前から寸法を積み上げていったら、結果的に短くなりました」

「乗員の頭はホイールベースの真ん中より少し後ろに寄るので、それに合わせてキャビンの位置を定めています。キャビンの後ろには機内持ち込みサイズのバッグが2つ入るトランクを確保。オープンカーだからベルトラインの高さは開放感を阻害しないように決めました。そうやって決めた要点を結んだのが、新型ロードスターの基本プロポーションです」

「だからこのサイドビューは、FRの小さなスポーツカーの原理原則に則ったもの。正統派のクラシックな美しさが表現されていると思います」

ボディの四隅を斜めカットするモダニズム

同じようにスポーツカーの原理原則に従ったプロポーションの例として、中山チーフはランボルギーニの『ミウラ』と『カウンタック』を挙げる。スーパースポーツの歴史に輝く2大巨頭であり、なるほどサイドビューを見る限りは今でも古さを感じさせない。

「しかしカウンタックのプランビュー(真上から俯瞰したカタチ)はほぼ長方形だから、斜めから見ると思いのほかタイヤがボディから引っ込んでいて、そこに時代の古さが漂う」と中山チーフ。

「新型ロードスターは、サイドビューはクラシックにしながら、見る角度を振った瞬間に新しさを感じるようにした」

「ボディの前後のコーナーを斜めにカットして、タイヤがボディの四隅に踏ん張って見えるようにする」と共に、「タイヤの上のフェンダーも斜面にすることで、台形フォルムにした」ことが、斜めから見たときのモダンな佇まいの要点だ。「クラシックとモダンを巧く融合させるのが、今回のデザインの大きなテーマだったのです」と中山チーフは告げている。

手段としてのLEDランプ

「プロポーションを決めるとき、実はヘッドランプの要件は無視していた」と中山チーフ。「近年のヘッドランプはいろいろな機能が入ってサイズが大きくなってきているので、最初からそれを考えると、ノーズが長く、分厚くなってしまう。しかし今回はフロント・オーバーハングを短く、低くしたい。そこにヘッドランプを収める手段として、コンパクトなLEDヘッドランプを採用しました」

ボディ四隅を斜めカットするなかでも、リヤコーナーの絞り込みはとくに大胆だ。それによって駆動輪である後輪の踏ん張り感を強調しているわけだが、問題はリヤコンビランプ。リヤエンドに円形のストップランプを置き、そこからリヤフェンダーに向けてテール/ターンランプを延ばしている。

「ストップランプはボディの最外側から400mm以内に置かなくてはいけない国際法規があるのですが、もう2mmでも内に行くとそれを満たせない。そのギリギリまでリヤコーナーを絞り込みました。それだけでは夜間にクルマの幅を認識できなくなるので、テールランプは外側に延ばしています」

「ヘッドランプもリヤコンビランプも、最小限のサイズで要件を満たすためにLEDにした。お洒落のためのLEDではないのでシンプルなデザインにしましたが、結果的にモダンに見えるランプになったと思います」

《千葉匠》

千葉匠

千葉匠|デザインジャーナリスト デザインの視点でクルマを斬るジャーナリスト。1954年生まれ。千葉大学工業意匠学科卒業。商用車のデザイナー、カーデザイン専門誌の編集次長を経て88年末よりフリー。「千葉匠」はペンネームで、本名は有元正存(ありもと・まさつぐ)。日本自動車ジャーナリスト協会=AJAJ会員。日本ファッション協会主催のオートカラーアウォードでは11年前から審査委員長を務めている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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