余計なことは何も考えずに頭の中を空っぽにして、ありのままの自分に戻ってドライブすれば、このクルマの本当の気持ち良さが見えてくるはず。だから、私は新型ロードスターを「アナ雪スポーツ」と呼んでいる。
サスペンションは近年まれに見るほどに良く動く。限界域でのコーナーリング画像を見ると、バンプしきったコーナー外輪に対して内輪サスペンションが大きく伸びきっていることが見てとれる。
コーナーリングでよくロールするというが、ロールとは外輪側サスペンションが縮んでいる(バンプ)ものと想像しがち。
しかし、実際には外輪がバンプしているだけでなく、内輪側サスペンションが伸びている相互作用でロールを感じているのだ。重要なのは、この伸びる側(リバンプ)へのサスペンションストロークが十分に確保されていること。接地が確保できるからだ。
サスペンションを硬くしてロールを抑えれば、応答感と荷重移動が速くなりスポーティーなハンドリングになる。しかし、荷重移動量は小さく路面の凸凹に過敏になり、奥の深いハンドリングではなくなる。
ロードスターは、日本車のほとんどが追い求めているドイツ流の締まったサスペンションではない。しっかりロールさせて、荷重移動を遅くし荷重移動量を大きくしているのだ。これによって、速度が低く限界域の40%レベルで走っていても、コントロールしている実感と奥の深いスポーツ性がある。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア・居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
松田秀士|レーシングドライバー/モータージャーナリスト/僧侶
成仏する直前まで元気でクルマを運転できる自分でいたい。「お浄土までぶっ飛ばせ!」をモットーに、スローエイジングという独自の健康法を実践しスーパーGT最年長55歳の現役レーサー。これまでにINDY500に4度出場し、ルマンを含む世界4大24時間レース全てに出場経験を持つ。メカニズムにも強く、レースカーのセットアップや一般車の解析などを得意とする。専門誌等への寄稿文は分かりやすさと臨場感を伝えることを心がけている。