無視できない「地方のニーズ」…ドコモとau“ガラホ”バトルの舞台裏

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ドコモが夏モデルとした発表したAndroid搭載フィチャーフォン(ガラケー)
ドコモが夏モデルとした発表したAndroid搭載フィチャーフォン(ガラケー) 全 5 枚 拡大写真

 今週は13日にNTTドコモが、14日にはKDDI(au)が夏モデルの発表会を行った。両社とも多数のスマートフォンやタブレットを発表したが、地味ながらも話題になっているのが通称“ガラホ”こと、Android OSを搭載したフィーチャーフォン(ガラケー)の新ラインアップである。

 “ガラケーへの回帰”とまでは言えないものの、スマホではなく従来型のフィーチャーフォンを要望する声は少なくない。こうしたニーズに対応すべく、両社とも新型フィーチャーフォンの新製品を投入してきた。

■Android OS搭載は、もはや当然の流れ

 KDDIはシャープ製の「AQUOS K SHF32」、NTTドコモは同じくシャープ製の「AQUOSケータイ SH-06G」と富士通製「ARROWSケータイ F-05G」という、Android OSを備えながらも、形状は従来のガラケータイプの端末をそれぞれ発表した。

 KDDIが2015年春モデルとして、Android OSを備えながらも形状やインターフェイス(画面上の操作性)はガラケーと変わらない端末として、シャープ製「AQUOS K SHF31」を発表した際に、大きな話題となったことは記憶に新しい。スマホ用のOS(基本ソフト)を備えながら、形状も操作性も従来のガラケーを踏襲しているというのが目新しく、賛否いろいろな声が挙がっていた。

 実際のところ、従来のガラケーに比べ、スマホのほうがより多くの情報に触れることができ、またコンテンツ(アプリやWebサービスなど)もその多くはスマホ向けに移行しつつある。手のひらでインターネットを有効に活用しようとするならば、スマートフォンを利用したほうが断然便利に違いない。通信キャリアにとっても、より多くのユーザーにスマホへシフトしてもらいたいというのが本音のはずだ。

 とはいえ、ガラケーにこだわるユーザーも決して少なくない。大都市圏では大半のユーザーがスマホにシフトしているが、都心部から離れ、地方に行くほどスマホ普及率は低くなる。さまざまな理由が考えられるが、やはり日常の交通手段に自家用車を利用している地域ほど、スマホ普及率は低下。自宅や勤務先にはブロードバンドが整っている現在、移動中にインターネットを利用するシチュエーションが少ないためだ。

 しかしながら、音声通話は利用する。スマホユーザーの多くの方は気が付いていると思うが、スマホを通話に利用しようとすると、ガラケーに比べれば操作性が良いとはいえない。タッチスクリーンのロックを解除し、通話アプリを起動させ、アドレス帳から通話先を呼び出すなり、電話番号入力するなりして通話発信するわけだが、やはりここは数字キーやアドレス帳ボタン、履歴ボタンが備えられたガラケーのほうがはるかに使いやすい。バッテリーの持ちを考えても、使い方が「通話」主体であるなら、バッテリーが長時間持つガラケーのほうが断然有利だ。

 こうした事情もあって、地方ではガラケーニーズは依然として高い。

 一方で、モバイルネットワークは常に進化を続けている。インフラは3GからLTE(4G)が主流となっているが、そうなればLTEネットワークでも利用可能なガラケーをラインアップさせる必要がある。当然、端末を製造するメーカーとしては、従来のガラケーをLTE対応させるためのハードウェアやOSを新たに設計、量産することは大きな負担になる。

 その解決策として、オープンソースの基本ソフトであるAndroid OSを用い、ハードウェア内部のチップ等もスマートフォンと共用できれば、製造コストは抑えられるはずだ。こうして、Android OSを備えたガラケーがラインアップされることになるのである。

 KDDIによれば、春モデルとしてラインアップした「AQUOS K SHF31」は、40~50代の男性・女性が多く購入しているということだったが、スマホへ移行できない、あるいは移行する必要がないというユーザー層にそれなりに受け入れられているのであろう。

 あるいはスマホを使いこなしてきたユーザー層においても、より大画面のディスプレイでコンテンツやサービスを利用したいとなれば、通信利用はタブレットを主体にし、それと組み合わせて音声通話用のガラケーを持つというニーズも出てくるはずだ。タブレットの電池が切れてしまっても、電池の持ちが良いガラケーで連絡はできる。

■地道に進化を遂げたガラホ

 KDDIが春モデルとしてガラホを発表し、大きな注目を集めたが、夏モデルでは地道な進化を果たしているようだ。まず、VoLTEに対応したこと。VoLTE(Voice over LTE)とは、データ通信専用ネットワークであるLTE網上で音声通話を実現させる技術であるが、通話相手先のスマホ等も同様にVoLTEに対応していれば、従来の通話よりも高音質で会話が可能になる。音声の遅延もより少ない。いずれ、3Gネットワークを廃止し、ネットワークが完全にLTE以上のものへ移行する際には、サービスを利用するすべてのユーザーの端末がVoLTEに対応している必要がある。

 ネットワークはおよそ10年単位でより高度なネットワークが登場し、その後約10年程度は旧式のネットワークと併用される期間を経て、ユーザーが利用する端末が新ネットワークに対応したものに置き換わった頃を目安に、旧ネットワークを廃止してきた。

 現在、3Gネットワークは2001年秋にNTTドコモのFOMA(W-CDMA方式)としてスタートしたものだが(KDDIはCDMA2000方式)、こうした過去のネットワーク進化のタイミングを振り返れば、2021年頃には3Gネットワークを廃止し、その周波数帯域をさらに高度な新通信方式に置き換えることになるのだろう。

 こうした近い将来のネットワーク移行に向け、ガラケーはAndroid OSとスマホに準じるチップセットを搭載することで、今後のサービス利用に耐えられるものにしていこうということであろう。

 もう一つ、ユーザーのニーズが変化してきたと感じたことが、“ケータイEメール”の終焉が近づいてきたということだ。いわゆるiモードメール等、通信キャリアのドメインが付いたEメールサービスのニーズが減ってきたということだ。わが国のケータイメール文化は、iモード登場時の1999年以降、一気に根付いていった。

 世界では電話番号をアドレス代わりにメッセージの送受信ができるSMSサービスが一般的であったが、わが国では通信キャリアを超えてSMS(ショートメール等)を送受信することが仕様上不可能だった(2011年以降はキャリアを超えてSMS送受信が可能になっている)。

 別の通信キャリアで契約しているユーザーとメッセージの送受信をする手段として、ケータイEメールを使わざるを得ず、このため誰もがケータイEメールのアドレスを取得し、ケータイ同士でメッセージをやり取りする手段として定着していった。

 しかしケータイEメールの難点は、MNPを利用して他の通信キャリアに乗り換えた場合、メールアドレスは使えなくなってしまうことだ。当初はこれがMNP利用の大きな障壁にもなっていた。しかし、スマホが主流となった現在、文字メッセージでのコミュニケーション手段はケータイEメールから、LINEなどのメッセンジャーサービスに移行している。

 LINEであれば、MNPを利用して他の通信キャリアに移行しても、使い勝手も変わらず継続してメッセージのやり取りができる。一方で、ガラケーを使っているユーザーとのコミュニケーションが取りづらいという不都合も出てきていた。ガラケー用のLINEも提供されているものの、必ずしも使い勝手がいいものではなく、元々使い慣れたケータイEメールを手放せないというユーザーもまだ残っていたはずだ。

 Android OSを搭載したガラホでは、GooglePlayへのアクセスこそできないものの、専用のLINEアプリは用意されている。ガラケー用LINEに比べ、その使い勝手は格段と向上している。タッチパネルは備えていないが、ガラケーユーザーにとっては、ケータイEメールを使う感覚で、今後はLINEを活用できる。このメリットは大きいはずだ。

 今回、KDDIに加え、ついにNTTドコモからもこのAndroid OSベースのフィーチャーフォンが登場した。地方こそ、こうした端末を求めるニーズは高く、同時にNTTドコモのシェアも高いこともあり、そこそこの販売が見込めるものと考える。またMVNOでのラインアップでも、こうした端末の登場が期待されているところであろう。

【木暮祐一のモバイルウォッチ】第75回 キーワードは「地方」!? ドコモとauが新発表した“ガラホ”の行方

《木暮祐一@RBB TODAY》

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