【人とくるまのテクノロジー15】水平分業で自力高める欧州サプライヤー、日本勢の立て直しは急務

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ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹氏が「グローバル自動車産業の現状と将来課題―自動車産業の競争優位の変化と日系自動車メーカーの戦略と課題」と題し講演を行った
ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹氏が「グローバル自動車産業の現状と将来課題―自動車産業の競争優位の変化と日系自動車メーカーの戦略と課題」と題し講演を行った 全 7 枚 拡大写真

5月20日パシフィコ横浜にて人とくるまのテクノロジー展2015が開催された。
同展内では「2050年の社会情勢を見通した交通システムと自動車用動力の方向性―将来の自動車社会にどのように備えたらよいか―」と題した春季大会フォーラムが開催された。

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このフォーラムではナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹氏が「グローバル自動車産業の現状と将来課題―自動車産業の競争優位の変化と日系自動車メーカーの戦略と課題」と題し講演を行った。

中西氏は、日本が危惧すべき「欧州自動車戦略」および「日本国内の自動車産業の深層競争力と直面する課題」を指摘した。

◆水平分業で実力を大幅に強化する欧州サプライヤー

まず欧州自動車戦略について。そもそも欧州の自動車戦略とは何か。中西氏は「簡単にいえば競争領域と非競争領域をわけてしまっていること」と述べ、この非競争領域においてはオープン化をしたうえで自分たちが持続できるビジネスモデルを構築していることだと述べる。具体的には以下の3つのポイントにまとめた。

1. オープン化、標準化
2. コンセンサス・スタンダードの形成と囲い込み(燃費・安全)
3. 水平分業(メガサプライヤーの形成)

欧州の戦略が日本企業にどういった影響を及ぼすかについては「欧州メーカーによる標準化、モジュール設計は、日本のすり合わせの競争力を封じ込め始めるリスクがある。欧州のこの戦略は10、15年前から考えて進行していたことである。したがって日本は、2020年くらいまではある程度欧州の敷いたレールに迎合せざるをえないことは間違いない。しかし、迎合しつつも、どうやって日本のオリジナルな競争力を見出していくのかが今後の重要なポイントになる」とコメントした。

また欧州戦略3点目の水平分業について特に言及し「欧州の水平分業は間違いなくドイツの、非常につよいサプライヤーを生み出しており、ボッシュ・コンチネンタルなどの統合的なシステム開発力は間違いなく自動車メーカーを上回るレベルになっている。いまの日本の自動車企業にそういったレベルのことができる企業はほぼいない。それくらい、現在グローバルなシステムサプライヤーの持っている力は強くなっている」との危惧を示した。

◆日本勢の深刻な課題は「Tier1競争力の低下」

また国内自動車産業の深層競争力と直面する課題については「国内Tier1の国際競争力の低下」を強調する。

「私がいま一番深刻だなとおもっているのが、国内のTier1と呼ばれるサプライヤーの競争力です。世界的なレベルからみて劣後し始めている。今日本のなかで、グローバル環境で勝てるTier1というのは数えるくらいしかいなくて、ここの部分が劣後すると連鎖的に競争力が落ちていく。いま特にオープン化や標準化、エレクトロニクス化が進み、ITが関わってくる中でTier1の競争力を抜本的に高めることが要となるのではないか」(中西氏)。欧州の自動車メーカーやサプライヤーに対抗するためにも、国内大手サプライヤーの競争力強化への取り組みが急務との認識を示した。

《北原 梨津子》

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