【マツダ 開発者 徹底インタビュー】デミオ 編…ユーザーの裾野が広いからこそ、できることがある

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マツダ デミオを担当した、土井歩 開発主査(左)と柳澤亮チーフデザイナー(右)
マツダ デミオを担当した、土井歩 開発主査(左)と柳澤亮チーフデザイナー(右) 全 22 枚 拡大写真

「SKYACTIV技術」とデザインテーマ「魂動」に基くマツダの新世代商品群。2012年の『CX-5』から、『アテンザ』『アクセラ』『デミオ』『CX-3』、そして先日発表となった『ロードスター』で一つの節目を迎えたことになる。

昨年秋に全面刷新をはかったBセグコンパクトカー、デミオの個性と今後の方向性を土井歩 開発主査と柳澤亮チーフデザイナーに聞いた。

◆消極的な「これでいい」ではなく、積極的な「これがいい」

----:ロードスター発表会やファンイベント「Be a driver. Celebration」では、新世代商品の6台が並びましたが、それを見た印象はいかがでしたか?

土井歩 主査(以下敬称略):お客様に「この6台からどれを選びますか?」と尋ねると、ライフスタイルや家族構成に合わせて「これがいい」と選んでもらえるようなラインナップになってきているんじゃないかと感じました。

マツダがターゲットとするユーザー像は、客層としては幅広いけれども、マツダを好きになってくれるという共通項がある。そうした人たちの選択肢が充実してきたのはいいことですね。

柳澤亮 チーフデザイナー(以下敬称略):それが狙いですからね。まずマツダというブランドを好きになってほしい。そしてラインナップの中から自分に合ったものを選ぶようになってほしい。その環境ができつつあるという、手ごたえを感じているところです。

◆デミオのユーザー像は世界共通

----:デミオは日本ではハッチバックのみですが、新興国ではセダンもあり、ステータスを備える必要もありますよね。地域ごとに異なったユーザー像を想定しているのでしょうか?

土井:大雑把に言えば日本とヨーロッパ、新興国で3分の1ずつのボリュームを見込んでいます。ただ、海外でも日本のファンとよく似ていて、女性も「可愛い」というより「かっこいい」方が多い。だから地域で分けて考えることなく、グローバルで同じ考えを受け入れてもらえるという考えで開発を進めています。

柳澤:アジアでも働く女性はいきいきとしてますし、スマートに自立しています。そういう方にマツダを選んでほしいという思いは日本と同じですね。

----:セダンとハッチバックは同時にデザイン開発を進めたのですか?

柳澤:最初は5ドアハッチバックとしてベストなスタイリングを目指していました。グローバルで見ると、やはりハッチバック需要のほうが優先度は高いんです。とはいえセダンを疎かにできないということで、あるタイミングからはセダンも意識しています。途中からリアデッキを追加したわけですが、意外なほど上手くいきました。

----:後付けで綺麗にまとめるのは大変だと思うのですが、上手くいった理由は?

柳澤:Aピラーを後ろに引いてノーズをしっかり見せるフロントまわりの造形が、結果的にセダンでも前後のバランスが良好だった。これならセダンも綺麗に作れるじゃないか、と。おかげで『アクセラ』のセダンをそのまま凝縮したみたいだと言ってもらえる、後ろ姿も美しいセダンにできました。

◆マツダとしての感性品質を追求

----:デミオ特有の「マツダらしさ」の表現というものはあるんでしょうか?

土井:マツダとしての運転感覚を追求しています。競合他車を乗り比べて検証はしますが、それをベンチマークにすることはしませんでした。むしろアクセラと比較して、方向性が合っているかどうかを確認しました。開発時はアクセラがマツダでいちばん進化した車種だったんです。

----:購入時にコンパクトな輸入車と比較検討されることが多くなっているようですね。

土井:光栄なことに、輸入車と同じ土俵で検討することが増えていると聞きます。これはデザインと走りの品質感が興味の対象になっていることが大きいと思っています。ただ、やらなきゃいけないこともまだまだいっぱいあると感じますね。

----:「やらなきゃいけないこと」とは、たとえばどんなことでしょう?

土井:細かい部分への気配りの積み上げが、まだやりきれていないのではないかという思いがあります。歴史のあるプレミアムブランドに並ぶには、もっと努力を積み重ねないといけないなと感じているところです。品質感というのは(見た目や触り心地といった)静的なものだけではなくて、ハンドリングなどの動的な要素も含みます。こうした感性に訴える部分、感性品質をもっと進化させられるはずだと思います。

◆ディーゼルの魅力をもっと知ってほしい

----:では、今後の進化の可能性について教えてください。マツダコネクトのアップデートがスタートしましたね。

土井:生活の中で近場を走ることが多いですが、長距離もこなせますからナビもきっちり進化させる必要があると考えています。ハードウェアはそのままでもソフトウェアをアップデートできるというのがマツダコネクトのコンセプトのひとつですので、デミオにも採用していてよかったと思いました。

----:アテンザとCX-5のアップデートで追加された安全装備はどうでしょう?

土井:安全性の重要度は、ボディサイズの大小に関係ありません。コストという問題はありますけれど、いずれ採用するタイミングが訪れることになるでしょう。

----:CX-3ではナチュラルサウンドスムーザーが採用されています。これはデミオのディーゼルにも採用されるんでしょうか?

土井:安全装備と異なって、どうしても必要な装備ではありません。ディーゼル特有の感覚に違和感を持つ人もいるので、より静かにして品質感をアップさせるための道具としては使えますね。また昔のディーゼル車のイメージだけで敬遠している人もいます。でもトルクが大きくて走りやすかったりもしますから、ナチュラルサウンドスムーザーでネガティブな思い込みを払拭して、ディーゼルのよさを知ってもらえればと思います。

◆マツダらしくありながら世界観を拡大

----:さきほど感性品質という言葉がありましたが、4月に発売した特別仕様車ではインテリアの雰囲気が個性的ですね。

土井:新型車を市場に送り出すのがゴールではなくて、モデルライフの中でさまざまな世界観をいろいろな人に提供して行きたい。特別仕様車はいままでも設定していましたが、世界観を構築するところまではなかなかできていませんでした。

----:その世界観というのは、マツダらしさにフレーバーを追加するようなものですか?

柳澤:マツダ全体としては「SKYACTIV TECHNOLOGY」、「魂動デザイン」という2本柱でブランドの一貫性を保っています。その上でデミオのスペシャルな戦略として取り組んでいるのが、我々が「スタイルコレクション」と呼んでいるインテリアスタイルの提案です。

服や靴、アクセサリーなどを選ぶとき、みなさん「自分なりのスタイル」というのを持っていますよね。クルマを購入するときも、そんなスタイルに従って選んでもらえたら、ということなんです。

土井:マツダといえばソウルレッドですが、それだけではありません。内外装をコーディネートして特別感を出すことで、いままでマツダと縁遠かった人にも情報が届き、気に入ってくれると嬉しいですね。

----:ということは、今後もこうしたバリエーション展開は続けるということですか?

柳澤:もっとサイズの大きい車種では、マツダの世界観に近い領域で展開しています。けれどもデミオの場合はユーザーも多く裾野が広いですから、世界観やコーディネートのパターンもアテンザよりかなり幅広く持たせることが可能です。限定モデルの設定などで、さらに世界観を広げていきたいですね。

《古庄 速人》

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