プラモデルに宿る「ものづくり」の精神…タミヤがスケールモデル開発の裏話を公開

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トヨダAA型1/24スケールモデル
トヨダAA型1/24スケールモデル 全 22 枚 拡大写真

タミヤでは1/24スポーツカーシリーズの新製品として、トヨタ初の量産乗用車「トヨダAA型」を6月27日に発売する。それに先立って6月9日、東京のプラモデルファクトリー新橋店でメディアミーティングを開催した。

ミーティングで紹介されたのは、AA型をはじめとしたカーモデル全般における製品開発の手法や変遷など。かつてと現在の開発プロセスの違いや、逆に変わらないことなど興味深い内容だった。

もっとも大きなトピックは、デジタルツールの導入による「道具の変化」だ。商品開発のために実車を徹底的に計測、撮影をすることは昔から変わらないが、近年では3Dスキャナーを使うことも増えてきているという。

3Dスキャナーでは折り畳まれたオープンカーの幌や人物の服など、柔らかい素材のしわやたるみといった部分までも正確にデータ化できるのだとか。

取材後は図面を製作する段階へ進むが、かつての手描き図面はCADに置き換えられている。 手描きしていたころは「乗用車のボディ部分の図面を描き上げるのに3週間ぐらいかかりました」とタミヤ企画開発部二課の海野剛弘課長は語る。

また手描き図面の時代は、図面完成後に製品の倍の寸法で木型を作成し、形状を煮詰めることもあったとか。大きなサイズで木型を作るのは、金型の精度を高めるためで、それから金型製作のための木型を作るプロセスへと移行していたという。

現在でもCAD画面を見るだけでは完結しない。商品の実寸の立体モデルを肉眼で確認して、最終的な形状が決定されている。従来はケミカルウッドを切削していたが、近年は3Dプリンターを活用するケースが増えてきているとのことだ。

また金型もNC切削されるが、細部の調整や仕上げは昔と変わらず人の手でおこなわれている。営業部営業課スケールモデル担当の山本曉主任は「デジタルだからといって、自動的にすべてができあがるというわけではありません。人間のセンスやタッチがないと“いいもの”にはなっていきません」と語る。

ところでタミヤのプラモデルといえば、独特のデフォルメも有名だ。プラモデルを実寸に拡大しても、実車と完全に一致する立体にはならない。人間よりも大きな実物と机上で全体像を眺められるプラモデルでは、同じ形状でも見え方や印象は異なる。サイズに合わせてアレンジを加えることは当然だろう。

実際には寸法や基本的な部分の数値を定めた後に、ボディの曲面にメリハリを持たせるなどといった「らしく見える」ためのアレンジを常におこなっているという。どの程度デフォルメをするかは、担当者に委ねられているとのこと。

近年は自社で計測したデータに加え、自動車メーカーから形状データを提供されることも少なくない。しかし「正確なデータがあるために、デフォルメしにくくなってしまうということもあります」と海野課長。

「以前は、自分の目で見た印象に基づいた表現をすることができました。しかし完全なデータを与えられると、それに手を加えていいのかどうかという葛藤が生まれる。だから試行錯誤の繰り返しですね」とのことだ。

それでも実車を取材する際は設計者が付き添い、肉眼で見て得たイメージを重視するのは現在でも昔とまったく変わっていないという。重要なのは正確な数値ではなく、いかに実車の雰囲気を小さなモデルで表現するかということなのだ。

タミヤでは単純に形や大きさといった、モノとしての存在だけで商品化の対象を決めているわけではない。「模型が存在するということは、その背景には実物が存在する。そして実物にも背景があります。歴史だとか実績だとか、そういった部分も含めて関心を持ちます」と山本主任。

「背景を調べ、歴史的な価値で判断して商品化を検討します」と海野課長。山本主任も「(プラモデルは)趣味のモノですから、理論ではなく感性で考えています」と語る。作るものがなんであれ、また時代によって使う道具が変われども、「人間が持つ感覚」の価値は不変なのだということを再認識したミーティングだった。

《古庄 速人》

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