久しぶりにジャガー『XF』に乗った。XFのデビューは2009年だから今年で発表から6年目になり、すでに新型も発表されているが、その新型XFやひと回り小さなニューモデル、『XE』にも受け継がれたボディラインは、今日のジャガーサルーンの原型というべきもので、新鮮さこそないもののなかなかカッコいい。
ちなみに、適度に豪華で適度にスポーティな室内は充分な居住空間を備えているし、トランクルームも奥行きが深くて使えそうだ。
試乗したのはXFのなかで最も後発のモデルといえる「R-SPORT(Rスポーツ)」だが、スポーツという言葉のイメージと違って、シリーズで最小の2リットル4気筒ターボエンジンを搭載、8段ATを介して後輪を駆動する。そう、ダウンサイジングユニットを搭載した、エコなスポーツサルーンなのである。
走り出すと、240psと340Nmを発生するこの2リットル直4ターボが、車重1770kgのボディに充分な活力を与えていることが即座に分かる。軽く踏めばそれなりに、深く踏み込めばなかなかの勢いで、全長5m弱のボディを加速させるのだ。ちなみに0-100km/h加速は7.9秒というから、不足のないダッシュ力だ。
8段ATは繋がりのいい加速を実現している他、室内の静かさや燃費にも効果を発揮している。メーター100km/hのエンジン回転数はトップ8速で1400rpmという低さだから、エンジン音がほとんど耳につかないし、クルージング燃費も良好だろうと想像できる。
では、シャシーはどうか。試乗車は標準の18インチに対して、オプションの19インチタイヤを履いていたが、乗り心地はバネ下の重さを特に意識させない、適度にソフトなものだった。一方、都内から横浜に至る首都高で経験したコーナリングも、取り分けスポーティというわけではないが、ボディサイズのわりに軽快感があるのが好ましい。
身内を含んでニューモデルが続々と登場するなかで、XF R-SPORTを積極的に選ぶ理由をどこに見出すかは難しいところだが、Eセグメントサルーンを探しているのなら、モデル末期らしい完成度の高さも含めて、考慮に値するクルマだろうと思った。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★
吉田匠│モータージャーナリスト
1971年、青山学院大学卒業と同時に自動車専門誌『CAR GRAPHIC』の編集記者としてニ玄社に入社。1985年、同社を円満退社、フリーランスのモータージャーナリストとして独立。1989年以来、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。『僕の恋人がカニ目になってから』(ニ玄社)、『男は黙ってスポーツカー』『ポルシェ911全仕事』『男は笑ってスポーツセダン』(双葉社)など、著書多数。