【未来対談 4】3年分のバックオーダーが量産&低価格技術の開発を押してくれる…田中義和

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トヨタ MIRAI の燃料電池スタック
トヨタ MIRAI の燃料電池スタック 全 14 枚 拡大写真

「未来の自動車」に対する一つの解として、トヨタが世に送り出した燃料電池車(FCV)『MIRAI』。その開発主査を囲み、「MIRAIのある生活」、「MIRAIに求めるもの」について本音をぶつけあう対談の第四弾。

【画像全14枚】

トヨタ自動車から製品企画本部の田中義和主査、「これ一台で勝負できるクルマ」といち早くMIRAIを購入した自動車評論家の松下宏氏、そして行司役とし てレスポンスの三浦和也が参加。第一弾では、FCVやPHVを所有することで見えてきたメリットと課題について、第二弾ではクルマの枠を飛び出しエネルギー資源の観点から見た水素の可能性について、第四弾ではトヨタが公表したFCV関連特許の無償提供について議論を交わした。

最終回となる今回は、あらためて「なぜ、MIRAIの技術に価値があるのか」、量産技術の観点から語る。

◆「数を作れる」というMIRAIの技術

三浦: MIRAIは、欲しい人が殺到していて、今、頼むと納車まで3年以上ですって?

田中:今年の3月末の段階で、受け渡しが2018年になっていましたので…。今からだと、丸3年は待っていただくことなります。申し訳ございません。

松下:私が購入した東京トヨペットに聞いたら、「もう5年分くらい集まっている」そうです。

三浦:2020年に間に合わないかも(笑)。

田中:MIRAIの技術は、数を作ることができることが重要なのです。1台とか10台なら、今までも作れました。これが何百台、何千台と作るのは、しかも高精度で作るのは相当に難しい。そこが技術ですね。設計技術もありますが、生産技術の難しさを乗り越えるのは大変です。たとえば電解質膜は、何十ミクロンという薄いものを引っ張りながら、ペタっと両面に触媒を貼り付けるんですね。ちょっとしたことで破れてしまいますし。

三浦:FCVも実験車両ならば世界にごまんと走っている。でもMIRAIは量産車である点において次元が違うと。これからは納車待ちを解消するために、量産の技術をさらに磨いていくわけですね。

田中:磨くと同時に、変えてゆきます。アップデートなのか、全変更なのかは、分かりませんけど。今のままで進化しないのはダメですね。絶対に。

松下:現在の年間の生産台数は1500台ですか?

田中:来年からは、たぶん年間2000台以上作れるように、さらにその翌年は3000台以上作れるようにと。

三浦:FCVをもっと安く、買いやすくという期待があります。量産技術と安くする技術はニアリー・イコールと考えてよろしいでしょうか。

田中:はい。T型フォードと同じで大量につくることができればFCVは安価になります。

白金をたくさん使うなど言われていますが、絶対数はそんなにすごくはありません。やはり機械加工とか、これまで使ったことのない材料を使うのが、コストの大半を占めます。そういうことで、よりアフォーダブルにするために、もっと数を増やす必要があります。かつ、電解質膜のような特殊材料も、もっとたくさん使うようになれば、コストも下がってきます。まだまだ下げる要素はあります。

松下:水素タンクもそうですよね?

田中:そうです。水素タンクもこれまでクルマに使われなかった素材と加工技術ゆえにカイゼンの余地が大きい。

◆量産技術開発を後押しするもの

三浦:つまりこうですか? 松下さんをはじめ、MIRAIを注文した人、納車を終えた人、納車待ちの人々が量産の技術開発を促している。必要で生まれた量産の技術が将来のFCVを安価にすると。

松下:私たちは人柱ですが(笑)、大きな補助金もいただけますし、それよりも最初に乗って楽しめるという、インセンティブの方が大きいですよ。

田中:本当におっしゃる通り、最初に飛び込んで、まさに身銭を切って、買っていただいている個人の方も大変多くて驚いています。

三浦:量産技術の開発はもちろん発売前からやっていたと思いますが、売れるかどうか不安に思いながらの開発と、3年分のバックオーダーを抱えながらの量産技術の開発では、気合の入り方が違いますよね? 

田中:まったく違います! かけ声から違いますよ。「お客様、待たせているんだよ!」と言って、みんな頑張れます。

松下:私のように、いち早く納車してもらった者はフィードバックで貢献できますし、オーダー中で長い納車待ちでそわそわしている方々も大いに開発に貢献していると(笑)。

田中:待っていただいている方には申し訳ないと思うと同時に、とてもありがたいですね。早く量産技術を育てて応えたいと思います。

三浦:700万円だけど、レクサスの高級車として出しませんでしたよね。

田中:補助金をたくさんつけていただいたので「どうも400-500万円くらいで買えそうだ」「もしかしたら買えるかも」という気持ちになっていただけました。だから試乗会でもすごい人気です。先だって、3月にトヨタは個人投資家さん向けのイベントを開いたんですけれど、そこにクルマが7車種くらいありましたが、MIRAIだけに長蛇の列ができていたそうです。それだけ、「乗ってみて、よかったら買いたい」というお客様が多かったのですね。価格的に、ストライクど真ん中ではありませんが、ギリギリ高めには入ったかなと…。

松下:私も最初は「500万円だったらすぐ買うから」と言っていたクチです。発表価格は高めかなと思いましたが、飛びついてみた結果、補助金があって、総額800万円が、およそ500万円になりました。

三浦:減ってゆく補助金と客の期待値をクリアするために、発売後もMIRAIの開発はまだまだ続きますね。

本日はありがとうございました。

《鈴木ケンイチ》

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