【ゼンリン 地図づくり現場レポート】ドアtoドアナビをこだわり抜いた結果の徹底した現場主義

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現地調査員がチェックしたポイントをハンドデジタイザーで一つ一つコンピュータに入力していく
現地調査員がチェックしたポイントをハンドデジタイザーで一つ一つコンピュータに入力していく 全 9 枚 拡大写真

リアルな3Dマップが好評を博しているカーナビアプリといえば、ゼンリンデータコムが提供している『ゼンリンいつもNAVI[ドライブ]』だ。2014年秋にリニューアルを行い、表示能力からインターフェイスに至るまで大幅に刷新され、テレビCMでも露出が増えて話題になっている。

いつもNAVI[ドライブ]に限らず、カーナビアプリの根幹を成しているのは地図データ。しかし、当然ながらカーナビの地図データは単なる紙地図をスキャンしたモノではなく、道路の属性やネットワーク情報を含めた膨大なレイヤー(層)からなるデジタルデータだ。しかしながら、そのデジタル地図がどのような工程で作られているかは広く知られていない。今回、福岡県北九州市にあるゼンリン本社のテクノセンターを訪問取材、地図データ製作の現場を取材した。

◆現場主義を貫き、真のドアtoドアナビゲーション目指す

ゼンリンといえば古くは住宅地図帳を発行する会社として、近年はカーナビゲーションの地図データを供給する会社として知られている。住宅地図帳は現在も同社事業の柱のひとつとなっており、その基礎となっているのは現地を実際に訪れて調査する徹底した“現場主義”の考え方だ。全国に配置された調査員が現地を訪れて表札や看板から情報を収集し、一軒ごとに精査された情報が積み上げられていく。これはまさにゼンリンならではの独自の手法と言っていい。

調査員から送られてくる膨大な情報は、北九州市にあるテクノセンターに集約され、その情報をオペレータが専用マシンで逐一入力/修正を加えていく。対象地区の地図をボードに貼り、マウスのような形状をした入力機器「デジタイザー」を使って一つひとつ丁寧に対応していくのだ。入力を終えた個所はマーカーペンでチェックし、さらに別のオペレータが入力漏れがないかを再確認。きわめてアナログ的だが、ゼンリンによれば長年の経験の結果、この手法がもっとも効率的との判断に至ったという。

こうして出来上がった住宅地図のデータベースは、『ゼンリンいつもNAVI[ドライブ]』を含めたカーナビゲーション向けとしても転用される。ここで重要なのはカーナビゲーション向けとして様々な情報が加えられていることだ。その代表的なものが各施設の出入口情報である。ゼンリン製カーナビ向けアプリの大きな機能の一つに各施設の出入口まで案内する「ドアtoドア」があるが、この実現はこの情報の採用によるところが大きい。

カーナビゲーションを使っていると目的地にたどり着かないのに「目的地付近です。案内を終了します」といったガイドを行うことがあるが、それは目的地の情報が出入口と紐付いていないため。この情報がないと、対象施設の最も近い道路で案内を終了してしまうことになる。極端な例として、目的地に最も近い道路が川向こうになっていた場合、案内は対岸で終了してしまう可能性さえあるわけだ。

この出入口情報が整備されたデータを使えば、適切な案内を最後まで行うことができる。これがゼンリンが進める「ドア to ドア」の基本的な考え方だ。

◆自動車が入れない細街路も最適に案内

ただ、日本の道路事情は複雑で一筋縄では行かないことが多い。人は通れても自動車が入れない幅員の道路に面して家が建っていることも現実に数多く存在するのだ。この場合、カーナビゲーションとして「ドア to ドア」は意味を成さない。そこで、出入口に通じる最も近い個所を最終地点となるよう一軒ずつ紐付け、もっとも出入口に近い場所で案内を終了するよう工夫を加えているのだ。

現状ではデータ容量を鑑み、公共機関や大規模施設など主要な施設を対象としているのみだが、まさに住宅地図で調査実績を積み上げてきたゼンリンならではの緻密さがここにあると言っていいだろう。

《会田肇》

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