ZFの後輪操舵システム「AKC」を試す…低速でのターンイン、高速での安定性に効果を実感

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ZFの後輪操舵システム、「AKC(Active Kinematics Control)」を搭載するプロトタイプ
ZFの後輪操舵システム、「AKC(Active Kinematics Control)」を搭載するプロトタイプ 全 5 枚 拡大写真

ZFが、IAA=フランクフルトショーに先行してベルリン郊外で開催したテクニカルワークショップにおいて、同社の提案する最新の後輪操舵システム、「AKC(Active Kinematics Control)」を搭載するプロトタイプに試乗した。

ZFのAKCは、すでにポルシェ『911GT3』や『911ターボ』に採用されており、今後もさらに市場の拡大が見込まれるシステム。ZFからは、リアアクスルの中央部に1基のアクチュエーターを搭載する「セントラル」と、左右後輪の各々のサスペンション内にアクチュエーターを搭載する「デュアル」の両タイプが発表されているが、これはもちろん、すべての駆動方式に対応を可能とすることを目的としたものだ。

AKCは、ドライバーによるステアリング操作にあわせて、リアアクスルのトー角を変化させることで、高速時には同位相の操舵によってコーナリング時の安定性と運動性能の改善。また低速時には逆位相の操舵で機敏性と操縦性を改善する。ZFによれば同位相操舵と逆位相操舵の切り替え速度は60km/h。また後輪の操舵角は、いずれの方向でも最大3度とされている。アクチュエーターを電動式としているのは、直進時のエネルギー消費を考慮しているため。ESCやトルクベクタリングシステムとの協調制御など、このAKCを核とした車両制御は、これからさらに進化を続けていくことは間違いないだろう。

デュアルタイプのAKCを搭載したプロトタイプ車は、実際に走行中に後輪がどのように操舵されているのかを視認できる、デモンストレーション用のステアリングが助手席に装備されていた。テストコースはオンロードでの実際の使用環境を再現したもので、低速域における逆位相制御、そして高速域での同位相制御を体験することができた。後輪操舵は、あくまでも疑似的には、ホイールベースを変化させることと同じ効果を発揮するシステム。今回の試乗でもその効果は、十分に実証されることになった。特に印象的だったのは、低速でクリアするタイトコーナーでの、ターンインの俊敏さ。また高速域では直進安定性を含めたスタビリティの素晴らしさに、このシステムの効果を感じさせられた。

後輪を操舵することで、走りの中にさまざまなメリットを生み出すというコンセプトは、実は意外にも長い歴史を持つ。ZFはその技術的な進化を熟知したうえで、さらなる進化の可能性をこのAKCへと求めている。後輪操舵は、はたして将来的なテクニカルトレンドとなり得るのだろうか。

《山崎 元裕》

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