【アウディ TT 試乗】200km/h通勤あたり前!? なドイツ車の本領おそるべし…桂伸一

試乗記 輸入車
アウディ TTSクーペ 新型
アウディ TTSクーペ 新型 全 20 枚 拡大写真

ほーら来た来た。『ランエボ』の終焉で今後はスバル『WRX』が孤軍奮闘しなければならない日本の2Lターボ4WDスポーツ界に、アウディからの新たな刺客!? 3代目に生まれ変わった『TT』と『TTS』である。

【画像全20枚】

◆受け継いだものと進化したもの

今年のニュルブルクリンク24時間レースで優勝したアウディ・スポーツの旗頭、新型『R8』(日本未導入)と同様、TTも過酷なニュルで鍛え上げられた1台。六角のシングルフレームグリルと眼光鋭いライト形状は、R8からそのままTTも譲り受けた感がある。

直線を基調とし、先代よりもシュッと切れ味のあるスタイリングは大きく見える。明らかに先代とは違うのだが、新旧が並ぶと、一発で見分けられない。つまりTTとして基本のイメージを継承しているという事だ。不思議なのはボディサイズ。これは実質先代と変らず、ホイールベースが2505mmと40mm延びた事が最大の違い。

エンジンは2.0TFSI。2リットル直4DOHC16バルブ、インタークーラー&ターボチャージャー。TTは230ps/370Nm、TTSは286ps/380Nm!! とチューンの幅を広げる。

ミッションはステアリングにパドルがあるツインクラッチの6速Sトロニックを介して4WDのクワトロとFFモデルに伝達する。

◆十勝スピードウエイで試す

その試乗は北海道の十勝スピードウエイで。昼前に東京を飛び立ち十勝・帯広空港に着陸する直前、上空は大荒れだった。それは十勝SWも同様で、暴風雨状態でコース上はウエットどころかプールの部分もあった。

“幸運な午前組”は最新版のクワトロ4WDの制御をヘビーレインの過酷な状況下のサーキットで思い切り体感できる。うーん羨ましい。関係者によれば各コーナーでカウンターステアをあてたドリフト大会だったという。

我ら午後組は、まずTTSから車輌安定装置のESPをOFFにしてコースイン。そのクルマの素性を知るにはこの方法が一番だから。もちろん、いつ何が起きるか判らない一般公道では当然ESPはONでドライブしている。

すでに路面はほぼドライ。始めのうちは湿った部分もあり、そこを敢えて走行してクワトロの駆動配分の制御を探ろうとしたが、ほんの一瞬姿勢が乱れるだけ。40mmも延びたホイールベースの効果は、こうした場面で特に感じられる。前後の上下動、ピッチングが抑えられオトナの乗り味になったとも言える。

1kmのストレートを4気筒のパンチ溢れるサウンドとはまるで違う、くぐもった5気筒のような吸排気音を響かせて5速全開で駆け抜ける。高速直進性に優れているアウディの特性を再認識した。

コーナーに進入して旋回途中でアクセルOFF。クルマの挙動はオーバーステア傾向からさらに内側を向くタックイン現象が起る。
しかしタイヤのグリップ力もクワトロ4WDの制御も姿勢を立て直す事にベストな駆動配分から前輪が引っ張り、後輪が押し出して見事なバランス感覚でコーナーを立ち上がる。 

TTSに装着された18インチのコンチネンタルタイヤが路面を柔らかく捉え角がない。といってもスポーツカーだ、運動性に関してはステアリングを切り込む早さと舵角でクイックもスムーズも自由自在。

一方TTにはBSの19インチが装着される。車輌の個性から言うと双方でタイヤサイズが“逆”な気もするが、エンジン出力の違いをコーナリングスピードで挽回するのはこっち。縁石の乗り上げで低い偏平率なりの硬さ、荒さを感じる部分もあるが、スポーツカーとしては常識の範囲。日頃からコーナーを攻め込むムキと、インチアップによるスタイリングを重視する派にはこの選択肢もある。

◆通勤のアシからサーキットまで

ストレートをTTは5速200km/h、TTSは212km/h!! で第一コーナーのブレーキングポイントにさしかかる。どちらも6800rpmの回転リミットに対して6000rpmからまだ上昇途中。

ブレーキの効き味に優れているのは今更の話。ともかく姿勢が一糸乱れぬ直線状態のまま200km/hオーバーから強烈な減速Gが体をシートベルトにめり込ませる。

1台50分の走行時間が割り当てられたが、本来サーキット走行の目的は、一般公道を想定して、「制限速度で確認して下さい」だった。が、筆者を含めて守る者は誰ひとりおらず、てんでに200km/h走行を続ける。

もちろん主催者側も想定済みだが、唯一サーキット向けではないブレーキパッドの熱による効き味の低下を危惧していた。フェードと呼ぶその兆候は連続走行を続けると確かに起る。しかし直線が長い十勝は、次のコーナーまでに冷やす事が可能で、少々ペースダウンすれば元に戻った。

こうして、サーキットを果敢に攻めても何の不満もなく走行できるスポーツカーとしての資質の高さは、通勤で200km/h走行するドイツ車として当然の完成度、なのだろう。ロードカーとして上質な乗り味もあるが、サーキットの良路なので、詳細は公道試乗でまた。

この他、新規はバーチャルコクピットなのだが、サーキット走行に没頭して、試すことを忘れました。これも公道試乗でまた。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

桂 伸一|モータージャーナリスト/レーシングドライバー
1982年より自動車雑誌編集部にてレポーター活動を開始。幼少期から憧れだったレース活動を編集部時代に開始、「走れて」「書ける」はもちろんのこと、読者目線で見た誰にでも判りやすいレポートを心掛けている。レーサーとしての活動は自動車開発の聖地、ニュルブルクリンク24時間レースにアストンマーティン・ワークスから参戦。08年クラス優勝、09年クラス2位。11年クラス5位、13年は世界初の水素/ガソリンハイブリッドでクラス優勝。15年の今年は、限定100台のGT12で出場するも初のリタイア。と、年一レーサー業も続行中。

《桂伸一》

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