【マツダ ロードスター 用6速MT 開発物語】その4…背反する条件を解決した“一石三鳥”のブレイクスルー

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マツダ ロードスター 新型の6速マニュアルトランスミッション
マツダ ロードスター 新型の6速マニュアルトランスミッション 全 8 枚 拡大写真

ドライブトイレン開発部の延河氏は寝ても覚めてもMTのことを考えている、あのマツダ藤原常務からも認められるほどの「MT男」だ。入社以来、ドライブトレイン一筋。そんな男が作り出したマニュアルトランスミッションとは…。

【画像全8枚】

ロードスターのMTは、ダイレクトシフトにこだわっている。このあたりは自動車メーカーによって考え方が異なる部分だ。リモート式にすればトランスミッションハウジングの全長を抑えてコンパクトにすることができる。コンパクトにすれば自然と軽量高剛性にしやすいが、マツダはそれでもダイレクトシフトにこだわり、軽量化と静粛性、そして伝達効率の高さから省燃費をも目指したと延河氏は言う。

「ゼロから機能配分を見直しました。その上で、高めたい機能を4つ挙げました。剛性、静粛性、軽量化、省燃費。このうち剛性と静粛性という機能と、軽量化と省燃費という機能は背反する条件です。その機能を実現するために4つのキー技術を見出しました」

軽量化はあらゆる運動のエネルギーロスを減らすから、燃費改善にも当然効果的だ。しかし、それだけでなく機構面でも低抵抗化を図ったことで、静粛性を高めながら燃費も高めることができたと言うのである。そもそも伝達効率の高いMTのどこを見直せばさらに省燃費が狙えるのか。ロードスターというピュアスポーツの純度を損なわずに燃費を高めることにMTが貢献出来るのだろうか。話を聞いていくと、そこには実に奥深いトランスミッション設計のノウハウが見えてきた。

2軸式のMTは、インプットシャフトから入力された駆動力をカウンターシャフトに伝え、それをどのギアでメインシャフトへと伝えるかにより回転数と駆動トルクが変わる。ギアを噛み合わせるのはシャフトとギアを連結させるクラッチハブスリーブの役目。シンクロ機構が備わるスリーブをシフトフォークが動かして変速を行うのだ。
全段のスリーブがメインシャフトに組み込まれているのが構造上の特徴。もっともこれはNAロードスターから受け継がれてきたものだ。

「これによりシフトフォークやロッドをまとめて配置できるのでリンクなどの部品点数が減らせることから、軽量化とシフトフィールの向上につながりました。NDロードスターではシフトロッドを太くして薄肉化も行っています」

さらに6速をインプットシャフトとメインシャフトを直結したギア比1.00としたことで、低抵抗化を実現。これはギアを介さず駆動力を伝えられるだけではない。6速をオーバードライブとする場合は、最終的にエンジン回転よりメインシャフトの回転数を増やさなければならないため、インプットシャフトからカウンターシャフトへと駆動を伝える際にも、ある程度ギアを高く取らなければならない。しかし6速はカウンターシャフト不要としたことにより、インプットシャフトからカウンターシャフトへ伝わる回転数を大きく落とすことも可能になったのだ。

「このインプットリダクション比低速化は、カウンターシャフトの回転数を落とすことにより、ギアオイルの撹拌抵抗を減らすことにもなりましたし、エンジンのトルク変動によるギアのラトル音(ギア同士が当たる時に発生する歯打ち音)解消にもなり、従来ラトル音対策のために使っていたラバー製のリングも不要になったので、より駆動抵抗を減らすことができたんです」

一石三鳥のようなこの対策により、NDロードスターは快適性と軽快な走りを実現しつつ、Cセグメントと同等の燃費性能も両立したのである。さらにギアオイルも専用開発した低温時低粘度オイルを採用することにより撹拌抵抗の軽減と、冬季の始動時などに起こっていたギアの入りにくさも解消したと言う。

「シフトレバーの先端と噛み合うコントロールロッドエンドの間には従来、樹脂製のシートを採用することで、滑らかでカチッとしたシフトフィールを実現していました。しかし経年劣化によりシートが変形や摩耗することでシフトフィールの悪化すると言う問題もあり、今回はシフトレバー先端とコントロールロッドエンドとのクリアランスをギリギリまで詰めると共に、ロッドエンド側に無電解ニッケルメッキを施し、後処理をしてさらに表面硬度を高めました」

様々な振動対策、しかも軽量かつセンタートンネル内に収めるという前提条件もある。いくつもの難題を、4年を費やして1つ1つクリアしていったと言う。当たり前だがシンクロ機構にもこだわっている。

たった1500ccのNAを搭載するクルマとしては信じられないほど、こだわりまくりのギアボックス。この6速MTだけで、NDロードスターを手に入れる価値があるのではないか。エンジン以上にロードスターらしさが込められた機械、それがこの縦置き6速MTなのであった。

《高根英幸》

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