【INDYCAR 第16戦】奇跡的大逆転でディクソン4度目の戴冠、モントーヤ同点で無念…琢磨は最終戦8位

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逆転でタイトル獲得を決めたスコット・ディクソン。
逆転でタイトル獲得を決めたスコット・ディクソン。 全 8 枚 拡大写真

北米最高峰レース「インディカー・シリーズ」の今季最終戦が現地30日にカリファルニア州のソノマで行なわれ、スコット・ディクソンが優勝、2015年のシリーズ王者にも輝いた。佐藤琢磨は最終戦8位。

最終第16戦の舞台はロードコースのソノマである。6人にタイトル獲得の数字的可能性が残る状況とはいえ、自力王座の権利を有するのはポイント首位のファン・パブロ・モントーヤ(#2 Team Penske/シボレー)だけであり、圧倒的優位。追いかける5人のなかで逆転にある程度の現実味が伴うのは、首位から34点差のグレアム・レイホール(#15 Rahal Letterman Lanigan Racing/ホンダ)と同47点差のスコット・ディクソン(#9 Chip Ganassi Racing/シボレー)の両名くらいだろう。最終戦はダブルポイントで、優勝100点、ポールポジションやラップリードのボーナス等を含めると最大で104点獲得可能となっている。

予選はモントーヤ5位、レイホール6位、ディクソン9位という結果になり、ポイント上位3名は近いグリッド位置からのスタートに。ポールポジションはポイント4番手のウィル・パワー(#1 Team Penske/シボレー)が獲得、佐藤琢磨(#14 A.J.Foyt Racing/ホンダ)は18位。

85周の決勝レースは燃費的に最低3回のピットストップが必要で、レース展開のなかで戦略も多岐化することが予想されるが、3位で自力王座という状況で決勝を迎えたモントーヤにしてみれば、とにかくレイホールやディクソンと近い位置を似た戦略で走ってさえいれば、まず間違いなく王座を獲得できる。実際、それができてもいた。ところが、そのシナリオを崩す出来事がレース中盤に起きる。

フルコースコーション明けのリスタート直後に、モントーヤは僚友パワーと軽く接触してしまったのだ。パワーはスピン後に再走するが、ここで再度のフルコースコーションとなり、フロントウイング交換のためもあってピットインしたモントーヤは、見た目の順位とはいえ20位以降に下がる(参加25台)。

一方、燃費を意識しつつも好ペースで走り、戦略とレース展開もうまくシンクロさせられていたのはディクソンである。残り20周を切る段階、各車あとはコース上でのバトルのみという状況を迎えたところでディクソンが首位固めに成功し、チャンピオンシップもこのままならディクソンの逆転ゲットという順位状況になってきた。

最後となるリスタートを迎えた74周目の時点で、首位ディクソン、8位モントーヤ。残り12周でモントーヤは5位まで上がらないと王座を獲得できない計算になる。その後モントーヤの前方で接触があるなどして彼は6位に上がるが、このままではディクソンと同点(556点)ながら優勝回数の差で王座を逃がすことになる。

ディクソンは後続に背後を脅かされることなく逃げ切って今季3勝目。そしてモントーヤが6位のままゴールを迎えた時点で、ディクソンの2年ぶりのチャンピオン獲得が決まった。

ニュージーランド出身、35歳のディクソンは2003、08、13年に続く4回目の王座獲得。「(厳しいけど)チャンスはまだある」と最終戦前には思っていたそうだが、奇跡の逆転王座獲得を果たしてみての実感は「どう言えばいいのか分からないよ。今季の我々には何度か大きな(重要な)レースがあったわけだが、今日が最大のそれだった」。ディクソンは「We were such a longshot」というコメントを続けているが、longshotとは大穴、あるいは大きな賭けというような意味と考えられるので、「勝負どころが何度かあったシーズンだが、今日という最大の勝負どころで我々は大逆転を成し遂げたんだ」という意であろう。まさにそういう展開だった。

北米のトップオープンホイールシリーズが2つに分裂していた時代に、1999年のチャンプカー王者となっているモントーヤ(コロンビア出身、9月で40歳)は、F1やNASCARへの挑戦を挟んで都合16年ぶりとなるタイトル獲得を土壇場で逃した。「マシンは良かったし、スタートも良かった。最初は思い描いたような展開にできていたよ。ウィル(パワー)との接触は他のマシンも近くにいる状況のなかで起きたことだった。その後、後方からベストを尽くして追い上げたんだが、充分ではなかったということだ」。開幕戦優勝から守り続けていたランクトップの座を最後の最後に同点で明け渡すという、実に悲劇的な逸冠であった。

最終戦の決勝2~5位は以下の通り。ポール発進のパワーは最終的に7位だった。
2位 ライアン・ハンターレイ(#28 Andretti Autosport/ホンダ)
3位 チャーリー・キンボール(#83 Chip Ganassi Racing/シボレー)
4位 トニー・カナーン(#10 Chip Ganassi Racing/シボレー)
5位 ライアン・ブリスコー(#5 Schmidt Peterson Motorsports/ホンダ)

ホンダ勢唯一のタイトルコンテンダーとして最終戦に挑んだレイホールは、6位を走っていた終盤にセバスチャン・ブルデー(#11 KVSH Racing/シボレー)との接触で後退、18位に終わった。これがモントーヤの前で起きた接触で、ブルデーにはペナルティも出た顛末であったが、レイホールのタイトル争いもここで完全に終戦、彼の最終的なシリーズ順位はパワーに次ぐ4位だった。

グレアム・レイホールのコメント
「今日のレースは厳しい結果に終わってしまったが、我々のチームは一年を通して本当に素晴らしい力を見せ続けてきた。ホンダも底力を発揮してくれた。1台体制の小さなチームで、強大なチームを相手に戦ってシリーズ4位となったことに大きな誇りを感じている」

琢磨は最終戦8位。2シーズンぶりのシリーズ戦勝利は実現できず、参戦6年目を決勝最上位2位(第8戦)というかたちで終えた。

佐藤琢磨のコメント
「作戦のすべてがうまくいったわけではありませんでしたけど、今日はハードに戦い抜いて8位でゴールできました。決勝用セッティングのマシンは今週末で一番良くなっていましたが、優勝できるだけのスピードまでは持っていませんでしたね。それでも全力で戦って8位フィニッシュができたのは、チームが力をつけてきていることの証明だと思いますし、今シーズンも大きな力を発揮してくれたクルーたちに深く感謝します」。

今季も3月末からの約5カ月という駆け足でシリーズを消化したインディカー。来季は現状よりもゆとりをもったカレンダー編成になるとの話も出ているが、いずれにせよ北米王座を巡る戦いは、また熱く展開されていくことになるだろう。

《遠藤俊幸》

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