【ボルボ V40 T3 試乗】20年かけて掴んだFWD作りのツボ…中村孝仁

試乗記 輸入車
ボルボ V40 T3
ボルボ V40 T3 全 16 枚 拡大写真

ボルボ『V40』のエントリーモデルとして新たに「T3」と名付けられたモデルが登場した。このクルマ、1.5リットルターボの4気筒エンジンを搭載したモデルだ。

V40がデビューした時、その心臓部は1.6リットルの4気筒ターボ。そしてトランスミッションは、パワーシフトを名乗るDCTだった。その後、高性能な「T5」が仕様変更されて2リットル4気筒ターボを搭載した時から、ドライブ-Eと名付けられたボルボ自製のエンジンが登場。このエンジンはガソリン、ディーゼル双方に設定され、今年7月にはそのドライブ-Eのディーゼル版、「D4」がデビューした。

そして今回のT3となるわけだが、このT3、これまで「T4」と呼ばれていたモデルに日本市場では置き換えられる。これによって日本市場のV40はすべてボルボ自製のドライブ-Eというエンジンに置き換えられることになった。そしてトランスミッションも1.6リットルに装備されていたDCTをやめて、新たにアイシン製の6速ATに置き換えられたのである。これをどう捉えるか。

DCTはスポーティーだが、ボルボはそのスポーティー路線をやめるのか? 答えは違う。近年のステップATの進化が著しいので、敢えて少なからずぎくしゃく感の出るDCTではなくステップATを採用したとみるべきだろう。

肝心の1.5リットル直4ターボである。具体的にライバルをVW『ゴルフ』、メルセデス『Aクラス』と想定すると、メルセデスの1.6リットルに対し、ゴルフが1.4リットルだから排気量はまさに中間。性能的には最もパワフルで最もトルクフルだ。

価格帯で見ると、ベーシックなT3が324万円であるのに対し、Aクラスは298万円、 ゴルフは266万円だから、ボルボが少し高い。324万円出せばゴルフは上級のハイラインに手が届く。性能もかなりボルボに近づく。一方Aクラスは一つ上級の180スポーツが351万円。このクルマはエンジンは変わらないから主として足や装備の違い。ボルボの上級モデルT3 SEになると374万円となり、ゴルフだとGTIの価格に近づく。メルセデスはここは空白だ。というわけで値付け、性能双方、かなり拮抗したモデルだということがわかってもらえるだろう。

さすがにT5用の245psと比較すれば、おとなしいパフォーマンスだが、日常的に使うには非常に快適で必要十分な性能を備えている。高速、一般道共に試してみたが、まず加速性能に対する不満はない。そしてエンジンの回転は非常にスムーズでほぼトップエンドまで澱みなく回ってくれる。

レブリミットは6000rpmとされているが、現実的にはフルスロットルで加速するとメーター上はそれを少し超える。もっともこのあたりの回転を使う必要性はなく、もう少し手前でのシフトアップの方がスムーズだ。因みにパドルシフトがつくのは上級のSEのみでベースモデルにはつかない。

V40は2015年モデルからシャシーセッティングが変わり、それ以前のダイナミックシャシーからツーリングシャシーへ、ややソフトな路線に変更している。ここでもスポーティー路線をやめるのかという疑問が湧くのだが、実際乗ってみるとこのツーリングシャシーの方が、妙な硬さが取れで足も良く動く印象である。快適なことは言うまでもない。その上でコーナーを攻めた時にしっかりと粘るし、最終的にアンダーステアを出す限界も懐が深く、そう簡単にはその領域に達しないから、乗り心地を犠牲にすることなくハードコーナリングも楽しめるというわけで、スポーティー路線をあきらめたわけでは全くない。

乗り心地、ハンドリング性能、それにパフォーマンスのバランスは絶妙で、勿論もう一段上を行きたいというのならT5を選べばよいし、燃費と運動性能の両立を求めるならD4というチョイスが有るわけで、V40ラインナップのバランスも絶妙になった。FWDを作り始めたのは1992年の『850シリーズ』から。ほぼ20年かけてボルボはFWD作りのツボを掴んだような気がする。

■5つ星評価
パッケージング ★★★
インテリア居住性 ★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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