【ジープ レネゲード 試乗】ジープの概念を超えた新時代のジープ…中村孝仁

試乗記 輸入車
ジープ レネゲード オープニング エディション
ジープ レネゲード オープニング エディション 全 21 枚 拡大写真

ついにジープの年間生産は、100万台という大台に達したという。それだけ全世界で人気のある定番ブランド。そのジープをさらに上に押し上げる新たなエントリーモデルとして誕生したのが、『レネゲード』である。

レネゲードの現物を初めて見たのは、今年のデトロイトショー。やっとホンモノのコンパクトジープが誕生した…と思っていたら、日本市場のスペックを見る限り外観のサイズはほとんど従来あった『パトリオット』と大差ない。今回はコンパクトというよりBセグメントのジープという触れ込みだったので、大きさに関する限りはあれ?っていうのが偽らざる感想だ。もっとも大きいと感じるのは1805mmの全幅だけで、全長はVW『ゴルフ』とほぼ同じであるから十分コンパクトと言えよう。

搭載するエンジンは1.4リットル4気筒マルチエアターボ。その名前からもこのエンジンがフィアットベースであることがわかる。クライスラー側では既にダッジ『ダート』に搭載されているもので、フィアットではアルファロメオが『ミト』、及び『ジュリエッタ』にこのエンジンを搭載する。ただし、チューニングは異なっている。

マルチエアがどのように優れるか簡単に解説しよう。このエンジンは吸気側にカムを持たず、バルブの開閉は油圧ピストンによって行われる。その油圧ピストンの駆動力は、排気側カムシャフトが作り出すという効率的な仕組みだ。スロットルバルブはエンジンブレーキが必要となる時以外は常時開きっぱなし。そのスロットルバルブの代わりを吸気バルブの開閉量、開閉時間、開閉タイミングを電子制御することで行うというもの。巧妙かつ緻密なものだ。それによるメリットはポンピングロスの低減、排ガスのクリーン化、燃費向上など多岐にわたる。

このエンジンに組み合わされるのは6速DCT。ジープでは初採用である。DCTはそのチューニングによって、素晴らしくスポーティーにしたり、ATと見分けがつかないほどスムーズにしたりと使い分けることが出来る。スポーティーの代表例ではVW『ゴルフR』、スムーズの代表例ではメルセデス『CLA』が挙げられるが、アルファロメオ・ジュリエッタはその中間。そしてレネゲードの場合は中間より少しソフト、即ちスムーズに振った味付けという印象だった。

パワーは140ps、最大トルクは230Nmと、同じ排気量のダウンサイジングターボを搭載する他メーカーのものとそう変わらない性能だが、車重が1675kgとかなり重めなので、コンパクトカー的軽快感は持たず、走りの印象としても瞬発力よりも持久力の高さをうかがわせる。

3人乗車で試乗したにもかかわらず、サスペンションは上方向への突き上げが比較的強く、FWDでオフロードとは無縁なはずなのに、やはりジープらしいオフロードを想定した乗り味のしているのが特徴だ。この性格、ハイトのある215/65R16というタイヤに負うところも大きい気がする。いずれにせよ空気がたっぷりと入ったタイヤに乗せられている印象だった。オフロード的なのはステアフィールも同様で、中心付近にゆとりを持たせ、いざキックバックを食らっても慌てることの無い設定とされているのも如何にもジープ的。

一方でジープらしくないと思えたのは、中々ポップで若々しいイメージのインテリアデザインである。ここ数年来急速にその質感を上げてきたクライスラーブランドの各モデル。ジープも例外ではなく、『グランドチェロキー』、『チェロキー』は言うに及ばず、タフが身上の『ラングラー』でさえ、上質感あふれる内装に変わっている。レネゲードも使用する素材から作り込みのクオリティーまでなかなか高いものを感じさせてくれた。実はこのクルマ、アメリカ製ではなくイタリア製だ。とまあ、新しいことずくめのジープ。お値段も税込みで300万円を切る297万円と手ごろ感がある。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★
フットワーク ★★★★
おすすめ度 ★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 世界初の「破壊不可能ホイール」って何だ!? テスラ向けパーツ手掛ける米メーカーが開発
  2. 「ミニGSX-R」をスズキがサプライズ発表!? 鈴鹿8耐マシン以上に「サステナブルかもしれない」理由とは
  3. 待望の新型スズキ『GSX-R1000R』が予告なしの初公開!「3色3様」往年のレーシングカラーで日本市場復活へ
  4. 【ダイハツ ムーヴ 新型】「ポッキー入れ」にイルミネーション、軽自動車でも質感を“あきらめさせない”インテリアとは
  5. リトラと決別した「ワイルド・キャット」、3代目ホンダ『プレリュード』【懐かしのカーカタログ】
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 「AIディファインド」の衝撃、日本の自動車産業は新たな波に飲み込まれるのか…アクセンチュア シニア・マネジャー 藤本雄一郎氏[インタビュー]
  2. ステランティスの水素事業撤退、シンビオに深刻な影響…フォルヴィアとミシュランが懸念表明
  3. スズキ初のBEVはなぜ「軽EV」じゃない?『eビターラ』開発者が語る「EVの悪循環」と「スズキの強み」
  4. SUBARUの次世代アイサイト、画像認識技術と最新AI技術融合へ…開発にHPEサーバー導入
  5. ブレンボが新ブレーキ開発、粒子状物質を削減…寿命も最大2倍に
ランキングをもっと見る