クラリオンは第二世代となる車載用「フルデジタル サウンドシステム」と、車両周辺の監視・予防安全に寄与する次世代「サラウンドアイ」を発表。フランクフルト モーターショー2015でデモカーの出展と共にその概要を公開した。
今回発表された「フルデジタルサウンド システム」は、デジタルプロセッサーとフルデジタルスピーカーで構成され、フルデジタルサウンドの音質向上と、幅広い機器との接続を実現した汎用性の高さがポイントになる。クラリオンは2012年に世界で初めてフルデジタル スピーカーシステムを発売しているが、その技術をベースとしてデジタル信号を効率よく音に変換する独自の車載用高出力LSIの開発。この採用によってさらなる高音質化を達成できたという。
とくにフルデジタルシステムが車載機としてメリットを生み出すのは、取り付けが今まで以上に容易で軽量化にも貢献できる点にある。スピーカーに駆動回路を内蔵したことで外付けアンプが不要となるからだ。自動車メーカーとしては燃費向上を図るためには部品の重量増は可能な限り避けておきたいところ。これまでオーディオの音質アップを図ろうとすると重量増は避けられなかっただけに、その縛りから逃れられる画期的なシステムとなるわけだ。
新システムでは、新たに外部機器やハイレゾ対応のスマートフォン(Android)等とのフルデジタルによるダイレクト接続が可能となった。組み合わせるセンターユニットは純正であろうと市販であろうと組み合わせ自由自在で、出力もデジタル/アナログいずれにも対応できる。この高い汎用性は、システム化を図る上で大きなメリットと言える。とはいえ、実力をフルに発揮できるようにするため、クラリオンでは新システムに対応するデジタル出力センターユニットは鋭意開発中。デモでは残念ながら発表のために間に合わせた試作機となっていた。
音のチューニングは同社 技術開発本部の武藤 慧(あきら)氏が埼玉にある本社からフランクフルトまで出向いて行ったという。音を聴いた印象では、キレの良さに優れ、解像力も驚くほど高い。フルデジタルならではのメリットは十分に活かされているようだ。若干、輪郭に固さが残ってはいたが、今後エージングが進むにつれてその辺りは少しずつ解決されていくものと思われる。フルデジタルサウンドシステムは、来春以降、順次、日・米・欧・豪州で発売される予定だ。
一方の次世代「サラウンドアイ」。デモカーには前後左右に4つのカメラが装着されており、これによって全周囲が映像としてモニタリングされる。一見すると最近になって急速に採用が進む全周囲モニターと変わりがないようにも見える。次世代「サラウンドアイ」が実現するのは、車載カメラ映像のデータをデジタル伝送してECUで高精度処理することで映像劣化を大幅に軽減したことにある。この結果、運転時の視認性は現行システムに比べ約3割もアップ。情報をリアルに表示できるようになり、周囲の状況を寄り直感的に把握できるようになるわけだ。
デモカーで表示されていた表示は周囲に置いたパネル等までの距離が近過ぎてそのメリットを活かし切れていない気がしたが、全周囲がスムーズにつながり状況を鮮明に映し出せているのは確認できた。クラリオンは今後、このシステムを警報支援、自動駐車などの監視・予防安全といった分野にも広げたシステムとして提供していく予定だ。