【F1 日本GP】浜島裕英の見所チェック…「剪断力」でタイヤを暖める、アロンソが生み出した技術とは

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フェルナンド・アロンソ(マクラーレンホンダ)
フェルナンド・アロンソ(マクラーレンホンダ) 全 6 枚 拡大写真
レースで重要な役割を果たす「タイヤ」。8月のベルギーGPからドライバーの作業をアシストするような内容の無線が禁止されたことで、タイヤマネージメントはドライバーの力量や判断に委ねられることになった。そもそもドライバー達は、どんなテクニックでタイヤマネージメントをおこなっているのか。これがわかれば、日本GPをより一層楽しむことができるかもしれない。

本稿ではこの「タイヤ」に着目、レーシングタイヤのプロフェッショナルである浜島裕英氏に、レースの見所を語ってもらった。第2弾は、アロンソが編み出したという「剪断力」(せんだんりょく)を用いた技術に着目する。


◆“剪断力”でタイヤを暖める。この技を編み出したのはアロンソ

剪断力とは、物質を斜めに変形させる力のこと。プラスチック消しゴムで紙の上をこするイメージです。物質は変形することで発熱し、柔らかくなっていきます。練り消しゴムや粘土を捏ねると、暖かく、そして柔らかくなりますよね? それをイメージしていただくと分かりやすいと思います。

ドライバーたちはこの“剪断力”をタイヤに生じさせて、タイヤの温度を上げているのです。ウィービングはタイヤのトレッド面(接地している面)のゴムを横方向に動かしています。バーンアウトは同じくトレッド面を縦方向に動かします。また、ブレーキングでは、一気にブレーキをかけて前輪に荷重をかけることでタイヤを潰し、屈曲方向の変形を発生させています。このような作業を行うことによって、タイヤを効果的に暖め、それに伴って内圧も上昇させているのです。

この作業は、ブリヂストンとミシュランによる、タイヤ戦争の時代に特に洗練されたように思います。当時のタイヤは非常に性能が尖っていて、最大限の性能を発揮するためには、実にシビアな温度・内圧のコントロールが求められました。そのためにフェルナンド・アロンソなどのドライバーが、タイヤを暖める作業を熱心に行い始めたのです。ミハエル・シューマッハも同じようなことはやっていましたが、アロンソほど徹底してはいませんでした。

これまでは温度や内圧をピットで確認し、「少し足りない」とか、「OKだ」ということを無線で指示していたわけですが、今回の通達によりそれができなくなりました。そのため、ドライバーは自分の“感覚”で見極め、タイヤの状態を自分の判断のみでコントロールしなければならなくなったのです。

マシンに取り付けられているモニターで表面温度を確認することはできますが、それよりもドライバー自身のフィーリングの方が、重要だと思います。ただ、フォーメーションラップでは、他にもクラッチやブレーキの温度管理など、色々としなければならないことがあります。その2分間で、タイヤの温度も自分で判断して、調整するというのは、実に至難の技だと思います。


【浜島裕英氏】
ブリヂストンがF1にタイヤを供給していた1997年から2010年までの14年間にわたってモータースポーツタイヤ開発ディレクターとして現場の指揮を執り、その後12年から14年まではフェラーリに在籍しタイヤに関するアドバイスを行った。現在はフリーとしてF1テレビ解説などを行っている。

《レスポンス編集部》

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