【ダイハツ キャスト 試乗】心おきなくダウンサイジングが図れる…会田肇

試乗記 国産車
キャスト・アクティバの最上位グレード「Gターボ SA2」
キャスト・アクティバの最上位グレード「Gターボ SA2」 全 12 枚 拡大写真

一つの車種で3つの個性を揃えて登場したダイハツ『キャスト』。現行『ムーブ』をベースにしたというだけあって、しっかりとした乗り味、充実した装備など、その仕上がりは小型車からダウンサイジングを考えている人にとっても十分満足できる内容となっていた。

軽乗用車がダウンサイジングを志向するユーザーを取り込むことを狙いとしているのは今に始まったことではない。装備は着実に充実化の一途をたどり、今では上級車と比べても遜色ないどころか、上回る装備も数多く見られるようになった。しかし、実用面や品質という点に及ぶと未だに小型車にも及ばないところも少なくない。キャストはこの辺りを徹底的に追い込んだという。

ドアを開いて驚くのが、高密度な造り込みだ。試乗車は「アクティバ」のGターボSA2だったこともあるが、この質感が特に素晴らしい。シート表皮とドアトリムには中央部のディンプルボーダー状の織り柄を組み合わせたフルファブリック仕様。さらにオプションでは「本革?」と思わせるようなプライムインテリアも選べる。これらの雰囲気はもはや完全に小型車の領域を上回っている。

ダッシュボードは材質こそ硬質プラスチックのままにとどまるが、見た目にはチープさは全く感じさせない。ステアリングに採用した本革の手触り感も上々で、シルバー加飾もプラス。カーナビゲーションを備えた周囲部もピアノブラック調塗装を施してこの質感も高い。また、天井に目を移すとスポットランプと並んでサングラスが入れられる小物入れまで装備する。

見逃せないのが防眩式ルームミラーの装備だ。小型車以上では当たり前のこの装備、実は軽自動車ではほとんど装備されていない。一部車種でミラー内にモニター機能を備えたことで自動防眩機能がプラスされたが、それ以外で装備する例はない。ダイハツは「何気ないながら価値ある装備(開発担当者)」として、キャストにこれを採用したのだという。

オプション装備される「ウォームパック」もお得感たっぷりだ。2WD車であっても運転席側にヒートシータが備わり、同時に両サイドのドアミラーにはヒーターが、フロントウインドウ下部にはデアイサーが装備される。さらにリア用ヒーターダクトも備わるのだ。ダイハツは新型ムーブでこの対応をスタートさせており、ぜひともこの対応を他の車種へも展開していって欲しいと思う。

筆者の出身地は北関東。雪は降らないものの、冬期の凍るような寒さは子供の頃より体験済みだ。屋外に車両を一晩置けばフロントガラスだけでなくミラーまでも徹底して凍り付く。ところが日本車は4WD車だけをこれらの装備の対象としている例が少なくない。開発者には雪が降らなくても、寒いところは数多いことを日本車メーカーの開発陣にぜひ認識してもらいたい。

「軽自動車だから」とユーザーに我慢を強いるようでは、本気でダウンサイジングを考える人は増えていかないと思う。その意味でキャストは“軽自動車=セカンドカー”の意識から抜け出す最適車になり得る。衝突回避支援ブレーキ機能に代表される安全装備もカメラ機能が加わり「スマートアシスト2」で対応。走りもアクティバのたっぷりとしたストロークが気持ちよい乗り味に仕上がっていた。

キャストにはダウンサイジングしてもそれを感じさせない高品質な造り込みが備わっていたのだ。あとはぜひステアリングにテレスコピック機能を備えていただきたい。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★

会田 肇|AJAJ会員
1956年・茨城県生まれ。明治大学政経学部卒。大学卒業後、自動車専門誌の編集部に所属し、1986年よりフリーランスとして独立。主としてカーナビゲーションやITS分野で執筆活動を展開し、それに伴い新型車の試乗もこなす。来年には60歳代に突入する自身の体験を含め、高齢者の視点に立った車両のアドバイスを心掛けていく。 

《会田肇》

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