10日に実施された予選は、ポルシェ、アウディ、トヨタの順という、今季ここまでの流れ通りの力関係で決着した世界耐久選手権(WEC)第6戦「富士6時間レース」。はたして決勝もこのままポルシェが押し切るのか、あるいはアウディの反撃、トヨタの浮上があるのだろうか。
アウディは予選結果こそ3-4位だったものの、ポルシェの1-2を阻止するかもしれないところまで接近するなど、内容はわるくなかった。8号車を駆るロイック・デュバルは「マシンの改良の効果もあり、予選は良かったと思う。もちろん決勝でどうなるかは分からない部分もあるが、ポジティブといっていい状況だろう。少なくとも過去2レースよりはポルシェと戦える位置に我々はいる」と予選直後に語っている。
7号車のエース、アンドレ・ロッテラーも予選パフォーマンスの改善には一定以上の感触を得ている。予選では「トラフィック(渋滞)につかまって、コンマ2~3秒はタイムロスしている」とのことなので、最終的なベストタイム平均の差を考えれば、もっとポルシェ勢に接近し、最終的に2台の間を割っていてもおかしくはなかったことになるだろう。
ただ、決勝に向けては「昨日の走行の感じからすると、タイヤ性能の維持という面ではポルシェの方が我々より少しいいかもしれない。そこのところのコントロールが(勝利への)課題だと思う」とロッテラー。天候は微妙だが、決勝がオールドライになった場合は、当たり前の話だがポルシェとアウディのロングランペース(タイヤのもち)が勝敗のカギを握ることになる。
アウディのLMPプロジェクトを率いるクリス・レインケ氏も「もちろん、同じタイヤで2スティント走った場合のパフォーマンスがどうなるかの確認等がまだ完全ではない面もあるが、技術サイドとしては今回の富士戦に向けたマシンの仕立てが決勝でもいい方向に作用すると期待している」と語り、現在はルマン24時間レース以降、ポルシェに3連敗中だが「この富士で今季序盤(接戦でアウディ開幕2連勝)のような状況に戻ったのではないかと感じている。決勝も頑張りたい」と巻き返しを狙う構えだ。
一方、トヨタは定位置の予選5-6位で、ポルシェ&アウディ勢がベストタイム平均1分22秒台~23秒台前半だったのに対し、トヨタは2台とも平均1分25秒台前半と約2秒の遅れをとっている。#1 トヨタの中嶋一貴によれば、タイヤ的な状況等を考えれば予選タイム自体はもう少し縮められたところもあったようだが、彼も「まあ(現状の)定位置かな、というところですよね。(ポルシェ&アウディとの)タイム的な差も2秒くらいだろうと思います」と現状を追認するところだ。
雨の予報もあるなか、決勝に向けては「もちろん雨が降った方がチャンスは増します。ただ、(予報では)早く止みそうなんですよね」と一貴は苦笑。今季のマシン戦闘力比較を考えると、トヨタ勢の富士4連覇は難しい状況にあるが、天の助けがあれば表彰台を得ることは可能になるかもしれない。人事を尽くし天命を待つといった心境で、トヨタの母国での浮上劇にも期待したい。
ちなみにLMP1-Hクラスのマシンがスーパーフォーミュラ(SF)なみの信じられないタイムを出すに至ったことについて、SFでも走っているロッテラーと一貴に訊いたところ、両名とも「やはりLMP1-Hはメーカーのファクトリーチームが総力を挙げてやっている」ことの凄さを強調。さらに一貴は「直線の前半での加速がタイムを稼いでいるところだと思います」と分析。ロッテラーは「我々はクワトロ(4WD)であることのメリット、トラクションの良さをコース全域で活かせている。だから速いんだと思う」と語っている。いずれにしてもLMP1-Hの速さが超次元のレベルに入ってきていることは確かなようだ。
予選ポール会見では、各クラスのポール獲得者たちが一様に「明日は雨かも」と気にしていたのが印象的だったが、さて、天候も含め11日の決勝6時間はどういう展開になるのか。LMP1-Hを中心に、各クラスで熱戦が繰り広げられることが期待される。