【リンカーン ナビゲーター 試乗】2気筒なくなってもデメリットは皆無…中村孝仁

試乗記 輸入車
【リンカーン ナビゲーター 試乗】2気筒なくなってもデメリットは皆無…中村孝仁
【リンカーン ナビゲーター 試乗】2気筒なくなってもデメリットは皆無…中村孝仁 全 27 枚 拡大写真

ダウンサイジングという言葉を頻繁に耳にすると思う。これ、自動車の世界ではエンジンにしか使われていない。だからアメリカン・フルサイズSUVは今も巨大なボディを誇る。

リンカーン『ナビゲーター』は、キャデラック『エスカレード』と並ぶアメリカの高級SUVの巨頭。数あるフルサイズSUVの中でもやはりキャデラックと並んで質感や装備の高さ、充実さで抜きんでている。

昔から性能面に関しては常にキャデラックが一枚上手だった。そして排気量もほとんどの場合キャデラックの方が大きい。現行世代でもその構図は変わらないが、大きな違いがこの世代から生じている。それは、キャデラックが今も6.2リットルという大排気量のV8エンジンを搭載するのに対し、リンカーンはダウンサイジングを断行し、3.5リットルツインターボV6エンジンを搭載してきたことだ。

というわけでついにフルサイズ高級SUVの一角からV8エンジンが姿を消した。多くのアメリカンSUVファンは、もしかするとこれを好ましく思わないかもしれない。何故なら、V8を搭載してこそ、アメリカンだと信じて疑わない人が多いからである。

でも毎年アメリカに取材に行く僕から言わせると、アメリカ自動車業界の聖地ともいえるデトロイトですら、その事情は大きく変わりつつある、というのが実感。50年代からアメリカ車のハートは大衆車でもV8というのは過去の話で、V8エンジンは今や限られた一部の高性能車や高級車に限定されたものになった。

ならば高級車であるはずのリンカーンが何故V8を捨てたのか? と突っ込まれるかもしれないが、それはフォードの理性が高級車の新たな価値観を生み出そうとしているから…と解釈したい。

実際試乗してみると、2気筒を失ったデメリットはほぼ皆無である。先代までの5.4リットルV8の性能が304hp、495Nmだったのに対し、V6ツインターボは385hp、624NmとV8を圧倒する。最大トルクの発生ポイントもV6は2750rpmとV8より1000rpm下がっているから、街中でも俄然トルクフルで乗り易いし、高速での加速も同様にニューモデルの方が圧倒的に力強いのである。

基本的に骨格は従来のままで、ボディデザインもグリルをいじったりホイールをいじったりと細かい変更に終始しているから、今回はマイナーチェンジであるが、インテリアは特にメーター周りにマイリンカーンタッチを採用したディスプレイを装備したり、センターコンソールのディスプレイもナビと併用できるシステムが採用されるなど、それなりに変更されている。

足回りは2/1000秒ごとに情報を更新する可変コントロールダンピングを備え、快適そのもの。併せて、ステアリングも電動アシストに変わった。可変ダンパーを備えたことで、走行モードもスポーツ、ノーマル、コンフォートの3つから選べる。主として街中ではコンフォート、高速は間違いなくスポーツがお勧めである。

5290×2010×1980mmという巨大さ故、初めは恐る恐る走り出したが、ほぼ1週間試乗した結果、慣れてしまうと物理的に不可能なところ以外はほぼどこでも問題なく行けることが判明した。一度だけ狭い駐車場に入れて苦労したが、困るのはそんな時だけ。大柄故に都内、郊外を問わず無茶をしようと思わないから、スムーズさと快適さだけを味わう結果となり、印象はすこぶる良い。

7人乗りを試してみたが、どこの席からも不満の声は聞こえなかった。全員大人である。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★★
パワーソース ★★★★
フットワーク ★★★★
おすすめ度 ★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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