【アストンマーティン ヴァンテージ GT12 試乗】見た目も走りもレースカー、とろけるサウンドの600馬力モンスター…中村孝仁

試乗記 輸入車
アストンマーティン ヴァンテージ GT12
アストンマーティン ヴァンテージ GT12 全 21 枚 拡大写真

世界に100台。そしてこれ、ロードゴーイングGTである。フロントには巨大なリップスポイラー、リアにも大層なウィングをつけた、まるでGT3のマシンのようだが、ちゃんとナンバーを取って公道を走れるクルマなのだ。

アストンマーティンの説明では、「サーキットにインスパイアされた」とあるが、インスパイアどころか、少なくとも外観を見る限り、まるでGTマシンそのものだ。ベースは『V12 ヴァンテージS』。そこから100kgのぜい肉をそぎ落とし、心臓を600psに強化。ボディを拡幅し、ミシュラン・パイロット・スーパースポーツ・タイヤを装着した…というのが大まかな内容である。

外観はご覧の通りで、見た目にも凄みがあるボディはその多くにカーボンファイバーが採用され、結果として前述した100kgの軽量化が達成されている。しかし、外観とは裏腹にコックピットに滑り込むと、それがまさしくロードゴーイングカーであることを思い知らされる。スウェード製の心地よいフルバケットシートに始まって、ダッシュ全体もシートと同じフルスウェード製。エアコンだってガンガンに効く。

実は乗る前から、ニュルブルクリンク24時間のアストンマーティンワークスドライバー、桂伸一選手によるオーナー向けのサーキットタクシーとしてこのクルマが走っていたので、そのサウンドはイヤというほど聞かされていた。初めて見るその肢体から、完全なレーシングマシンだと思い込んでいたし、実際ストレートを駆け抜けるその音も、レーシングカーそのものである。

ところが、いざ説明を聞くと何とロードゴーイングカーだという。えっ? これで認証おりるの? それが偽らざる反応であった。しかし、現実問題として音に至るまで測定範囲内では問題ないのだそうである。自動車メーカーはある特定のレギュレーションの中でクルマ作りをしているわけで、勿論国によってそのレギュレーションも異なるから何とも言えないが、少なくとも日本やイギリスではこのサウンドはOKなのだそうだ。

600psのモンスターを操るのに供された場所は袖ヶ浦フォレストレースウェイ。そのフルコースを使ってマシンを堪能出来る。しかも、DSC-OFFときた。精々2~3回ほどしか走っていない不慣れなコースなので、まずは師匠、桂伸一選手の助手席でコース取りと使用ギアをの解説を受ける。シングルクラッチのトランスミッションはフルスロットルでアップシフトすると大きくクルマを揺らす。桂選手曰く、ニュルではこれが元でペイドライバーがクルマを壊したと…。だからアップシフトの際はアクセルを戻し気味でとのアドバイス。

これを受けていよいよステアリングを握る。勿論ピットアウトから全開…なんてことはしません。袖ヶ浦のコースは1周2.4kmほどで、筑波よりも少し長い程度。しかし、アップダウンはかなり大きく、特にピットアウトして1コーナーを抜けた後に続く高速ベントの終わりがちょうど下りきったポイント。

そしてここから二つほぼ直角の右コーナーが続く、実はここが第一の注意ポイント。そしてそこから緩く左にカーブしながらコースの頂点に上り詰め、さらに左コーナーが続きやや逆カントの付いた左コーナーが続く、ここが第2の注意ポイントで、登りで攻めすぎるとその下りの左コーナーが危ない。

とまあ、このあたりだけしっかりと抑えておけば、あとはそれほど危険な場所はない…と感じていた。もう一つ桂選手からのアドバイスは、ストレートエンドに波状部分があってその上に乗ってブレーキングするとABSが効いて、ちょっとヤバいからストレートエンドは攻めすぎないでアクセルオフで波状を超えてからブレーキ。はい、よくわかりました。

冒頭示した通り、タイヤはミシュラン・パイロット・スーパースポーツ・タイヤ。本来ならカップ2タイヤが欲しいところで、実際うかつなアクセルオンは禁物のクルマである。言われた通り、我を忘れてアクセルオンのままフルスロットでシフトアップすると、ボディがグラっと揺れる。イケね!と、次からは少し戻してシフトアップ。アウトラップの後、2周して一端ピットというスケジュールでクルマを走らせる。

レースは何度も経験していたとはいえ、半ばど素人の僕(レースは)ですら、実に扱いやすいと思えるその挙動。何度目かのルーティーンで、例の第一注意ポイントで見事に少しテールアウトしたが、実にコントロールしやすい。改めて言っておくが600psのマシンだ。ダウンシフトのブリッピングは官能的。そして危険な下りの左コーナーを3速パーシャルで抜け(桂選手に言われた通り)、そこからフルスロットルで4速に入れてダウンシフト。このあたりの痛快さはたまらない。まるでレーシングドライバーになった気分を味わえる。

聞くところによれば、お値段4500万円ほどだそうで、しかも今のところ日本にこれ1台。アストンマーティン様、太っ腹です。乗せてくれてありがとうございます。イヤー、とろけるようなサウンドと、実に大胆な走りを堪能させていただきました。併せてアドバイスをくれた桂伸一選手、有難うございます。

■5つ星評価
パッケージング:---
インテリア居住性:---
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度: ---

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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