放送と通信を融合した新たなメディア、「i-dio」が始動

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「i-dio」の構成
「i-dio」の構成 全 14 枚 拡大写真

BIC、VIP、東京マルチメディア放送の3社は10月15日に発表会を開催し、放送のオープンプラットフォームを実現するV-Low マルチメディア放送のコミュニケーションネームを「i-dio(アイディオ)」に決定、2016年3月より福岡、大阪、東京で放送を開始すると発表した。

また、「i-dio」に対応する初のスマートフォン「i-dio Phone」を年内に発売する。

◆市場切り開く、新たな放送システム

V-Low(VHF-Low)とは、地上アナログテレビの放送後に空いた周波数帯(99~108MHz)を利用して創設される新たな放送サービスで、「移動受信用地上基幹放送」に定義されている。またBICは、このV-Lowマルチメディア放送の事業全般を推進することを目的に、エフエム東京が中心となり設立したホールディング会社だ。

BICおよびエフエム東京の代表取締役社長である千代勝美氏は、「V-Lowに放送と通信のプロトコルを乗せることで双方の境界を消した一斉同報放送を開始する。エリアなどで個々に最適な情報を提供できるため新たなエンゲージメントとなる」とした。また、「汎用モジュールとSDKを提供することで容易に組み込みができるようエコシステムを構築。IoTとV-Lowを組み合わせた日本発の新しいシステムとして、新しい市場を創出する」と述べた。

続いてBICの常務取締役であり東京マルチメディア放送の代表取締役社長である藤勝之氏が登壇、V-Lowマルチメディア放送の概要を説明した。藤氏はV-Lowの特長として、携帯端末や車載型の受信機で移動しながら情報を入手できる「携帯性・移動性」、不特定多数に同時に情報を提供できる「一斉同報の放送」、映像や音楽、データなどさまざまな情報を柔軟に組み合わせて放送できる「IPデータキャスト(IPDC)」の3点を挙げた。

「i-dio」は、北海道、東北、関東甲信越、東海・北陸、近畿、中国・四国、九州・沖縄の7つの地方ブロックを対象に放送サービスを提供する。さらに地域を細分化して放送内容を分けることもできるので、地域活性化や、より安心安全な社会の実現に寄与できる。まずは2016年3月に福岡、東京、大阪で放送を開始する。

また、「i-dio」の特徴的な部分として、放送サービスが3つのレイヤーで構成されることを挙げた。サービスはハード事業者、ソフト事業者、コンテンツプロバイダーで構成され、認定事業者としてハードはVIPが、ソフトはマルチメディア放送が担当し、放送コンテンツは放送ブロックごとのマルチメディア放送会社に委託する形となる。

藤氏は新産業創出の側面として、「i-dio」による2016年から2019年の4年間における累計経済効果を算出したところ、約8150億円になるとし、一定の普及が見込まれる10年間の試算では約2兆円に上るとした。VIPでは9セグメントのハード設備を持ち、まずは2セグメントをTOKYO SMARTCAST、2セグメントをアマネク・テレマティクスデザイン、2セグメントをコンテンツプロバイダーに提供する。残りの3セグメントはいずれ追加募集するとした。

「i-dio」の受信端末については、VIPの代表取締役社長である仁平成彦氏が説明を行った。まず、「i-dio」をスマートフォンで受信するためのWi-Fiチューナーを紹介。これは放送波をWi-Fiに変換するためのもので、10万台を製造しモニターキャンペーンなどにより配布するという。AndroidとiOS向けのアプリも開発しており、このアプリによってリアルタイムの放送受信をはじめデータ放送やオンデマンド放送、EPG表示、緊急情報などを受信できるようになる。

通常は「i-dio」の受信機として活用し、緊急時には緊急放送を受信できる防災ラジオ「M'eo Sound VL-1」も提供しており、自治体を中心に導入が進んでいる。さらに仁平氏は、COVIAと共同開発したスマートフォン「i-dio Phone」を紹介。SIMフリーのスマートフォンとなっており、「i-dio」チューナーを内蔵するほか、従来のFM・AMラジオやテレビ放送も受信できる。こちらは2015年12月にCOVIA公式ネットショップをはじめ全国の主要家電量販店、Amazonなどで販売される予定だ。放送エリアは順次拡大していき、2019年7月までに全国世帯のカバー率78.3%を目指すという。

◆モビリティでの情報収集に革新

さらにコンテンツプロバイダーとして、アマネク・テレマティクスデザイン、TOKYO SMARTCASTが発表を行った。アマネク・テレマティクスデザインの代表取締役CEOである今井武氏は、「i-dio」向けに日本初となるモビリティ向けデジタルラジオ放送局「Amanekチャンネル」を創設すると発表した。同社は、東日本大震災の際に通信が圏外だったことで被害が拡大したことを受け、安全で快適な新しいモビリティ社会を目指している。

「Amanekチャンネル」では、音声と自動音声(TTS)を組み合わせた新しい放送を行う。ブロックの俯瞰的な情報はスタジオのナビゲータの肉声を放送し、エリアごとの情報にはTTSで放送。エリアの区別は、放送に位置情報を付加することで、車載機が選択可能にする。なお、受信は車載機にV-LowAmanekソフトウェアモジュールを組み込むことで可能になり、2020モデルでは年間300万台が標準装備されるとしている。

放送内容としては、たとえば約15分先の気象リスクを伝えたり、リスナーがセンシングした道路状況データを共有することが可能になる。また、商業施設に近づくとトピックやイベント情報を提供し、クーポンなどを送ることもできる。旬のドライブスポットや、流星や夕日が綺麗に見えるエリアの情報なども音声とデータで紹介することも可能だ。業務車両向けに特化した番組も提供可能になる。

さらには、APIを公開することでサードパーティが自社のサービスの番組化や独自サービスを作ることを可能にしたり、道路沿いや車で行く場所のサイネージと放送を連動させることも可能であるとした。

TOKYO SMARTCASTの代表取締役社長である武内英人氏は、「i-dio」で「TS ONE」と企業やブランドのオリジナルチャンネルをデジタルコミュニケーションプラットフォームモデルとして、またIoTセキュリティやサイネージ、ゲームアプリ配信をデータキャストモデルとして展開するとした。

TS ONEでは、放送と通信のデジタルハイブリッドメディアとして、音楽やニュースをはじめとするきめ細やかな情報発信を行う。放送初となるエリア・ターゲット別のクーポン配信や、視聴により貯まるポイント制度などを導入する。これらはひとつのアプリで対応でき、音楽においては地上波最高音質を実現するという。

データキャストモデルでは、アクセス認証やIoT機器のアップデートを可能にする「IoTセキュリティ」、クーポンや多言語情報に対応する「サイネージ」、緊急時の防災情報などの「安全・安心」を提供するデータ放送サービスを行う。特にIoTセキュリティでは、ネットワークを使用することによる情報漏えいリスクを排除することができるとした。

《吉澤 亨史》

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