【土井正己のMove the World】「トヨタ、2050年にガソリン車ゼロ」の意味を考える

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トヨタは2050年までにエンジン自動車をゼロにすると発表(写真はプリウス新型)
トヨタは2050年までにエンジン自動車をゼロにすると発表(写真はプリウス新型) 全 3 枚 拡大写真

10月14日、トヨタが、2050年までにエンジン自動車をゼロにするという発表を行った。メディアも大きく取り上げ、「世の中からエンジンがなくなる。大変なことだ」というようなトーンで報じたが、そういうことではない。これは、「全てのクルマのパワートレインに電気利用を入れていく」という意味である。

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◆「全てのクルマのパワートレインに電気利用」とは

今のコンベンショナルなエンジン車は、スピードを上げる時に、ガソリンを燃やしてエネルギーを車体に供給するが、信号が赤だと、ブレーキで減速して「エネルギーを捨て」、そして、そしてまたガソリンを燃やしてスピードを上げるという繰り返しを行っている。この「エネルギーを捨て」というところを、回生ブレーキというシステムで、回転エネルギーを電気に変えて(すなわち「発電」して)、バッテリーに蓄え、次のスタートの時などにこの電気を活用するというのが「パワートレインでの電気利用」だ。

ガソリンを軸として見ると、ガソリン燃焼をクルマの動力(主に加速時)と発電(主に減速時)の両方に使い分け無駄を無くすわけで、ガソリン車がなくなるということではない。技術としては、「ハイブリッド・コンポーネント」がコアとなって、HV、PHV、FCV(燃料電池車)、EVに展開される。

◆世界のエネルギー需要は2050年に6倍に

世界銀行のデータでは、2050年には、世界の人口が4割増え、90億人になるという。また、一人当たりのGDPは4倍になり、世界総GDPは現在の6倍近く(1.4×4)になると予想している。これは、「世界のエネルギー需要が6倍」になるということでもある。そうだとすると「エネルギーを捨てることはやめなければならない」というのがトヨタの考えだろう。

そして、「原価低減をさらに進めて、全てのクルマにハイブリッドコンポーネントを標準装備する」という宣言でもある。トヨタは、1997年の初代『プリウス』の発売以来、ハイブリッドコンポーネントの製造コストを現在までに三分の一以下に低減している。これをもっと安くし、標準装備にまでするということである。「イノベーションは普及させなければ意味がない」と日々語っているトヨタの技術者たちから見れば、当然の方向性なのかもしれない。

◆ 太陽光エネルギーとPHVを新興国に

一方、「エネルギー需要6倍」時代に向けて、人類のエネルギー全体をどう確保していくのかということを考えると、太陽光エネルギーの活用拡大が必須となってくるだろう。人口の増加は、主に新興国で起きているので、出来るだけローコストで、送電ロスが発生しないという観点から、太陽光パネルによる発電を地産地消(マイクロ・グリッド方式)で行っていくことが重要となる。ただ、太陽光は夜や雨の日には期待できないので、高性能なバッテリーが必要となる。ここに、PHVの普及に意味合いがあると思う。

つまり、昼間に太陽光パネルから、PHVのバッテリーに充電をして、夜にはその電気を家庭で使うということである。私は、そのためには、ローコストのPHVとローコストの太陽光パネルのコンビネーションが、新興国向けに開発されることを期待したい。(その役割はEVの方が適しているという意見もあるが、家庭利用でバッテリー残量がゼロになっても走れるPHVの方が機動的である。先進国においては、FCVでこの機能を果たすことは可能であろう。)

◆ 交通流の整備も必要

もう一つ大事なことは、交通流の整備であろう。先ほど、述べたように、信号待ち、渋滞は、動いているものを止め、また動かすというエネルギーの大きな無駄を生んでいる。新興国においては、渋滞解消に向けた「自動車専用道路」の建設がまず重要となる。そして、先進国においては、「IoT」による高度運転支援システム、さらには、「自動運転」などの領域もエネルギーの無駄を省く大きな手段である。

これから2050年「エネルギー需要6倍」に向けて、人類はいろいろな取り組みが必要となる。そこでは、先進国だけでなく、途上国、新興国での対応も含めた対応が求められる。2020年の東京オリンピック・パラリンピックは、その方向性を示すいい機会となるであろう。今回のトヨタの発表は「オリンピックは2050年への一里塚」という意味が含まれている。

<土井正己 プロフィール>
グローバル・コミュニケーションを専門とする国際コンサル ティング・ファームである「クレアブ」副社長。山形大学 特任教授。2013年末まで、トヨタ自動車に31年間勤務。主に広報分野、グローバル・マーケティング(宣伝)分野で活躍。2000年から2004年まで チェコのプラハに駐在。帰国後、グローバル・コミュニケーション室長、広報部担当部長を歴任。2014年より、「クレアブ」で、官公庁や企業のコンサルタ ント業務に従事

《土井 正己》

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