日産の自動運転技術「インテリジェント ドライブ」がめざすものとは

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日産が公開した「リーフ」ベースの自動運転走行のための新実験車
日産が公開した「リーフ」ベースの自動運転走行のための新実験車 全 18 枚 拡大写真

日産自動車は10月23日、先進技術開発センターにおいて最新の自動運転実験車を公開した。実験車はEVの『リーフ』をベースに開発し、従来の高速道路主体から一般道を含めた実験へと範囲を拡大する。これによりナビシステムで設定した目的地までの自動走行が可能になる。

日産はこの自動運転車の開発に当たり、二つの企業ビジョンを掲げる。一つは、持続可能なモビリティ社会の実現に向け、走行中のCO2輩出をゼロにする「ゼロ・エミッション」。もう一つは、日産車が関わる交通事故の死亡・重傷者数をゼロにする「ゼロ・フェイタリティ」の実現だ。日産はこれを「ニッサン インテリジェント ドライブ」と命名。その技術をEVを中心に今後段階的に投入していく。

その第1弾が2016年末までに世界に向けて投入する技術「パイロットドライブ1.0」だ。混雑している高速道路上での、安全な自動運転を可能にするもので、まずは日本市場から導入を予定。その後、2018年には高速道路での車線変更までを自動化し、複数レーンでの自動運転の実用化を目指す。そして、2020年までには交差点を含む一般道で、自動運転技術の導入を図っていく計画だ。

ここで誤解を受けやすいのが“一般道での自動運転技術の導入”という点。これは混雑した市街地も含む一般道という風にとられがちだが、実際は違うと担当者は話す。ここで想定しているのは単純な道路での対応であって、周囲に障害物が多くなって制御が難しい判断されるとその操作はドライバーに委ねられるようになる。その意味で主となる運転操作を切り換えるためのHMIは極めて重要になっていくという。

実験車には周囲360度をセンシングするセンサーを搭載する。カメラはアラウンドビュー用として前後左右4つを備え、さらに周囲360度を捉える8つのカメラの計12個を装備。レーザースキャナは前後左右に4つ、さらにミリ波レーダーを遠方監視用と周囲監視用の2タイプを車両周囲に備えた。

搭載したセンサーについて担当者は、「カメラは一番受け取れる情報量が多く、形状や状況認識性能がもっとも高い。信号や標識の判別にもカメラは欠かせない。ただ、カメラは画像を一括処理にするに負担が大きい。そこでカメラそれぞれで処理を行うと共に、その信号を受け取るECUは車載用として最高スペックのものを組み合わせた」と説明する。

また、レーザースキャンは外観デザイン上、決して見栄えの良いものではない。これに置き換わるものとして、「それは超廉価な小型レーダーの登場を願うだけだ。今のところすぐ登場するような状況になく、2020年までのスパンを考えればレーザースキャンで対応するしかない(担当者)」と回答した。

とはいえ、実験車に採用したレーザースキャンは、「その第三世代とも言える米カリフォルニアのASC社製の『3Dフラッシュライダー』と言われるもの。波長は10000nm(ナノメートル)の赤外線を使用。駆動部がないこともあり、現実的な小型パッケージングとプライスを実現したセンサー(担当者)」として採用を決めたという。

先にも述べたHMIについても重視。「パイロットドライブ コマンダー」をセンターコンソールに配置し、マニュアルドライブモード(通常走行)からパイロットドライブモード(自動運転)への切り換え、自動車線変更の指示等を行う。また、メータークラスター内では、メーター全面を残像の少ないTFT液晶とし、運転モードと運転シーンに応じた車両情報を表示する。

その他、ヘッドアップディスプレイも装備し、パイロットドライブモードにおいて車線変更や交差点走行時などで次の進路に関する情報を表示する。これにより、オートパイロットモードでのドライバーの心理的不安を取り除くのに役立つという。

そして、この実験車に搭載されたもう一つの機能が「リモート・パイロット・パーキング」。これはスマートフォンを使った自動駐車で、自動的に空いている駐車枠を探し出し、スマートフォンで選ぶとすべて自動で駐車を行う。駐車は並列、縦列、斜め駐車のいずれにも対応。ドライバーが停止位置を調整する必要は一切ない。

《会田肇》

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