【社長対談】「ソニックプラスセンター」が異端のオーディオ店と呼ばれる理由を語ろうか

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ソニックプラスセンター名古屋の宇佐美浩二店長(左)とソニックプラスセンター大阪/神戸を経営する、島田卓史社長(右)
ソニックプラスセンター名古屋の宇佐美浩二店長(左)とソニックプラスセンター大阪/神戸を経営する、島田卓史社長(右) 全 26 枚 拡大写真

新しい形態で高音質を可能にしたカーオーディオ用スピーカー『SonicPLUS(ソニックプラス)』が、「ソニックプラスセンター」という専用の新しい店舗を展開している。

ソニックプラスは、小口径高音質のカーオーディオ用スピーカーで知られるソニックデザインが設計・生産したエンクロージュア一体型スピーカーで、純正スピーカーの代わりにボルトオン&カプラーオンで装着できるのが大きな特徴である。純正カーオーディオやナビゲーションの操作性はそのままに、スピーカーの交換だけでカーオーディオの音質を向上させるコンセプト。メルセデス・ベンツ、BMW、MINI、アウディ、トヨタ、スバルの6メーカー70車種以上に対応する「車種別専用設計モデル」が用意されるに至っている。

セットで10万円から、という安くはないシリーズラインナップにかかわらず、スバル、トヨタ、メルセデス・ベンツなど、メーカーやインポーター、ディーラーへの純正採用やコラボレーションが多いのも特徴である。

全国の正規カーディーラーやソニックデザイン製品取扱認定店で購入・取り付けできる他、2013年より、ソニックプラスの取り付けを専門に扱う店舗が「ソニックプラスセンター」である。当初、大阪と新潟の2店舗でスタートし、現在では、神戸、名古屋、山梨、金沢にも設立され、6店舗が展開されている。

そのうち、ソニックプラスセンター大阪/神戸の2店舗は、東大阪市で34年間営業を続ける老舗カーオーディオショップ「サウンド21」の島田卓史社長の経営によるもの。同じく名古屋の老舗カーオーディオ&ホームシアターショップ「ベイシス」で長らくカーオーディオ部門の責任者を務めた宇佐美浩二氏が独立するかたちで開店したソニックプラスセンター名古屋。従来のカーオーディオビジネスに深く関わってきた人物が、ユニークな新業態の専門ショップに取り組んだのはなぜなのか。今年8月に開設されたばかりのソニックプラスセンター名古屋に二人を訪ね、対談インタビューを試みた。(インタビュアー黛健司)

◆全店共通の価格体系、作業時間も短時間

ソニックプラスセンターは、車種別専用設計スピーカーパッケージ「ソニックプラス」を購入・取り付けできる、ソニックデザイン社認定の「ソニックプラス専門店」だ。電話やネットで簡単に取り付け予約ができ、即日取り付けが可能な専用ピットを完備する。作業時間は車種によって異なるが、最大でも3時間程度。予約当日に愛車を持ち込み、作業完了までショップで待ってもいいし、取り付け作業の見学もできる。遠方から来店する人のなかには、朝クルマを預けて、夕方まで近隣を観光する人もいるとか。

取り付け費用は明瞭会計。車種および製品ごとに金額が決まっていて、しかもそれは全店舗共通の完全定額制。商品注文時に取り付け工賃込みの総額を明示してくれるので、カーオーディオ装着は初めてという方でも安心して依頼できる。

ソニックプラスセンター大阪/神戸の島田社長によれば「取り付け時間が一定で決まっていること。作業時間が短く、最大でも3時間程度のため、クルマをショップに預ける必要がない。取り付け価格が全店舗共通。この3点が従来のカーオーディオショップとの大きな違いです。また、ソニックプラスはスピーカーの振動板口径が小さく軽量なため、純正の内臓アンプでも鳴らしやすいのも特徴です。製品の試聴を希望して来店され、デモボードやデモカーで音を確認して、気に入ってその場で購入。即日取り付けする方もいます」という。

◆最小限の加工で済み、交換の効果がもっとも高い

ソニックプラスセンター名古屋の宇佐美店長も「ソニックプラスは、エンクロージュアをもっているので、音がクリアできれい。しかもクルマの外に音が漏れない。車種別の専用設計のため、クルマへの加工は必要ないなどの、基礎知識はもっている方がショップへいらっしゃる場合がほとんどです。

実際に音を聴いて、音質を確認するために来店するのでしょう。たとえば、スバル用には“スタンダードモデル”、“ハイグレードモデル”、“トップグレードモデル”の3グレードが用意されていて、フロント+リアスピーカーのセットでは、スタンダードの10万円、ハイグレードの19万5000円、トップグレードの34万円(いずれも税・取付費別)と価格も大きく異なりますので、ユーザーとしては『どのくらい音が違うのか』を実際にデモボードで確認したいという方が多いですね」という。

島田社長は「カーオーディオで音質がもっとも大きく変化するのがスピーカーです。しかし残念ながら、クルマのグレードに対して、スピーカーが貧相なものが多い。クルマ自体はどんどん進化して、それに合わせてナビやオーディオはよくなっているのに、スピーカーの能力だけが低いクルマがとても多いのが実情です。そこで、音の出口であるスピーカーを良質なものに交換すると、カーオーディオの音が圧倒的に良くなり、お客さまに喜んでいただいています」という。

島田社長はサウンド21という老舗ショップを経営しながら、なぜ新規に2店舗のソニックプラスセンターを開設したのだろうか。そこを突っ込んで聞いてみた。

「時代が変わってきているのです。昔はクルマに大きな加工や改造を加えてでも、カーオーディオの音をよくしたいというお客さまが多かった。しかし最近では、そのような方は皆無といってもいい。昔、クルマを新しくするたびに100万円くらいのカーオーディオシステムを組んでくれたお客さまでも、いまはクルマが新しくなっても、高額なカスタムシステムを組む方はほとんどいません。クルマがどんどん進化して、内装もデザイン性が高くて手を加えにくい状況で、純正のナビやオーディオにもそれなりにいいものが採用されている。そんな現代のクルマで、なんで高額なお金を払ってまで、カーオーディオを交換する必要があるのか、皆、疑問に感じているのです。

カーオーディオを装着するためにクルマに大きな加工をすることが敬遠されるようになったと感じています。クルマを加工することなく、純正より良い音が楽しめるなら交換を考えてもいいが…と考えるお客さまが、いまや主流。きれいなインテリアのまま、無改造で乗りたいのです。

しかも最近では純正のカーナビやカーオーディオを交換するのが難しいクルマが増えてきた。特に高級輸入車はナビやカーオーディオの交換は不可能と考えた方がいいでしょう。そのような状況で、カーオーディオの音をよくしようとした場合、スピーカーをよりよいものするしか方法は残されていない。クルマを改造せずに、より高音質、ハイクォリティのスピーカーに交換していくという手法は、もっとカーオーディオの主流になっていくでしょう。

また、以前でしたら、カーオーディオ装着のために1週間でも2週間でも、お客さまはクルマを預けてくださいましたが、いまは違います。ショップの側としても、1台のクルマを長くお預かりすることは、経営のうえからはマイナスとなることが多いのも事実です。

このようなクルマとカーオーディオのおかれた状況を打破できるのが、ソニックプラスだと直感して、ソニックプラスセンターを積極的に展開することにしたのです」と語ってくれた。

◆人材不足とマーケットの変化にどう対応するか

宇佐美さんは、名古屋のベイシスという高い技術を誇る老舗ショップのマネージャーを務めた人物。なぜソニックプラスセンターの経営に乗り出したのだろうか。

「老舗ショップのカーオーディオ責任者として仕事をしていくなかで、3つのことに関して危機感を募らせていました。

ひとつは、新規の顧客を開拓することが非常に難しくなってきた。特に、若いお客さまが圧倒的に少ない状況から判断すると、このままではカーオーディオの商売が衰退していくことは間違いありません。

次に、インストーラーの育成が難しくなってきた。カーオーディオ業界は「人が育たない」のです。若い人が入社してきても、すぐに辞めてしまう。慣れた人なら2~3時間でできる作業が、初めてで作業方法がわからない人がやると、何日もかかってしまう。そのような厳しい状況を我慢して、“丁稚奉公”に何年もかけてスキルを習得しようという人がいなくなった。前の店でも何人も新人を採用しましたが、ほとんどの人が半年もしないうちに辞めてしまう。若いスタッフが育たないということは、ショップの経営には致命的です。

3つめは商品のランナップです。カーオーディオ全盛時代は、ナカミチやカロッツェリア、アルパインを始めとした国内メーカーに元気があり、海外からも話題の製品が続々と輸入され活況を呈していましたが、いまは違います。国内メーカーは高音質カーオーディオから撤退してしまい、AVナビしか出していない。海外製品も以前のように魅力的なものはなくなってしまった。

これらの問題点を解決できるのが、ソニックプラススピーカーであり、ソニックプラスセンターの経営だと直感して、独立・起業しました。おかげさまで、今年8月の開店以来、順調に業績を上げています。しかも、いまのお客さまのうち8割以上の方は新規の顧客です。

インストーラーの育成面でも不安はありません。ソニックプラスなら、カーオーディオ専門店のインストーラーに求められるような特殊なスキルは必要ありません。クルマのメカニックなら、誰でも高音質スピーカーが取り付け可能なんです。整備の経験がない人でも、1~2ヶ月も研修していただければ、誰でも作業できるようになります。今後の展望として、ソニックプラスセンター名古屋がコアとなって、若手のインストーラーを育成して、愛知県内の各所に新規のソニックプラスセンターを開設していきたいと考えています」と意気軒昂だ。

◆交換後の音質調整機能にも無償で対応

ソニックプラスはトレーニングを受けたインストーラーなら、誰が付けても同じ音に仕上がるのがユーザーにとっての大きなメリットであり、安心できる部分だが、ソニックプラスセンター大阪、神戸、名古屋のように、カーオーディオ専門の長い実績をもつショップの場合、スピーカー装着後の「音のチューニング」に独自のノウハウを駆使できる点も見逃せない。

宇佐美さんによれば「自動車ディーラーなどでもソニックプラス製品の購入・取り付けは可能ですが、スピーカーを取り付けた後の最終的な音の調整こそが、ソニックプラスセンターならではの強みです。最近の純正カーオーディオは、いろいろな『音質調整機能』を備えていますから、それらを駆使して、お客さまの好みに合わせた音に微調整(=音質チューニング)するのは得意技です。

取り付けのときに希望していただければ、初期設定としてお客さまに合わせた音のチューニング作業をおこない、追加費用は発生しません」と、うれしい話が聞けた。開店から2ヶ月。「来客人数こそ目標をやや下回りましたが、客単価が予測よりも高く、売上目標は上回ったことが嬉しい誤算です。最上級のクレストモデルも複数出ました」と、安心と喜びの表情だった。

最後に島田社長から「スピーカーを替えただけで、どれだけカーオーディオの音が良くなるかを知っていただき、お客さまに夢を与えていきたいと願っています。スピーカーを替えることで、音楽の聞こえ方、楽しみがこれだけ変わるのか! という驚きを体験していただきたい。感動を味わっていただきたい。2年近くソニックプラスセンターを運営した経験としては、8~9割のお客様はソニックプラス取り付けだけで満足していただけますが、残りの1~2割は、アンプなどさらなるシステムアップを希望されるお客様に育っています。既存店舗へ新規顧客を送り込む役割も果たしています。これからはディーラーで“スタンダードモデル”を購入した方が、よい音を体験することで、“ハイグレードモデル”や“トップグレードモデル”にアップグレードして、これほどカーオーディオって楽しいのか! と喜んでくださる。そんな夢を、お客さまに与えていきたいですね」と抱負を語ってくれた。

10月30日から一般公開が始まる第44回東京モーターショーにもソニックデザインは出展していて、メルセデスベンツ『Sクラス』に「ソニックプラス・ダブルクレスト」(セット価格200万円・税別)を装着したデモカーの他、各種ソニックプラス製品を展示するという。ボルトオン&カプラーオンの取り付けだけで10万円から200万円超まで、幅広いラインナップを持つこのブランドの特徴を実感できそうだ。

《Sound and Zoom 黛 健司》

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