【東京モーターショー15】タイヤの性能はまだ伸びる…住友ゴムの新技術「アドバンスト4Dナノデザイン」

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「アドバンスド 4Dナノデザイン」を採用したコンセプトタイヤ「耐摩耗マックストレッドゴム搭載タイヤ」
「アドバンスド 4Dナノデザイン」を採用したコンセプトタイヤ「耐摩耗マックストレッドゴム搭載タイヤ」 全 22 枚 拡大写真

29日、住友ゴム工業が発表した「アドバンスト4Dナノデザイン」は、大型測定施設やスーパーコンピューターを使った新しい開発技術だ。同社は2011年にすでに「4Dナノデザイン」という設計技術を完成させているが、今回発表となった技術はどのあたりが進化(アドバンスト)したのだろうか。

ブースで展示している、バイオマス技術、エアレスタイヤなどの技術の詳細も含め、住友ゴム工業 ダンロップタイヤ営業本部 消費財部 宣伝・販促グループ 下川達也氏に聞いた。

まず、従来の4Dナノデザインとアドバンスト4Dナノデザインの違いだが、「以前も地球シミュレータ(スーパーコンピューター)を使った素材開発やタイヤ設計は行っていましたが、燃費性能、グリップ力、ライフをさらに高めるため、素材の分子レベルをより忠実にシミュレートする必要がありました。その解析のためSpring-8(大型放射光施設)とJ-PARC(大強度陽子加速器施設)を利用します。必要な計算量も増えますので、(スーパーコンピューター)京の力も借りることになりました。」と説明する。

素材の解析は従来からスパコンで行っていたが、ゴム内部の正確かつ精密な解析と連続的なシミュレーションには限界があった。そこで、日本が誇る最先端の科学技術施設とコンピュータを活用することで、ゴムとしての性能からタイヤとしての全体の解析、最適化設計を行うというものだ。手始めに開発したのが、モーターショーで発表した耐摩耗性200%を実現したというコンセプトタイヤ(耐摩耗マックストレッドゴム搭載タイヤ)だ。開発にあたってはライフ向上に特化したものだが、今後はアドバンスト4Dナノデザインによって、開発スピードを上げ、走行性能と環境性能を両立させたタイヤを提供していくという。

次に、バイオマス原料による新しいタイヤの可能性についても話を聞く。同社のバイオマス原料の研究は「エナセーブ100」という天然素材100%のタイヤに応用されているが、これを軟化剤に適用してグリップ性能を長持ちさせるというタイヤを開発中だという。タイヤのグリップはタイヤのやわらかさによって生まれる。そのためゴムをやわらかくする軟化剤(オイル)を使うのだが、通常ゴムと油は結合しにくく、時間がたつと劣化や乾燥などでこの成分が抜けてしまう。

そこで、軟化剤に植物由来のバイオマスオイルを使うことで、ゴムとの結合を強くする研究に取り組んだ。軟化剤とゴム分子がより強く結びつくことで、劣化によるゴムの硬化、グリップ力の低下を防ぐことができる。実用化のめども立っているとのことで、「2016年にはバイオマスオイルを使ったグリップ力が長持ちするタイヤを市場に投入したい」(下川氏)とのことだ。

ブースには、ほかにもエアレスタイヤ、シーラントタイヤ、軽量化されたランフラットタイヤなどが展示してあり、来場者はこれらのタイヤのデモを体験することができる。

エアレスタイヤは金属ホイールのまわりに特殊樹脂のスポーク(ファンのような形状)を取り付け、接地面にトレッドゴムを張り付けたものだ。空気を使わないためパンクの心配がなく、エアチェックも不要だ。パンクをしないということはスペアタイヤを積まなくて済むため、軽量化が重要なEVなど次世代カーへの展開が期待されている。スポーク部のカラーリングを楽しめるという特徴もある。

シーラントタイヤは、タイヤトレッド面の内側に特殊な素材(塗料)を貼り付け、釘などで穴が開いても空気漏れを防いでくれる。同様な製品は20年以上前にも存在したが、当時の製品とは内側の素材が格段に進歩しており、タイヤ全体の性能に与える影響(バランスが狂ったり)も少ないそうだ。直径5mmまでの穴ならば問題なく塞げるという。

ランフラットタイヤは、ファルケンブランドで主に輸入車向けに展開しているが、ブースでは従来品やノーマルタイヤとの重さ比べができ、軽量化技術を体感できる。なお、住友ゴムではダンロップとファルケンにブランドが集約されたことで、EU、北米での展開にさらに力を入れていくそうだ。

《中尾真二》

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